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リアクション
第十三章:VS魔法・超能力タイプ戦(決着編)
「……クソッ! ここまで……なのかよっ!」
D.プルガトリオのコクピットで雲雀は怒りとともに叫んだ。
先程からずっと限界を超えて戦い続けたせいか、既にD.プルガトリオの足腰は完全に機能停止していた。
へたり込んでしまったD.プルガトリオの前には敵機が迫っており、右手に持った杖状パーツの先端には高熱の火炎が渦巻いている。
そして敵機は動けないD.プルガトリオに向けて強力な炎熱魔法を撃ち込んだ。
超高熱の火炎に呑み込まれ、D.プルガトリオは一瞬にして爆破炎上する。
『雲雀ィィィッッ! サラマンディアァァァッッ! この野郎ッ! よくもッ!』
爆破炎上するD.プルガトリオに向かって昌毅が絶叫を上げる。
フレスヴェルグのカメラアイを通して昌毅から射殺さんばかりに注がれる怒りの視線も特に気にしていない様子の敵機が、D.プルガトリオを片付けた後で事もなげに次なる標的へと向き直った直時だった。
今も断続的に誘爆を繰り返すD.プルガトリオの残骸から極小サイズの何かが飛び出したのだ。
それが文字通りの意味でコクピットから飛び出したサラマンディアと、彼によって小脇に抱えられて飛び出した雲雀であると敵機が気づいた時にはもう遅い。
不可視の障壁を発動させることなく敵機へと超至近近距離まで肉薄したサラマンディアが、爆風に背中を押されて飛び出した勢いをすべて乗せてヴォルケーノ・ハンマーを敵機胸部の球体状パーツに叩きつける。
たとえ人間サイズの兵器とはいえ、サラマンディア自身がそれこそ砲弾として発射されたような状態で、なおかつヴォルケーノ・ハンマーも超重武器ということもあり、更にはハンマーが内包する炎熱の力を炸裂させ、そしてサラマンディアが全身全霊をベストタイミングで込めた一撃という数々のプラス要素が重なり合ったおかげだろう。
なんと、ヴォルケーノ・ハンマーの一撃は敵機胸部の球体状パーツを叩き割ったのだ。しかも、それで攻撃は終わりではない。叩き割ったことで開いた穴から雲雀は両手に握った二挺の魔導銃を突っ込むと、正真正銘の零距離から全弾を撃ち尽くす。
流石にこの攻撃は堪えたのだろう。敵機はまるで苦しげに呻くように左手を振り回すと、平手で張り倒すように雲雀とサラマンディアを叩き落す。
幸いにして遠くまで吹っ飛ばされた上に、何とか生きていた二人は、安全圏で仰向けかつ大の字になりながら、空を見上げる。
「どうだったよ、頭から突っ込んだ感想は?」
サラマンディアの問いかけに、雲雀は苦笑して答える。
「まさか本当にやるとは思わなかった」
するとサラマンディアはそれがおもしろかったのか、声を上げて笑い始める。
「誘爆しちまった時はその時だ、雲雀連れて飛ぶくらいはできらあ――ってな。俺にとっちゃあの程度の炎、せいぜいぬるま湯みたいなもんだ。そんな中から飛び出すなんざ、ヴォルテールの精霊にとっちゃどうって事無えよ」
いつしかサラマンディアと一緒になって雲雀も声を上げて笑い出すと、大の字になったまま軽く首を傾けて敵機と対峙する友軍機を見やる。
「あとは……あいつらに任せればきっと大丈夫……だよな」
そう言って雲雀が横を見やると、サラマンディアがゆっくりと目を閉じていく。雲雀は自分の意識が薄れていくのにつれて身体から力が抜けていくのを感じていた。妙に心地良い感覚の中、雲雀は自らの身体から力が抜けきっていくのと、意識が消えゆくのを感じながら、やり遂げた顔で自分も目を閉じたのだった。