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【第一話】動き出す“蛍”

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【第一話】動き出す“蛍”

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第五章:魔法・超能力タイプ戦(遭遇編)
 敵機が放つ様々な魔法攻撃、その中でも炎による攻撃を受けたものが引火し、またたくまに方々に燃え広がった施設を前に、大型の兵員輸送車に乗った一個小隊がたった今、到着した。
 停車した兵員輸送車の荷台から真っ先に降りてきたのは隊長であるトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)。彼等こそ、トマス以下、魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)の三名で構成される教導団のパワードスーツ部隊――フィアーカー・バルを運用するトマス隊だ。この部隊もカタクラフト隊と同じく、教導団が誇る優秀なパワードスーツ隊である。
「各施設の被った被害は、物的及び人的共に甚大だ。物的被害をこれ以上に拡大させないこともともかくだが、失われれば還る事のない人命、人的被害を増やしてはならない。よって、我が班は救出作業に当たる」
 トマス隊の隊長であるトマスは、予想以上に驚異的な性能を誇る敵機を前にピンチに陥った光龍とスマラクトヴォルケを助けに行きたい気持ちをぐっと堪え、努めて冷静に隊の仲間たちへとそう告げた。
 今回、緊急出動したトマス隊は奇襲によって被害を受けた施設の延焼を防ぎ、怪我人等の収用にあたるメンバーの保護を目的としている。攻撃が継続して行なわれていることからも、生身で作業に当たる事は難しく間違えば僕達もまた救助を求める側になりかねないので、各自PS装備の上で、救出作業班の護衛任務及び救出活動そのものを行なうという意図があるのだ。
「対イコン戦闘は、対イコン戦闘グループを信じて、僕達は人的救助に向かうグループの護衛と進路の安全確保を優先する」
 敢えて光龍とスマラクトヴォルケの姿を見ないようにしながら、再びトマスは冷静にそう告げる。毅然とした声音で発せられるその言葉は、心なしかトマスが自分自身に言い聞かせているようにも感じられる。
「自前でPSを装備できる人員には限りがあるから、ほとんどの救助急行組は生身で戦闘区域もしくは破壊・炎上区域に向かう事になる。彼らの身の安全と、被救助者の安全の為にPS隊を展開する作戦で行こうと思う」
 自分を信じてついてきてくれている仲間たち一人一人の顔をしっかりと見据えながら、トマスは更に告げた。
「進路を切り開いて作りながら、現地状況を情報として成るべく正確に、この施設の後方に待機中の部隊に逐次報告してくれ。本部で全体の状況を把握するためのデータを可能な限り増やせるように配慮するんだ。必要があって本部から指示があるようであれば、現地の状況も見比べて僕の――少尉の権限の範囲で撤退なり戦闘なりも行なうつもりだ」
 対する仲間たちは、トマスの告げる作戦内容にしっかりと聞き入っている。作戦の一つ一つを静聴するその態度からも、彼等のトマスに対する信頼の強さが窺い知れる。
 もう一度、トマス隊の仲間たちの顔を一人一人しっかりと見据えた後、トマスは毅然と言い放った。
「損害を増やさない事が僕達の第一の任務だ、いいね? ――トマス隊、作戦開始だ!」
 テノーリオも気合の入った声で同調する。
「おうよ! トマスが大切に思うように、人命は損なわれたら二度と戻って来ない。怪我でまだ済んでいる連中は助けなきゃな!」
 イコン同士の戦いとは別の、トマス隊独自の戦いが、ここで今まさに始まろうとしていた――。