リアクション
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壊れた千年王の霊廟。
その中にひっそりと佇むのは、千年王には似つかわしくない小さな慰霊碑。
それは戦いの後にルカルカの提案を受けて、ティフォンが建てたものだった。
「千年王よ」
と、ティフォンがそんな慰霊碑を見てつぶやく
いまこの慰霊碑の前には、千年王のために戦った契約者たちとエンヘドゥ、ティフォンが集まっていた。
「ねえ、こんな小さなものでよかったの?」
ルカルカがティフォンにそう訊ねる。
するとティフォンは笑みを浮かべた。
「あいつの大きさは、どんな物にも置き換えられん。だから、これでいいのだ」
「そう」
ルカルカはそうつぶやくと視線を慰霊碑へと向けた。
と、中願寺綾瀬がティフォンの側へとやってきて、彼を見上げる。
「ティフォン様、あれは悪用されぬようにあなたが持っていた方がいいと思いますわ」
「……そうだな」
綾瀬にそう言われ、ティフォンは突き刺さったままだったサウザンドソードを見た。
そして腕を伸ばすと、しっかりとその柄を握り締めて大地から引き抜く。
と、アキラ・セイルーンとそのパートナーであるルシェイメア・フローズン、セレスティア・レインが前に出て、慰霊碑の前に花束を置いた。
「ほんとはもっと盛大にやりたいところなんだけど、これで勘弁してくれよ千年王」
「うむっ、部下たちと共に安らかに眠るのじゃぞ」
アキラとルシェイメアはそういって目を閉じた。
そんなふたりの横で屈みこみ、セレスティアが供えた花束をつかむ。
そしてそれを空に放り投げれると、ウィンドタクトを振るって風を起こした。
「それ!」
風に吹かれた花びらが、霊廟の中を踊るように舞う。
それを見たエンヘドゥはそっと息を吸い込み、あのカナンの歌を口ずさんだ。
魔術の力はなかったが、そこにいた者たちはみな、あの日見た幻を今一度その目の前に見る。
部下を引き連れた千年王が微笑み、金眼の龍人に別れを告げるその姿を……。
――オオオオオオオオッ!!
と、ティフォンが天を仰いで咆哮する。
そしてその声に乗って、花びらも天高く舞い上がった。
<了>
千年王の慟哭・後編を最後までお読みくださりありがとうございます。
これにてこのお話は完結となりました。いかがでしたでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
今回は皆さんのナイスアクションから色々と想像が膨らみ、楽しく執筆させていただくことができました。
WFの絡むお話をまたやらせていただこうと思っていますので、その時は再び皆さんの力をお貸しいただければと思っています。
それではこの辺で、またお会いしましょう。
■追記
私の力不足でまたもや公開が遅れてしまったことをお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。