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リアクション
「やったかしら……ねぇ、玖朔さん」
「あぁ。……ちぇ、勿体ねぇなあ。さっき潰した子たち、結構可愛い子だったのになぁ」
恋人、霧島 玖朔の小さな呟きを耳にして、水無月 睡蓮の瞳からすうっと正気の色が消える。
「ふ……うふふふふふふふふふふ。何か言ったかしら玖朔さん。もっともっと徹底的に潰しておいた方がよかったかしら? 玖朔さんに近づく女は、皆跡形もなく」
「あ……ははは」
「玖朔さんてば、浮気性なんだから…… 私は車の操縦をしますから、玖朔さんは私の操縦、お願いしますね」
「ああ」
運転席に座っているのは、玖朔。
その膝の上に、睡蓮。
玖朔が手を伸ばすと、睡蓮の胸を鷲塚む。
「あ……んっ」
「ほら、『操縦』中は静かにしろよ」
玖朔の指が蠢く。
ぱん。
ぱん。
乾いた音が、二度。
車のフロントガラスに蜘蛛の巣のようにヒビが入る。
そして、ふたつの穴。
無限 大吾の撃ったピストルの弾丸は、玖朔と睡蓮に命中した。
玖朔はそれが致命傷だった。
「玖朔……さん……?」
がしゃあああん!
フロントガラスが砕ける音。
西表 アリカが車の中に飛び込んだのだ。
「ボクと、大吾の仲を引き裂こうとする人は許さないいいいっ!」
アリカが睡蓮の喉笛に噛み付いた。
ごきり。
睡蓮の首の骨が、嫌な音を立てる。
アリカが噛み千切った喉から、大量のチョコレートが拭き出した。
「やったよ、大吾!」
チョコレートまみれの晴れやかな顔で、アリカは大吾に笑いかける。
「ああ……」
アリカが車から出るのに手を貸す大吾。
「この車、チョコレートまみれだ。……どんだけ人を引き殺したんだよ」
浮かない顔で大吾は呟く。
アリカは目を瞑って耳を澄ます。
一時期、あれだけたくさん聞こえてきた人の悲鳴、銃の音、爆発の音。
それが全くしなくなっている。
島は、静かだ。
「……みんな、いなくなったのかな」
「そうらしいな」
「じゃあ、行こうよ大吾! 二人で、ボク達の愛おしい未来へ……!」
笑顔で大吾の手を引くアリカ。
その先には、ボートが。
二人の未来が……
「あっ、いた! 人がいたっ!」
声が聞こえた。
誰もいなくなったと思った島に。
二人が振り返ると、一人の少女。
島中、パートナーを探して回っていた堂島 結だった。
結は嬉しそうな様子で二人の所に近づいてくる。
「なんだあの子は。敵意はなさそうだが……」
「きっと大吾を傷つける敵に決まってる! ボクに任せて!」
大吾を守るように背中に回すと、牙を剥くアリカ。
その時。
アリカは、結の表情が一瞬のうちに歓喜と驚愕に変化するのを見た。
そして背中で聞こえた、嫌な音。
骨が切れる音だった。
「アリカっ!!」
大吾の声が、遠くに聞こえる。
アリカが振り向いた時には、全て終わっていた。
日本刀を持った少女……結のパートナー、仁科 美桜(にしな・みおう)がアリカを真っ二つに斬っていた。
「み……美桜ちゃん……」
結に向かってにこりと微笑むと、くるりと回って後方で固まっていた大吾を切り捨てる。
返りチョコレートが、美桜の顔を汚した。
「どうして……どういうことなの、美桜ちゃん……」
「大丈夫、結。怖い人は、みんな消えてもらったから……」
美桜は結にゆっくりと話し出した。
この島で、今まで誰とも会わなかった、怖い目に遭わなかった、結のために。
この島は、異常である事を。
この島に来た人物はおかしくなってしまう事を。
だから美桜は結のために、ずっと彼女の行く先々に先回りをして、そこにいる人を殺して回っていた事を。
結は、泣いていた。
美桜の話の途中から。
「どうして…… そんな、ことを……?」
「結が大事だから。それ以外に理由なんてないよ」
美桜は、結の肩を抱く。
「さあ、行こうよ」
「どこへ?」
「この島の外へ」
水無月 睡蓮:死亡
霧島 玖朔:死亡
無限 大吾:死亡
西表 アリカ:死亡
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