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料理バトルは命がけ

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料理バトルは命がけ

リアクション

『さーて皆様お待たせしましたー。審査員の方々が天国から戻ってきたよー』
『危うくそのまま昇天しちゃいそうだったらしいよ』
『そんな感じでお送りしてきましたが、Bブロック参加者も残りわずか2組! 審査員のお腹は大丈夫か!? それじゃ行ってみよー!』

「随分と酷い目にあったみたいだな……」
 ぐったりとする審査員達を見て、五十嵐 睦月(いがらし・むつき)が同情するような目で見た。
「今まで見たけど酷いもんだったからなぁ……そんなみんなに癒しを持ってきたぜ」
 その言葉に審査員一同『嘘ついてんじゃねーよてめー』と言いたげな目でジトっと睨み付ける。
「そんな目するなよ……僕は天使なんだぜ? 癒しを与えるのが役目ってね。まぁ見てろって」
 そう言いつつ、睦月が何者かを連れて来る。
「……え?」
 連れてきた人物――ラナ・リゼット(らな・りぜっと)に審査員一同目を疑った。ラナはよく見ると眠っているようである。
「ああ、ちょっと【ヒプノシス】で眠ってもらってるだけだ……で、僕が作ろうとしているのはクリームとフルーツを使ったデザートだ。名前を付けるとしたら『ラナ・リゼットのクリーム和え』ってところかな」
 何処かでガタッ、と立ち上がるような音が聞こえた気がした。
「ここにホイップクリームと各種フルーツと、後チョコソースを揃えた。素材が彼女だから服を剥いでクリームとフルーツを盛り付ければ完成だ……ああ、完成予定では危ない所はクリームで隠すから安心してくれ。全年齢対象の壁に阻まれてな
 それはそれで美味しく頂けます、と誰かが言ったような気がした。
 審査員も唖然としているのか、それとも『もっとやれ』と言っているのか動けずにいる。
 そんな中睦月がクリームやら用意を始める。
「さて、それじゃ服を剥ぐか」
 睦月が手を伸ばそうとする。完成したら薄い本が出る。そんな予感がする。
「させるもんですかぁーッ!」
 ゴン、という鈍い音がしたかと思うと、睦月がそのまま膝から崩れ落ちる。
 後頭部には巨大なたんこぶ。そして、泉 美緒(いずみ・みお)が血の付いたフライパンを握りしめて立っていた。
「ラナにそんなことはさせませんわ!」
 ピクリとも動かない睦月に美緒が叫ぶ。
「……ん……ん? み、美緒? 私は一体……何だか記憶が無いのですが……」
 その騒ぎのせいか、ラナが目を覚ますと美緒が彼女を抱きしめる。
「何でもありませんわ、少し眠っていただけです」
「は、はぁ……」
 釈然としないが、一応納得したようにラナは頷いた。
 その後ろで運ばれていく睦月。やはり全年齢の壁は某ネズミ王国並みに厳しいのであった。ちっ。

「……と、次……最後はわたくしなんですね」
 裏の控室までラナを連れてくると、美緒が緊張した面持ちで呟く。
「美緒……」
「ラナは先に外で待っていてください……心配しないでください、わたくしが成長した姿、見せてきます」
 そう言うと、美緒は一歩踏み出した。
 その後ろ姿を見て、ラナは祈る。「……どうか、死人だけは出ませんように」と。

「はい、わたくしが作った物はこちら、おにぎりですわ」
 美緒が皿のクロッシュを開く。
「……おにぎり?」
「はい、日本にある有名な料理として思いついたものがこれでしたので」
 正悟の呟きに、美緒が答える。
「へ、へぇ……ま、まぁ形は悪くは無いんじゃない……?」
 先程のタタキいためのダメージが抜けきらないのか、菫が額から脂汗を流しつつも余裕ぶった様子で言った。
「菫……やっぱり私が出るわよ……あなた顔色がすごいことになっているわよ?」
 菫の隣でずっと見ていたパビェーダが心配そうに言うが、それを菫は手で制す。
「いいのよ……あれくらいならまだいけそうだし……それにあんた、一つ絶対無理そうなのあるじゃない……」
 そう言って美緒が作ったおにぎりを指さす。
――それは海苔が全体に巻かれた俵型の物であった。その上に中身がわかりやすいようにか、具が載っていた。
 一つはマグロか何かの赤身、一つは明太子と何故かいくら、一つは梅干し……でなく青梅であった。
「た、確かにそうだけど……」
 魚卵が苦手なパビェーダが明太子といくらを見て言葉を詰まらせる。
「さ、召し上がれ」
「あ、ああ……」
 促され、審査員達が手に取る中、正悟が躊躇いがちに赤身が載ったおにぎりを手に取り、額に頬が伝う。
 生ものが苦手な彼にとって、これを食べたらどうなるかはもうわかりきっている。
「……ああ、上等だ……逝ってやろうじゃねぇか!」
 だが、退くという選択肢は彼になかった。
 他の審査員達と一緒に、口に含み、

『らっぶぁッ!?』

一緒に吹き出し、ぶっ倒れた。