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リアクション
第1章 余すことなくいただきます!
休息を取ろうと魔列車の発掘を中断し、生徒たちが皆パラミタ内海から上がった頃。
トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)たちは、食材の宝物庫のような海へ入る。
「いってらっしゃーい!たくさん獲ってきてくださいねー」
ぶんぶんと手を振り魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)は厨房の傍で待機する。
「イコンで運ぶといっても、すぐ行けるわけじゃないんだよな」
「まぁ、そうね。お弁当とかも必要かしら?」
「かまぼこに加工するのってどう?焼いておけば長持ちしそうだし」
「後で頼んでみるといいかもしれませんわね」
料理以外なら協力するわ♪と、大きな漁業用の網を手にミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)はニッコリと微笑む。
「クマが上手く誘いこんでくれれば、大物ゲットね」
網にワイヤーをくくりつけ、端を掴み岩場の隙間へ流す。
「あれ、魯先生は、料理するだけですか?」
背にボンベをセットしたテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)が、厨房から一歩も動かない子敬をちらりと見る。
「はい!私は料理専門ですから」
「(わぁ〜・・・すっごい元気のいい返事!)」
“ま、いいや。その分、美味いところ、食わせてもらいますからねーっと。”
問答無用で釣りエサのような役割を1人でやることになり、涙をキラリと一筋流し海へ身投げするかのように飛び込む。
彼がヒラヒラさせている足ヒレにじゃれようと、スィーン・・・とニャ〜ンズが忍び寄る。
「来たかっ」
迫り来る巨大な影に気づき、銛でふわふわのボディーをつっつく。
フォオオァアア!!
怒ったニャ〜ンズはフサフサな尾ビレを振り、テノーリオをぶっ叩こうとする。
「うぉおぁあっ」
手足をめちゃくちゃにばたつかせ、必死に泳ぎ尾をかわす。
「あらあら、クマったら。大丈夫かしら?」
いつトラップゾーンへ追い込んでくれるのか、ミカエラとトマスはルアー代わりの彼をじーっと眺める。
「(こぉおおい、食料!!)」
テノーリオは遠当てで水の刃を飛ばし、ニャ〜ンズの柔らかな腹を狙う。
ニャァアァウ!・・・シャァアーーーー!!
痛いにゃぁあっと悲鳴を上げたかと思うと、激怒したネコ鮫が彼に噛みつこうとする。
「やばっ、あの牙何!?こっちが巣に持ち帰られて、ずっと玩具にされるんじゃないかっ」
捕まったら遊ばれてしまうと、ざぶざぶと泳ぎ網へ誘い込む。
「ほぎゃばぁあ!!?」
がじがじがじ・・・。
「クマも一緒に網にかかってしますわね?食べられるのかしら、ほほほほ」
クスクスと笑いながらミカエラは冗談交じりに言う。
「というか齧られていますわ。ちょっと、平気なのー?」
「いや、ピンチだって。どうみてもピンチだ!早く陸に上げてくれっ」
「どうやって運ぼうかしらね・・・」
「うーん、気合しかないともうけど・・・?」
「えぇ〜、そんなのでいいわけ!?」
「他に方法ないし、テノーリオがやばいからな。叩きながら打ち上げるか」
則天去私の拳でネコ鮫を陸へ殴り飛ばし、齧れているテノーリオごと運ぶ。
「あぁあぁあ゛〜!?」
ベシャッ。
ネコ鮫と共に平原へ飛ばされたテノーリオはぐるぐると目を回し気絶してしまう。
「もしもーし、クマ?起きないとねこちゃんに噛まれちゃうかもしれませんわよ?」
「―・・・すでにだいぶ噛まれている気がするけど」
トマスとミカエラは彼を網から救出してやる。
「とりあえず、消毒してぱぱっと包帯でも巻いてあげればいいわね」
歯型だらけの彼をミカエラが応急処置の手当てをし、テントの中で寝かしてやる。
トマスたちが捕獲した大物の獲物を前に、子敬は包丁ではなく荷物からブロードアックスを取り出す。
「表面も身の部分に触れるわけですから、もう少しキレイにしておかなければ・・・」
消毒液を染み込ませた綿で念入りに消毒する。
「魯先生、それで斬るのか?」
「夏季ということもありますが、武器を料理用道具として使うわけですからね」
ひょこっと不思議そうに覗き込む彼に、これでネコ鮫をさばくんですよ、と言う。
「かまぼことかに出来そうかな?」
「うーん・・・この量では、夕食分くらいですね。どうしてかまぼこに?」
「いろんな料理に使えるかなって思ってさ」
「なるほど、日持ちもするようにもなりますし」
「イコンで魔列車を運ぶにしても、その間の食事のこととか心配だしな」
「1・2時間でつける距離でもありませんから。お弁当用にもよさそうですね」
「何々?ニャ〜ンズの捕獲量がたりないの?」
まだ昼食が出来ないのか腹ペコの緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が、にゅっと厨房に顔を出す。
「皆さんのご飯分はあるんですけどね。運搬作業をする方々のお弁当用が足りないんですよ」
「へぇ〜そうなの?見つけたら狩っておくよ。おっきーの獲ってくるから、美味しいの作ってね!」
「えぇ、了解です!」
子敬は料理人として空腹の胃袋を満足させてあげましょうと誓う。
「まずは先に、昼食を用意せねばっ」
ニャ〜ンズの頭をズパッと斧で落とし、背骨と身を斬り離す。
「ちょっと・・・淡白な味ですね」
薄く斬り裂いたほんのりピンク色の身を試食してみる。
「この前、さばいてもらったやつは。お肉のお刺身ぽくって美味しかったよ?」
「焼いた方が、より美味しくなるかもしれませんよ!」
さばいた身に塩胡椒をし、油を引いた中華鍋でさっと揚げる。
「ありがたく命をいただきましょう。私たち自身の命のために」
「―・・・食べて俺たちの糧にするんだから、まぁ・・・そうだよな」
にっこりと微笑む彼の言葉に若干黒さがあるな・・・と思いつつ、トマスは苦笑いをする。
「いい香り〜・・・」
美味しそうな焼き色に透乃は唾をじゅるりと飲み込む。
「さぁ、どうぞ!」
「表面はカリっとしていて、中は肉厚でジューシな感じがするけど。油っぽくなくって、すっごくさっぱりしているね!おぉおいしぃい!!」
「と・・・透乃ちゃん。皆の分も考えましょうね?」
他の人の分まで食べてしまうんじゃないかと、不安そうに緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)はオロオロと人目を気にしてしまう。
しかし彼女の胃袋の食欲は止らず、人の分もとってしまいそうな勢いだ。
「あーっ、こっちのも美味しそう♪」
「待ってくださいそれはっ」
「そいつは俺の分だぁああ!!」
彼女の騒ぎ声に飛び起きたテノーリオは極上の部位が盛られた皿を掴む。
「いやぁあ、これ私のっ。早いもの勝ちだよ」
「俺のだってーの。ガブッ」
「あぁっ、食べちゃった!?よーし、私だって・・・はむっ」
彼に負けるものかと片側に噛みつく。
ミチミチミチ・・・・・・ビリィイイッ。
口で引っ張り合いネコ鮫の肉が千切れてしまった。
2人は互いに睨み合い、どちらがより美味しい部位をたくさんくらえるか競争を始めてしまった。
「おやめなさい、クマったら!怪我しても知りませんわよー?」
巨大な獣と小さな小動物の争いを見るかのようにミカエラが声をかける。
「あぁあ・・・透乃ちゃん。食べ物でケンカしないで・・・と言っても無理ですよね・・・」
「おやめください2人とも!また作ってあげますからぁあ!!」
「よーし、私も!」
「やめてセレン、はしたないわ」
「あはは、冗談よ冗談。ちょっと楽しそうって思っただけよ」
本当かしら・・・とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、疑わしげにセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)を軽く睨んだ。
壮絶なフードファイトを眺めていると、骨すらも残らずに大皿は空っぽになってしまった。
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