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リアクション
――医務室
「これはなんだい?」
サツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)は燕馬から渡された茶色のシート状のものを《サイコメトリー》する。
「絆創膏みたい。肌と癒合して剥がさなくていいみたいです」
かすり傷に便利そうだ。
しかし、他にもまだよくわからないのが沢山ある。脱脂綿、ガーゼ、ピンセット、消毒液はまだわかるが、薬品の名称が皆目見当つかない。
一つ一つ覚える必要がある。
「針のない注射は予想してたけど、この中身のSK1ってなんなんだろう?」
「治癒促進用のナノマシンです」
と、ザーフィア・ノイヴィント(ざーふぃあ・のいぶぃんと)の問いに通りがかりのアセトが答えた。
「ここの医薬品のことは分かるのか?」
燕馬が聞き返すと「基地内のことなら色々と中将に教わっていますから」とアセトは答えた。
アセトは都市部のアンドロイドと違い学習能力を持っている。その学習能力で基地内のことを少しずつ覚えていっている。
ふと、サツキは興味本位に《テレパシー》をアセトへと送ってみた。
「――、何ですか? 睨みつけて?」
「あいや、そんなつもりは……」
どうやら通じないようだ。人間同士なら可能なようだが、やはり機械には無理なのだろう。
「そういや、アセト君だっけ? ここにはアンドロイドのメンテナンス機材とか置いてないのか?」
ザーフィアがそう聞くと、アセトは「ありません」と答えた。
「正確には、必要がありません。多少の損傷なら自己修復機能がありますし、損傷がひどい場合にはバックアップをとって体全部作り直しです」
「なんてこだよ。機晶姫の機材を持ってこないといけないのか――」
ザーフィアは天を煽った。
「それよりも、外の戦闘が終わったようです。怪我人がいたら、手当をお願いします。助かりそうにない方にはトドメを」
無表情にえげつない冗談を言うアンドロイドがいた。
――ブリーフィングルーム
街から基地に戻り、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)たちは手に入れた伝承の原文について詳しく解析することにした。
ブリーフィングには作戦指揮を終えたマシューも同席した。
「まさか、ドールズの目的が雷霆だったなんてね――」
アルメリア・アーミテージ(あるめりあ・あーみてーじ)が呟く。
「正確には封印であるRAR.の破壊ってところかしら。それによって彼の者の鉾が目覚める。RAR.は最終兵器って言ってたわね」とセレンフィリティは疑問を口にした。
それがどんなものかは想像できないが、鉾であるなら、武器に違いない。
「相手の目的がわかれば、今後の作戦も立てやすい。しかし、RAR.がすでにドールズの目的を知っていたとは」
マシューは驚いていた。
「アーノルド中将。RAR.は一体いつから作られたものなんですか?」
セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が尋ねる。
「原型はこの都市が出来た時から有るらしい。都市の反映に関わってきたのは間違いないが、ドールズの狙うようなものを封じているとは誰も知らないことだ。
もとより、私もRAR.から伝承やドールズの目的を聞きだせるとは思っても見なかった」
「それよりも、“彼の地”という言葉が気になるよ。RAR.が言うには東の都市って言っているけど、写真にはそんなの写っていないし」
アルメリアは前にツーク・ツワンクから取った写真をテーブルに並べて、電子地図に当てはめていた。
東の方角には都市は映っていなかった。地図にも近場に都市らしきものはない。
「それはそうだ。東の都市はすでに滅んでしまっている」
マシューが説明する。
「もともと、オリュンズには姉妹都市があったが、その伝承の彼の者が元凶かもわからないが、片方はなくなってしまった。
オリュンズは昔、別の名で呼ばれていた。『ヘルモポリス』と。そしてヘルモポリスと姉妹都市だったのが――」
マシューは地図の年代を過去のものへと遡っていく。地形が徐々に変わっていき、突如として地図上にその都市が現れた。
「『ヘリオポリス』だ。この座標には何一つ残っていない――」
その座標は和輝たちが消失した場所だった。
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