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【重層世界のフェアリーテイル】オベリスクを奪取せよ(前編)

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【重層世界のフェアリーテイル】オベリスクを奪取せよ(前編)

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RAR.(ラー)


それは巨大な円柱状の塊だった。
「デカイわねぇ。これが、マザーコンピューターね」
 途方も無い大きさのコンピューターを見上げるルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「まさか、都市管理をコンピューター一台に任せているとはな――」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)も驚いていた。
「けど、これにどうやってアクセスしろというの? ダリルがAirPAD買って、ここにハッキング仕掛けようとして弾かれているし。大分使い慣れたんじゃなかったの?」
「茶化すな……。こいつのセキュリティはかなり複雑なんだぞ、秒間億単位で有機的に暗号を無限に書き換えられては処理が追いつかん」
 と、ダリルが言い訳していると、声が聞こえた。
“お困りですか? 市民 ”
 それがRAR.の電子音声だった。
「アナタがマザーコンピューター?」
“そうです、新しい市民。あなた方の来ることは市長より聞いています。なんなりと質問して下さい ”
「独立意思の会話プログラムが可能か。驚いたな。RAR.お前のこの都市での役目は何だ?」
“ワタシの役目は『市民の安全を守ること』 です。その一環として街中の交通制御、アンドロイドたちの統括、市民の不安を取り除くのもワタシの役目です ”
「不安を取り除く?」
“一定周波の聴覚外音波を街に流し、市民の不安を取り除いています。不安で暴走する市民がでれば、他の市民の安全が保てませんから。アンドロイドが街にいるのもそうです。市内を監視し、問題に対処する場合はワタシがアンドロイドに行動命令を行います ”
 だから、この都市の人間は近場で戦いがあっているというのに、平和に生きているのだ。
 理にかなった意識統制だが、それゆえに恐ろしくもある。
「そんなことよりも、大いなるものに関する伝承。あなたがその詳細をしっているんでしょう?」
 ルカルカが尋ねる。本題はそれだ。
“市民の言う伝承とは、これでよろしいですか? ”
 RAR.は二人の前にディスプレイを展開した。

『その昔、大いなる災い来たりて、破却をばらまく。
 
 巨大な傀儡を操り、天地を蹂躙する。

 人、巨人に乗り、屍を積む。

 人、彼の者とその鉾を彼の地に封じる。

 しかし、大いなる災い、再び黄泉返るなり。

 それを阻止するは、外世界より来る来訪者なり』

「これが原文か。これに記されているワードの解析は可能か?」
 ダリルの問に“勿論です。市民 ”とRAR.は答えた。
「ここに、記されている彼の者とその鉾を彼の地とはなんだ?」
“彼の者とは市民の言うところの『大いなるもの』と推測されます。彼の地とはオリュンズより東の都市。これに記された戦いで滅亡した旧文明の都市と考えられます。
 そして、もう1つの彼の地は、ここです ”
「どういうこと?」
“封印が2つあるのです。一つは大いなるもの自体を封じた東の都市。ここにあるもう一つの封印は、大いなるものの鉾、最終兵器とでもいいましょうか。それの封印です ”
 間を開けてRAR.は言う。
“ワタシがその最終兵器の封印の箱なのです。市民 ”