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第1章 英雄・アキレウス

「さすがに、一人だとこの数はきつい……よね」
 トーチングスタッフを構え、アゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)は、肩を上下に振るわせていた。
 アゾートの周りには、数人の兵士達。
 その向こう側ではギリシア神話の英雄、アキレウスがアゾートを睨み付けていた。
「……」
 兵士達は静かにアゾートに斬りかかるタイミングを見計らっていた。
 アゾートは、どうやってこのピンチを切り抜けたものかと少し考え込んでいた。

 考え込んでいると、突然アゾートの左方向の兵士達が次々と倒れていく。
 倒れた兵士達をかき分けて、アゾートの前に青年が現れた。
 青年の手には、光条兵器の大きな剣が握られていた。
「てめえら! 布きれ一枚で女性に襲いかかるとか変態か!?」
「えっ?」
 突然現れたヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)は、兵士達に向かって威嚇をしながら叫んだ。
 思わぬ出来事にアゾートは目を点にさせ、ヴァイスに注目した。
 しかし、思わぬ助けにアゾートは内心安堵を浮かべた。
「大丈夫か、ワルプルギルスさん?」
 ヴァイスはアゾートに向かって、安否を尋ねた。
「あ、うん。ありがとう」
「おい、何をしている。お前達どんどん攻め込め!」
 アキレウスは後ろから、兵士達に大声で命令をした。
「ふん……本らしく、元の紙キレ同様ぺらぺらにしてやるぜ!」
 兵士達は雪崩のようにヴァイス達に押しかかってきた。
 ヴァイスはアゾートを守るように襲いかかる兵士たちを剣で薙ぎ払っていった。
 薙ぎ払った後からヴァイスの目の前に矢が数本振ってくる。剣士しか襲ってこないと思っていただけに驚いた。
「ワルプルギルスさん弓矢に気をつけろ!」
「注意ありがとう。それと、私のことはアゾートでいいよ」
 アゾートの方にも弓矢が降ってきているのが見えたので焦って声を出した。
 だがアゾートは、小柄な体でうまく矢の雨をかわしているようだった。
「ふう。このままだと埒があかないぜ。アゾートさんと二人じゃ限界もあるぜ」
 ヴァイスはいくらなぎ倒しても減らない兵士たちにため息をついた。
 同時に空から降ってくる弓矢とアゾートにも気を配っていると、もう一人兵士たちと戦っている姿がヴァイスの目に飛び込んだ。
「ん? 布きれ一枚じゃないな?」
 闘っているのはしっかりと服をまとった、正真正銘の生徒だった。