校長室
十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別
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第三十八篇:桐生 理知×辻永 翔×北月 智緒 もしも、あり得たかもしれない世界。 全世界でイコプラバトルが流行していた。 そして、その世界において辻永 翔(つじなが・しょう)はその世界では名の知れた人物であった。 強くてイコプラにかける情熱も人一倍で、そんな翔は多くのイコプラファンからの羨望を集めていた。 同じくその世界においては、桐生 理知(きりゅう・りち)はイコプラのパーツを売っている店の娘で、パーツを買いに来た翔と知り合った。 同じ学校なのを知って仲良くなり、色々教えたり教えられたりしながら、強いイコプラを完成させるため頑張った。 だが、翔が最近少しスランプになっており、負けることが多くなって悩んでいる事を聞き、理知は力になりたいと強く思う。 そして迎えた大会前日。パーツショップにふらりと現れた翔は、疲れきった顔で理知に告げる。 「俺、明日の大会……棄権するよ」 聞けば、納得の行くイコプラをついぞ組み上げることができず、大会前日だというのにイコプラが無い状態なのだという。 だが、理知は諦めなかった。 「大丈夫。翔くんなら、きっと大丈夫だよ。私も手伝う……だから、今から一緒に作ろう?」 「無理だよ……俺なんかじゃ……」 だが、それでも理知は諦めなかった。 「大丈夫。翔くんなら、きっと大丈夫だから。だから、私を信じて」 その強い思いに押される形で、翔は理知と共にイコプラ作成を開始した。 市販のものに手をかけ、一つずつ鑢をかけ、位置を調節し、彩色し、徹夜で一緒に作業しながら完成させる翔と理知。 そして、大会当日、翔の応援に行った理知は勝てるように強く願ってるよ。 「翔くん、頑張ってー!」 何度か負けそうになってヒヤヒヤしたものの、翔は何とか勝ち抜いて決勝に。 しかし、対戦相手は理知の妹の北月 智緒(きげつ・ちお)であった。驚きと動揺する二人。 智緒は理知の妹。翔が現れてから姉の理知を取られている気がして不安であった。 前はもっと遊んでくれたのに、イコプラ作るのに夢中で、翔のことを話す事が多くなって。 「よし、智緒もイコプラバトルに出るっ! 理知は渡さないんだから!」 そして、智緒は翔との勝負を決意する。 二人に内緒で、智緒もイコプラ作りをした。勿論、大会に参加するのも内緒だ。 理知と智緒の家のパーツは性能がいいんのだから、負けはしない――智緒はそう意気込んだ。 運もありつつ勝って、ついに決勝は翔が相手である。 「理知は渡さないんだから!」 宣誓布告する智緒。 白熱の戦いが繰り広げられて、もう少しで勝てそうと思った瞬間、智緒は負けてしまった。 「悔しいけど、負けね」 そう言い、名残惜しそうながらも、負けを認めた智緒はどこか晴れやかな顔で翔に告げる。 「理知の事、よろしくね。」 勝ちが決まった翔に、理知は言う。 「また一緒に次の大会を目指して頑張ろう」 そして、それに満面の笑みで答える翔。 「ああ! もちろんだ!」 そして、恥ずかしそうに理知は翔へと告げた。 「これからも翔くんの傍で手伝っていきたいの」 そして、二人は照れながら手を繋いで、勝ったお祝いにイコプラカフェに行ったという。 これは、もしかしたらあり得たかもしれない世界での恋物語。