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取り憑かれしモノを救え―救済の章―

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取り憑かれしモノを救え―救済の章―

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●取り憑かれしモノを救う物語

 ――以後の出来事を記します。
 今回の事件に関わった人たちには、村より手厚い御礼と持て成しを受け、一つの英雄譚として語り継がれるそうです。
 剣に宿る怨念に取り憑かれたミルファ・リゼリィは後遺症も無く、翌朝には博季・アシュリング(ひろき・あしゅりんぐ)と共に村中を駆け回り、謝罪に回ったそうです。
 村のご老人方からは、しようがない、運が悪かった、なんていう同情の声がかけられていました。

 これにより、剣に宿る怨念の起こす事件は一応の決着を見たことでしょう。

 また、
 リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)、龍大地
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
 永井託(ながい・たく)那由他行人(なゆた・ゆきと)
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)
 佐野和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)スノー・クライム(すのー・くらいむ)
 猪川勇平(いがわ・ゆうへい)ウイシア・レイニア(ういしあ・れいにあ)
 以上14名は、佐野和輝のパートナー、リモン・ミュラー(りもん・みゅらー)による診断の結果を聞かされていました。
 強い感情を増幅して、それをそのまま反転させ、攻撃的にする術式を無作為にばら撒いた、というのがおおよそのことで。
 その術式にかかるのは元来パラミタ、またはパラミタより繋がる世界の住人、もしくはパラミタの環境に適応するための強化をなされた人にしか効果が及ばないそうでした。
 増幅させるのは契約者への、愛だったり、羨望だったり、保護欲だったり、独占欲だったりさまざまなようです。
 グラキエス・エンドロアは、当時のことを覚えていないようでしたが、その話を聞き、少しほっとしている様子でした。
 各々パートナーたちとの絆を再認識した契約者の皆さんは、喜びに涙を浮かべたり、お互いに謝罪したり、それに対して労いの言葉をかけていたりと忙しそうでした。

 そもそもの発端である、封印を施されていた剣は、結界の破壊と共に粉々に粉砕されたと――表向きの話ではありますが――され、剣に宿る怨念に取り憑かれたミルファ・リゼリィも被害者の一人であることから、この問題の是非を問うことはできないようです。

 次に、事件に関係する人物についてのことを記します。この記事は筆者の主観が多分に含まれるため、提出の書類は別物とします。
 被害者、ミルファ・リゼリィはツァンダ地方から追放され、ミスターバロン(みすたー・ばろん)の提案を受け現在はザンスカール地方に居を構えたようです。そして、魅了や幻惑といった精神干渉系の術式に抵抗する術を学ぶため、イルミンスール魔法学校へと入学。そこでできた友人や、今回の封印強化の儀式の際に友人となったアニス・パラス等と仲良く学校生活を送っているそうです。
 首謀者、剣に宿った怨念――後の資料から、名前はユウヤと判明――は戦闘後呪縛から開放され、蒼玉石に封印されていた姉――ミヤ――の魂ともども消えていきました。風森巽(かぜもり・たつみ)ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)両名の提案を受け、輝きを失い中ほどから折れてしまった白銀の剣と、同じようにくすんだ蒼色のただの宝石となった蒼玉石を、元々結界の最後の基点であった蒼玉石が安置されていた墓に添えることとしました。厳重に人払いの結界をかけ、誰にも邪魔をされない姉弟二人の聖域をフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)ルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)が作り上げたようです。
 氷精、ティア・フリスは、戦闘の助力後、村には姿を見せず住処へ帰ろうとしていたようですが、博季・アシュリングに捕まり、月次毎の催し物の話を聞くとそれに興味を示していました。そのため、住処に封印を施すと下山。現在はアイス屋の主人である、ガレイ・ニールの所に身を寄せているようです。
 事件解決への助力をしていただいた契約者さんたちは、少しだけ休息を取り自分たちの仲間の元へと帰っていきました。
 印象的だったのは、家族のような関係の方たちほど、口々に「お前がいなかったら自分がこうなっていたのだな」に類することを恐々と言っていました。筆者は思います。これは彼の末路であり、皆様の歩むべき道ははるか先まで続いていると。

     †――†

 かたりと筆を置き、筆者であるミルファ・リゼリィはんーっと一つ伸びをしていた。
 差し込む日差しは暖かくて、今にも眠ってしまいそうだった。
 何が起こったのか述べよという上からの圧力で、ミルファは締め切りの無い報告書を作っていた。
 ぼんやりとした記憶の中、体を乗っ取られている中でも、剣に宿った怨念の悲しい思いは残っていた。そして、思い起こされた短い生涯の中での楽しかった日々のことも。
 今回のことは、どちらが正義でどちらが悪で、なんて二分することはできない。
 やっていることは間違ったかもしれないけど、そこに至った想いは本物だったから。
 ただ、止めるために動いた方の力が強くて、怨念もそれに賭けた。きっとそういうことだろうと考える。
 壊そうと囁きかけた声は、きっと隠蔽体質であった村のことなのかも。
 そして証明しようと強く訴えた声は、たぶん、きっと、道半ばで散った自身の思いが正しいことを証明したかったのかも。
 でもやっぱり、あの斬られた記憶、首や腕の落ちる感覚がたまに蘇る。致し方なしではあるが、夢に出てくるときはちょっと嫌になる。でもこれは自分自身の未熟さが祟った結果だということで諦めることにしていた。
 方々から時折かかってくる心配の声に、元気でやっていることを伝え、暇な日はこうやって報告書と、今回あった出来事を後世に伝えるために物語として残している。
 出来上がったら、ひっそりとイルミンスールの図書館のどこかに隠しておけばいいかな、なんて思った。

「――どうか今も笑っていて♪」

 口ずさむのは、彼の記憶が呼び起こされる原因となった歌。ミルファはそれが気に入っていた。
 優しくて、吹き抜けるそよ風のような歌。
 それを口ずさみながら、ミルファの一日は過ぎていく。

 そしていつの日か完成した物語は、調査の章、救済の章の二部構成で、どこかの本棚にひっそりと置かれているようだった――

                  ――<取り憑かれしモノを救え エンド1[真なる救済] 了>――

担当マスターより

▼担当マスター

来宮悠里

▼マスターコメント

 ご挨拶の前に一言。
「マジ厨二病爆発してるシーンありますが、生暖かい目で許してください。後遅延本当にすいません……」

 ご参加またはここまでお読み頂きありがとうございました。
 来宮悠里プレゼンツ第6弾「取り憑かれしモノを救え―救済の章―」お楽しみいただけたでしょうか。
 今回のシナリオの雑感は更新されるマスターページにて書かれるとおりになります。

 スライム戦は前編で物理攻撃は厳禁、なんて書いたせいで魔法オンリーになっていましたが、実は、

・限界まで物理攻撃で分裂をさせる。
・全体攻撃魔法で一掃する。

 の二点を押さえると意外にあっさり倒せるようになっていました。
 能力は全てに適用されます。
 攻撃力、防御力、そして再生能力も能力の一つです。
 ただし、今回の戦い方はスマートとはいえませんが、アクションの大半が炎熱属性の魔法を使うということで、属性傾向が偏り、炎熱属性の魔法の威力上昇効果を得ました。しかしこれは、当シナリオ内のみ有効ですのでお気をつけください。他マスターのシナリオに持ち出してもボツになる可能性のほうが高いです。

 アクションで目に止まった方には個別コメントと称号を発行しています。

 今回のダブルアクションの判定は、戦闘中二箇所以上の戦場に出る行為をダブルアクション判定とさせていただきました。
 戦前もしくは戦後と戦闘についてのアクションはダブルアクション判定していません。

 また、当リアクションの提出を持って、来宮悠里の蒼空のフロンティアでの活動は終わりとなります。
 少ない本数でしたが、お付き合いいただいたプレイヤー様、本当にありがとうございました。