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料理バトルは命がけ

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料理バトルは命がけ

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第六章 ※今回の料理は参加した皆様で美味死くいただきました

「……ああ、本当に空が青いな」
「いやいや、空って天井しかないじゃないか」
 天井を見て呟く無限 大吾(むげん・だいご)に、相田 なぶら(あいだ・なぶら)が突っ込みを入れる。
「いやぁ、遠くを見ていたら見える気がしたんだよ」
「あぁ、それじゃ仕方ないや」
 大吾となぶらが渇いた笑いを上げた。
「そなたら現実に戻らんか……」
 その様子を隣で見ていたルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)が呆れた様な、何処か同情するように声をかける。
「いや、あんなの見たら仕方ないだろ……」
 ウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)が今までの料理を思い出したのか、ぶるりと身を震わせる。
「そうじゃのぉ……どれもこれもひどい料理じゃったのぉ……」
「というかあれを料理と言っちゃ駄目だろ」
 そして本格的に光景を思い出したのか、二人がげんなりとした表情になる。
「本当に壮絶だったわ……怖かったよーダーリン」
 イリア・ヘラー(いりあ・へらー)がどさくさに紛れてルファンの腕にしがみつく。
「「その酷い料理と呼べないものにうちのパートナー達が関わっていたんですがねぇ」」
「……何というか、すまん」
 大吾となぶらに、ルファンが謝る。
「……帰るか」
「そうだねぇ……まだ結果出てないけど」
 大吾となぶらが席を立った瞬間、
『はーい皆様お待たせしましたー! 結果発表にいきまーす!』
会場内に小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の声が響き渡る。
『壮絶なバトルだったけど、どんな結果になったのかな?』
『それじゃ発表するよ! ……あれ? 泪先生、どうし――』
『そ、それがなんでここに!? って何で無言なんで――』
 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)と美羽の声が、途中で途切れる。そしてバタバタと何か物々しい音がしたかと思うと、
『皆様お待たせしましたー! 結果発表の前にお知らせがありまーす!』
 何故かアナウンスが卜部 泪(うらべ・るい)に変わった。会場内がざわめきだすが、お構いなしにアナウンスは続く。
『Aブロックで作られましたマウンテンシューですが、今現在もその数は一向に減っておりません。他にも作られた料理が残っており、このままでは廃棄、という事になってしまいます。食べ物を粗末にするというのはいささか抵抗がある、というのが運営の気持ちです』
 会場から『今まで粗末にしていなかったとでも?』という声が出て来そうな空気であった。
『現在調理に参加したの方々にも食べて頂いてますが全滅……食べきれないというので――そこで、観客の皆様にもこの料理をプレゼント! ということが決まりました!
 会場の空気が一瞬凍る。そして出口へとダッシュする観客達。
 しかし扉は封じられており開かない。叩こうが何をしようが、沈黙を守ったままであった。
『帰ろうとしても駄目ですよー、食べきらないと帰れない仕組みになっています……ただ見るだけ、なんて許されませんから……皆様も味わっていただきましょうね
 
――本当の地獄はこれからであった。

「……と、これで優勝とかに関しては有耶無耶にできますね」
「いやそれ酷くないですか!?」
 運営ルーム。一仕事終え、爽やかな笑顔を見せる泪に天野翼が突っ込む。
「酷くはありませんよ。好奇心は猫を殺す、ということです」
「いやよくわからないんですが……」
「考えるな、感じろって事だよ」
 金元 ななな(かねもと・ななな)が会場内のカメラを見て言った。映っている映像はまぁ、なんて言うか地獄だ。
「うわ……ななな達恨まれないかな……」
「これも試練です。それに一番悪いのは優勝とか一切考えてなかった人なんですから、恨まれるならそちらですよ」
 なななに泪がポツリと呟く。さて、誰の事だろうか。
「余り我らも長居はできんな。撤収するとしよう」
 金 鋭峰(じん・るいふぉん)の言葉に運営ルームにいる全員が頷き、その場を去ることになった。
 ちなみに鋭鋒は先程出された料理は食べきったらしいが、それが語られることは多分無い。

 ※作られた料理などは全て会場の皆様で処分……美味しく頂きました。

「……ふぅ、ここまでくれば大丈夫でしょう」
 会場の外、巻き込まれる前にどうにか逃げ出したラナと美緒が額の汗をぬぐう。
「はぁ……とんでもない事になりましたわね……」
「それは最初からですが……お腹もすきましたし、早く帰りましょうか」
「あ、ちょっと待ってください」
 美緒が足を止めると、何やらごそごそと取り出した。
「ラナ、これを食べてください」
 そして、先程出したおにぎりの一つを、ラナに差し出す。
「……こ、これは……」
「ラナにもわたくしが成長したことを知ってほしくて、一つだけですが持ってきたんです」
 そう言って美緒が笑顔を見せる。対照的にラナの顔は引きつっていた。
 審査員全員を全滅させたおにぎりを前に、ラナが覚悟を決めた様に一度頷いた。
「……失礼」
 ラナは美緒からおにぎりを受け取る。中身は赤身のようだ。
 それを二つに割ってみると――中から、パラパラと生米がこぼれ出てきた。
「……え?」
「苦労したんですよ。お米は粒を揃えると美味しい、と聞いたので一粒一粒大きさを揃えたんです」
「いや、それは炊く場合……後この黒い粒は一体なんなのでしょうか?」
 生米に混じって入っている黒い丸い粒。ツン、とした刺激臭を放っていた。
「それは……お腹を壊してもいいようにと……ラッパのマークのお薬です
「……そうですか」
 ラナは最後の実食の光景を思い返す。

――まず、生もので2人がダウン。
――そして油断していた所に入っていたラッパのマークのお薬で2人がダウン。
――その味に情報がオーバーロードし、1人がダウン。
――その恐ろしい光景に、最後に残っていた1人が恐れをなしてチワワの様に震えて蹲ってしまった。

「さ、早く食べてください」
 期待するような目でラナを見る美緒。
「美緒」
 ラナはそんな美緒の両肩に優しく手を置き、こう言った。

「……まずは、お米を炊く事から始めましょうか」

担当マスターより

▼担当マスター

高久 高久

▼マスターコメント

ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。今回担当させていただきました高久高久です。
御参加頂いた皆様、誠にありがとうございました。そしてこの度も大変お待たせして申し訳ございませんでした。

今回は一風変わった料理バトル、ということでやってみたシナリオでした。
実際蓋を開けてみると、バトルというより虐殺……?と思わざるを得ないアクションに腹を抱えて笑うこともしばしばありました。
本当に容赦ありませんね皆様。殺る気満々です。

毎回アクションを読ませていただき、楽しく読ませていただいてます。
毎回勉強させられる事も多く、自らの未熟さを痛感させられています。
特に今回は反省することだらけになってしまいました。お待たせして本当に申し訳ございませんでした。
次回作に関しては未定です。少し間を開ける事になるかもしれません。

それではまた次の機会、皆様と御一緒できる事を楽しみにしております。