リアクション
第三十八篇:健闘 勇刃×天鐘 咲夜
「あれ?いつの間に寝ちまった。って、ここは教室か……誰もいないし、もう放課後か。夕日も綺麗だな……」
健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)は放課後の教室で目を覚ますと、下校しようとする。
だが、そんな彼を呼び止める声があった。
「健闘くん! 待ってください!」
振り返る勇刃。声の主は彼のクラスメイトである天鐘 咲夜(あまがね・さきや)だった。
「健闘くんが起きてしまう前に晩御飯をと思って……良かった、健闘くんが帰っちゃう前に間に合って」
走ってきたのだろう。咲夜は息を切らしている。
「え、晩御飯?まだ食ってないけど……って、もう作ってきてくれたのか! さすが咲夜、気が利くな〜」
聞き返す勇刃の手を掴むと、引っ張っていく咲夜は家庭科室へと彼を連れて行った。
咲夜が扉を開くと、中からは良い匂いが漂ってくる。
「それじゃ、どうぞ! いつもと同じ料理だから、飽きちゃうかもしれませんが……」
「うお、ビーフステーキとおでん豚汁、全部俺の好物じゃないか! いただきま〜す……ってその前に、一体どうしたんだ、咲夜、
何かいつもと違うような……」
すると咲夜は意を決したように口を開いた。
「実はですね、こうして健闘くんと二人っきりで過ごすのは、私のたった一つのお願いです!」
すると、勇刃はふっと笑い、咲夜に言う。
「え? 俺と二人っきりの甘い一時を過ごしたいのか? 何だ、だったら最初から言ってくれればいいのに。……そうだな、言ったらサプライズにならないもんな。ありがとうな、咲夜。いつもいつも、俺のために頑張ってくれて。そんじゃ、お返しだ」
そして、勇刃は夕食を終えて口を拭くと、ガムを噛んでから、咲夜へとキスをする。
「ええ? け、健闘くんのキス、暖かい……め、めまいが……」
多幸感に包まれる咲夜。だが、あまりの多幸感ゆえに、彼女は意識を失っていた。
「すまないな、大したものじゃないけど……って、咲夜!? やべえ、気絶してる!頼むから、早く起きてくれ! おい! 頼むよ! ここ、学校だぞぉ〜!」
こんな二人の騒がしくも楽しい恋物語は、当分終わりそうにないようだ。