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リアクション
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「くそっ、数が多い!」
少数でWFの回収班と戦っていた契約者たちは、敵の数に押され始めていた。
そして気づけば、彼らは拠点の近くまで後退させられていた
「飛空艇も止めなきゃならないのに……こんなところで手間取っていられるか!」
和輝はそういいながら、両手の銃で敵を打ち倒す。
だが、和輝の攻撃を掻い潜り、先に進む敵たち。
と、そんな敵たちはアニス・パラスの仕掛けたトラップに次々と引っかかり、倒れていく。
それを見てアニスはにひひ〜っと笑う。
「やった、引っかかった! アニス凄いよね、和輝♪」
アニスはそういうと、物欲しそうな目つきで和輝を見つめる。
その視線を受けて、和輝はテキトーに”偉い偉い”とアニスを褒めてやった。
それを聞いたアニスは、満足そうに、にひひ〜と笑う。
「敵はまだ多いぞ。油断するな」
と、喜ぶアニスの後ろから水を差すようにリモン・ミュラーがそういった。
アニスは肩越しに後ろを振り返ると、むっとした目つきでリモンを見つめる。
「またせたわね!」
と、ルカルカ・ルーの声が上から聞こえてきた。
そしてそれと同時に巨大な影が地上を覆う。
「――ウィアードファウンデーションよ。我が友の霊廟で暴れるとはいい度胸だな!」
「ティフォン学長!」
空を見上げた桐ヶ谷煉は、頼もしい助っ人の名前を叫んだ。
「待たせたな、契約者たちよ。我も力を貸すぞ!」
ティフォンはそういうと、地上にいるWFの構成員たちを睨みつけた。
その圧倒的な存在感に気圧された敵たちは、思わずその場に立ち止まり後退さる。
嵐を起こすもの――そういわれるように、ティフォンはいまこの場所に嵐を巻き起こそうとしていた。
「まあ、ここはティフォンとみんなにまかせて問題ないわね。私たちはあの飛空艇を止めるわよ、ダリル!」
ルカルカはそういうと、小型飛空艇ヴォルケーノのエンジンを唸らせて霊廟の上空に到達しつつある飛空艇の元へと向かう。
ダリル・ガイザックは、霊廟内にいるカルキノスにテレパシーでティフォンが到着したことを告げると、そんなルカルカの後を追って動き出した。
「――そこの飛空艇! 止まりなさい!」
霊廟に近づく飛空艇に向かってそう叫ぶルカルカ。
そんな彼女の横にやってきたダリルは続けて警告する。
「すみやかに武装を解除して投降するんだ。もうおまえたちに勝ち目はないぞ!」
だがそんな2人の言葉に、敵は銃弾で答える。
2人はその攻撃をかわしながら、左右へと別れた。
「無益な戦いはしたくないんだが……聞く耳を持たないというなら、仕方がない!」
ダリルとルカルカは左右挟撃で飛空艇を攻める。
ヴォルケーノに搭載されたミサイルを飛空艇の動力部、方向舵、尾翼へと次々撃ち込むと、一旦離脱。
そしてスプリットSマニューバーでUターンをすると、再び敵機に接近し、装甲の薄い船腹にさらにミサイルを発射する。
そんな2人の息の合ったコンビネーション攻撃に飛空艇は堪らず炎をあげた。
そしてそのまま軌道を下げて、聖堂の方に向かって墜落していく。
「あっ、しまった!?」
それを見て、ルカルカは思わず声をあげた。
「ワタシに任せろ」
と、いつの間にかやってきたティフォンは、大きく口を開いて巨大な火球を飛空艇に放つ。
その攻撃を受けた飛空艇は、炎に包まれ軌道を再び変えた。
そして聖堂の屋根を壊し、その向こうに見える大地へと墜落していく。
「ティフォン、敵は?」
と、ルカルカがティフォンに聞いた。
「うむ、契約者たちと共にあらかた片付けてきた。残りは彼らだけで十分だろう」
「そう、わかったわ。それじゃあ残りの飛空艇も私たちにまかせて、ティフォンは早く友人に会いに行ってあげて! 千年王はあの聖堂で、待っているわ」
「……」
ティフォンは顔を強張らせ、天井の壊れた聖堂を見つめる。
そしてそこから響いてきた懐かしき咆哮を聞いて、彼は引かれるように動き出した。
***
「よし、出来たわ!」
聖堂内。
フレデリカ・レヴィは対抗呪文の構築を完了して、声をあげる。
「こちらもできました」
そんな彼女の横で、ルイーザ・レイシュタインもつぶやいた。
そしてふたりは出来上がった魔術儀式の内容を歌い手たちに伝え、その通りやってみるように願い出る。
「……皆さん、やってみましょう」
話を聞いたエンヘドゥはそういって、ルイーザの考えた歌い方でうたい始める。
そして楽器を演奏していた契約者は、演奏方法を少し違ったものへと変えた。
すると、フレデリカが編み出した魔術式が反応を示し、歌い手たちを中心にして光り輝く魔方陣が描かれ始める。