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嘆きの石

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嘆きの石

リアクション

★プロローグ



 ――解放――



 全ての戦いが終わり、誰もが力を使い果たし傷ついた中、アゾート達に導かれラティオの霊がついに、フィリナの元へ辿り着いた。

 ――ああ、愛しのフィリナ……。

 ラティオの霊が、嘆きの石に触れると、淡い光が天から射し込んだ。

 ――………………。
 ――フィリナ、キミの声を聞かせておくれ。
 ――………………。

 2人は、あの時の姿のまま浮かび上がり、しかし、フィリナは首を横に振った。

 ――どうしてだい? ボクは、キミともう一度会いたくて、話がしたくて、ここに残り続けたんだ。
 ――……私はもう……貴方が知っている私ではないの……。
 ――………………。

 長い沈黙だった。
 その静寂を破ったのは、フィリナの罪悪に押しつぶされての嗚咽でも、ラティオの叱責でもなかった。

 ――知っているよ。ボクは、キミを見続けたのだから。
 ――私は醜い。醜い。醜いの。
 ――フィリナ。ボク達は誰にも救えない。永遠に救われることはないんだ。何故なら、ボクはフィリナを愛しているから。
 ――違う。貴方は英雄。救われるべきは貴方よ。
 ――人を助けることは……エゴだ。ボクはそれに気付けず、エゴを押し通してこの地に居座り、人々を恐怖に陥れた。皆を、キミを愛しすぎて、不幸にした。
 ――違うッ!
 ――ボクらは『どうしようもなく人間』だったんだよ。だから、ボクは村人を責めないし、キミも責めない。そして、ボク自身をボクは……責めない。
 ――ラティオ……。
 ――ボクらをこうしてまた導いてくれた者達に、そして、過去の復讐をしてしまった村人に、ボクらが出来ることは……。

 何度謝っただろうか。
 もう覚えてない。
 だが、過去の人間が出来ることは、これしかないんだ。
 どんな戒めも受けよう。
 どんな言葉も受け入れよう。
 だから――、

 ――この世界から、消えることだ。この世界から、逃げだすことだ。この世は『いるべき者』がいて『去るべき者』が去れば、それがいいんだ。責に潰されて死ぬことはもうできない。誰かに謝ることも今更遅い。だから、消えよう。
 ――私は……。
 ――キミの『ワガママ』は、消えてから聞くとするよ。例えそれがどんな『ワガママ』であれ、ボクは笑って頷こう。もう、もういいんだ……フィリナ……。

 本当のところ、答えは見つからなかった。
 全てが正しく見え、全てが違うように思えた。
 誰が悪いとか――。
 1つの答えが浮かんでも、また1つの疑問が生まれ、それは永遠と繰り返される。
 だから『ボク達』は、こんな結末しか迎えられない。
 どうしようもなく、こんな結末しか迎えられない。

 ――ボクとフィリナは、この世界から消えるよ。いくらでもボクらを、怨み、心の中で殺してくれ。

 そうしてラティオとフィリナは、召された――。



 ――村――



 真の不幸は、村人が理性を残したまま魔物化し、殺し合ったことにあった。
 そんな状態で正常になって、心が正常でいられるはずはない。
 1人、また1人と、自害するしかなかった。
 前を向ける者は、誰一人いなかった。
 もう、笑い声も聞こえない。
 黄金の稲穂も見えない。
 枯れた麦畑が――ただただ悲しかった。




(おしまい)



担当マスターより

▼担当マスター

せく

▼マスターコメント

皆様、お疲れ様でした。
今回で通算7作目と相成りました、せくです。

相も変わらずテンプレート的ではありますが、こう思わずにはいられません。
私、せくは皆様に楽しんでいただけますよう願い、これをマスターコメントとし、この項を埋めさせていただきます。

また会える日を心からお待ちしています。
それでは、失礼します。

11月24日:一部修正を加え、リアクションを再提出させて頂きました。