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リアクション
プロローグ
熾月 瑛菜(しづき・えいな)の説得力と泉 美緒(いずみ・みお)の刺激的なコスチュームが幸いしてか、援助を依頼された人々が次々と公園に集まりだした。
メアベルはすでに、古式ゆかしい鉄の大なべを用意して、水をいっぱいに満たし、そこに茸以外の薬草を投げ入れて煎じ始めていた。全員が揃ったころには、薬草の爽やかな芳香があたり一面に漂っていた。
「お薬のほうはいかがですか?」
おっとりと尋ねる美緒に、メアベルは頷いて言った。
「このまま1時間ほど時々混ぜながらハーブを煮出し、そこへ夢幻茸を混ぜてさらに煎じれば良い。
夢幻茸はある程度数がいるのだが……」
「茸取りに参加してくれた人は結構たくさんいるから、大丈夫じゃないかな?」
瑛菜が言った。
そこへ公園の木陰から現れたのはルカ・アコーディング(るか・あこーでぃんぐ)を従えたルカルカ・ルー(るかるか・るー)だった。
「話は聞かせてもらったわ。ルカも茸採りに協力するよ」
「……んー。なんか刑事物みたいね」
ルカ・アコーディングことアコがボソッと突っ込む。
「一人でも多いほうが助かる。ありがとう」
ルカルカらと暖かく握手をしたメアベルは美緒と瑛菜に言った。
「では、あなたたち2人にはゲートキーパーをお願いする」
2人を招きよせると、メアベルは道具袋から小さな青く光るブローチの入った小箱、スイッチと数字キーのついた小さなディスプレイとマイクつきヘッドホン、組み立て式の枠とを2組取り出した。その枠の一部にはやはり数字入力用の入力装置、スイッチがついている。メアベルは枠を組み立て、何か数字を入力した。
「これでいい。
これがあれば夢魔の力がない者も、人を夢世界とこの世界の間を行き来させることができる。
使い方は簡単だ。空間移動要請を受け取ったら、入力装置に要請した人間のデータが表示される。
そのメンバーを選んで送信を押す。これで対応する相手方のゲートにデータが送られる。
そしてゲート側で、枠のボタンを押せば移送されてくる仕組みだ」
メアベルは美緒と瑛菜をしげしげ見つめた。
「貴女の方が急なことに慌てなそうだ。夢世界のほうが緊急を要するケースが多かろう。
瑛菜殿がそちらに行かれるほうがよさそうだ。安全な位置に送るから、ゲートキーパーに危険はない」
そう言って、瑛菜を自分のパワーを使って道具ともども夢世界へと転送した。
「美緒殿はこちらで、瑛菜殿から信号が届いたら、枠にあるボタンを押してくれ。
それであちらから帰還したい人が転送されてくるはずだ」
「わかりました」
メアベルがゲートを開くと、微かなスパークとともに素通しの枠だったものが、濃い霧のようなものが渦巻く空間へと繋がった。
「こちらはこれでよし。瑛菜殿、聞こえるか? そこは危険のないところだから寛いでいてくれ」
「了解よ!」
枠のどこからか瑛菜の声がする。茸を採るメンバーに向かってメアベルが言った。
「広い巣ではないから作業時間30分程度で済むと思う。
一気に大人数も大変だろうから、数人ずつの組で探してもらうのが良いだろう」
メアベルは美緒のほうへ向き直った。
「ああ、それとな、これが夢幻茸の特徴を記したものだ。
……ただ、あたしは絵が上手くなくてな」
メアベルがすまなそうに言って茸の特徴を記した紙を美緒に渡した。紙にはキノコらしき物体の絵が殴り書きされ、絵とは正反対の綺麗な字で、
・茸自体は薄茶色で、暗い場所で青く発光する。
・大きさは5センチほど、傷をつけると傷口がすぐ青く変わる。
と記されている。茸探し担当たちの間に紙が回された。誰も何も言わなかったが、イラストに関しては全員一致でひそかに同じことを思った。
(確かに絵は致命的に下手だ……)
「夢見担当をしてくれる方は、メアテネル水晶そばで待機を願いたい」
煎じ薬とは別のなべで入れられた薫り高い茶が皆に振舞われる。
「では、皆様方、よろしくお願い致しますぞ」
かくしてメアテネル救出作戦が始まったのであった。
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