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リアクション
「わー、なんか人がいっぱい集まってきた! よーし、それならここであたしのライブの始まりよ! あたしの歌の前に全員跪きなさい!!」
ラブは周りに契約者たちが集まったのを見て、エレキギターを構え、マイクで強化した激情のスコアを歌い始めた。
「っ!」
歌が届く範囲の人間は、その歌によって放たれる魔法攻撃で近づけない状態となる。
「やはり、まずこの歌を無効化するしかないようだな。よーっし、貴様の相手は俺が相手してやろうじゃないか!」
バベルはラブを指し、宣言する。
「ヨタヨクト! 作戦通りに頼んだぞ!」
「マスターの仰せのままに」
ヨタヨクトは用意していた、高さの異なる鉄の棒を10本ほど地面に突き立てた。
「この俺が機晶技術と先端テクノロジー、そして物理学をちょいとスパイスして、この歌に対抗しよう!」
用意を整えたヨタヨクトに代わり、バベルは並んだ鉄の棒の前へと立った。
「ふむ……これでどうだ?」
試しに一本ずつ順に叩いていく。
ラブの歌とは異なる周波数の音が空気を震わせた。
「! な、あたしの歌が!? ま、負けないからね!」
その幾つかの音がラブの歌とは逆の周波数を発し、ラブの音を幾つか消した。
「ふふふ……ははは! どうやら俺の読みは正解だったらしいな! ならば、後はこのままやらせてもらうぞ!」
バベルは期待していた効果に喜色を浮かべ、ついにはラブの攻撃がほとんど届かなくなる。
「よし。ヨタヨクト、今だ! 貴様が止めて来い!」
「了解した、マスター!」
ヨタヨクトはバベルの命を受け、リターニングダガーが仮面に届く飛距離にまで近付いた。
「マスターの音がまだ勝るここなら……!」
そして、急いで逃げようとしたラブの仮面だけを見事に割った。
「ラブさんの歌はどうにかなったみたいだねぇ。僕たちはコアさんの方をどうにかしよう」
「それなら、コアさんが先に正気に戻れた時に、ドラゴランダーさんの方にも協力してもらえそうだわ」
「ただ、ドラゴランダーさんにも気をつけないと――」
託とアイリスが次の行動について話していると、行人が唐突に走り出した。
「行人……!」
託が呼び止めるも、行人はそのままコアのいる方へ走っていってしまう。
「まったく、一人でだなんて無茶だろ。エクス、睡蓮、プラチナム。追うぞ!」
「わかった」
「わかりました」
「了解です」
唯斗は行人を追ってコアの元へ走っていった。
「コアさんの方はこれで十分かもしれないねぇ。じゃあ、僕はドラゴランダーさんを引き付けることにするよ。アイリス、行人は君に頼んだよ!」
「ええ!」
託はアイリスを信頼し、ドラゴランダーの元へ向かった。
「近付クナラ……容赦、シナイ」
行人の姿を見たコアは、スミスハンマーを振り下ろす。
「行人!」
アイリスは攻撃に当たりそうだった行人の腕を引いた。
そして、さっきまで行人のいた地面に穴が開く。
アイリスは行人を連れて距離をとった。
「何でだよ。何で……俺が憧れてたヒーローなのに……!」
行人が悔しそうに歯噛みする。
「よ、随分理性がなくなってるみたいじゃないか。こっちが危うくなりそうだし、ここは全力でいかせてもらうぜ。エクス、睡蓮。一発でかいのを頼む」
「これなら……どうだ!」
エクスは唯斗の指示に、凍てつく炎をコアに向けて放つ。
殺気看破で危機を感じたコアは跳び退る。
「我は誘う炎雷の都!」
続け様に放たれた睡蓮の術を、パイルバンカー内蔵シールドで防いだ。
「破壊ノ、邪魔ヲスルナ……!」
コアの注意が完全に唯斗たちの方を向く。
唯斗はにやりと笑みを浮かべた。
「行くぜ、プラチナ!」
「はい」
唯斗はプラチナムのバイクに跨り、コアとの距離を一気に詰めた。
「助けにきたぜ、コア。白獣纏神! ヴァイフーガッ!」
そして、唯斗は魔鎧であるプラチナムを纏った。
「ク、我ヲ妨ゲルナラ、破壊スル!」
コアは唯斗目掛けてスミスハンマーを振り上げた。
「くっ……!」
パワーを全開にしたコアのスミスハンマーでの攻撃は重く、けれど唯斗は光条兵器でなんとか受け流す。
「唯斗……!」
二撃目が振り下ろされようとした時、エクスが凍てつく炎でコアを狙った。
しかし、回避され、ロケットパンチがエクスを狙う。
「我は誘う炎雷の都!」
睡蓮はロケットパンチ目掛けて技を放つ。
ロケットパンチは中空で爆発した。
そして、唯斗が気を逸らしている間にコアが夢浮橋で空を飛ぶ。
「しまった、逃がすか!」
唯斗も空中戦闘を使い、コアを追う。
コアは唯斗目掛けてパイルバンカーを発射した。
「あぶな……!」
唯斗はティアマトの鱗でそれを避けながら受け流す。
「はあっ!」
そこへ、レッサーワイバーンに乗ったエクスがティアマトの鱗でコアに斬りかかる。
「ドイツモ、コイツモ……我ハ、破壊ヲスルノダ……!!」
コアが苛立つ様に、攻撃を受けとめたパイルバンカー内蔵シールドに力を込めた。
「しまった……!」
エクスは咄嗟に離れようとする。
危機を感じて距離を空けた途端、雷術がコアに直撃した。
「……は、ようやく当たったわ」
地に落ちたコアを見て、アイリスが呟く。
それほどの高さがなかったお陰か、コアはすぐに起き上がろうとした。
その様子に、入れ違えるように行人が飛び出した。
「あ……行人!」
アイリスが掴もうとするも、その手を擦り抜け、
「ハーティオン! ハーティオン、戻ってくれよ! 俺の憧れていた、元のヒーローに戻ってくれよ!!」
行人の叫びに、コアの動きが止まる。
「なあ、今も本当は仮面と戦ってるんだろ! ヒーローがこんな仮面にそんなに簡単に支配されるわけないもんな! 俺はハーティオンが勝てるって信じてるぜ!」
「う……ア……」
コアは苦しげに顔を覆う。
「なあ、ハーティオン! ハーティオンは俺たちのヒーローだろ!!」
「あ……我ハ……私は……? ヒー、ロー……? 私、ハ……」
「唯斗さん、今です!」
「ああ!」
睡蓮の合図に、唯斗は降下しながらティアマトの鱗で胸の宝石にある仮面を狙う。
コアが抵抗する間もなく、仮面は真っ二つにされ、地面に落ちて砕けていった。