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金の道

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金の道

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 ここはアトラスの傷跡の麓――その大きな山の麓には、「金の道」とも呼ばれる岩で出来た洞窟が、ぽっかりと大きく口を開いている。
 洞窟の奥には、シャンバラ古王国時代の女王アムリアナを奉った「アムリアナの聖廟」と呼ばれる聖なる土地があり、そのためか洞窟の周りは尊厳な雰囲気が漂っている――はずであった。そう、少し前までは……

「あそこに見えるのが、金銀財宝が眠ると噂されている金の道だぜ。まあ、俺たちにはドージェがティフォンを倒した場所と言った方が分かりやすいがな」

 国頭 武尊(くにがみ・たける)が、まるでツアーガイドのように後ろにぞろぞろと人だかりを引き連れ、説明を行っている。

「うおおお! あれが噂のドージェ様がティフォンを破った金の道かっ!」

「せっかくだから記念撮影しようぜ」

 修学旅行のような雰囲気を漂わせている集団は、よく見ると荒くれ者たちばかりであり、一種異様な熱気を漂わせていた。

「おうおう! いくら我がパラ実の聖地だからって、あんまりはしゃぎ過ぎるなよ?」

 武尊がそう言ってたしなめるが、一旦興奮してしまった集団の熱気は収まるどころか膨れ上がっていくばかりである。さらに、何故か洞窟の周りには屋台が立ち並び、飲食はおろか金魚掬いや花火といった娯楽まで一通り揃っていた。

「兄さん兄さん、記念撮影ならこっちの等身大パネルがお勧めだぜ?」

 祭りに着る法被を纏い、客引きのような格好をしている猫井 又吉(ねこい・またきち)が、さっと屋台に群がる人々の間に割り込み、まくしたてるようなマシンガントークで客を引っ張っていく。
又吉の口車に乗せられ、何人かが彼の後をついていくと、ドージェがティフォンを地面に跪かせ、顔を踏みつけている構図の等身大パネルが用意されていた。しかも、観光地によくある等身大パネルと同じく、ドージェの顔の部分はくり抜かれていて記念撮影が可能である。

「すげえ! あそこに顔を入れたら、俺もドージェ様になれるぜ」

「おまっ! 俺の方が先に撮影してもらうんだからな」

「はいはい。慌てなくてもパネルは逃げないから、ちゃんと列を作って順番待ちしろよ」

 又吉は客の注文に合わせ、絵画のフラワシで描いた絵と写真を合成させ、ありとあらゆるドージェがティホンを痛めつけているパネルを作り出していった。しかも、又吉と同じパラ実生は無料で写真が撮影できるとあって、たちまち数ある金の道周辺の出し物の中でも有数の人気店になった。

「へへ、これで俺もパラ実のD級四天王からC級に昇格できるぜ……」

 パラ実生が我先にとパネルを奪い合う様子を、又吉は傍らで満面の笑みをこぼしながら眺めていた。