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【WF】千年王の慟哭・後編

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【WF】千年王の慟哭・後編

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 霊廟の外に作った拠点で周囲の警戒に当たっていた佐野 和輝(さの・かずき)は、空を警戒させていた飛装兵からの連絡を受けて声を荒げる。

「なに、多数の飛空艇がここに向かってるって? それは本当か?」
「本当みたいだよー」

 パタパタと翼を羽ばたかせて戻ってきた白鳩の群れたちの様子から、不穏なものを感じた巫女のアニス・パラス(あにす・ぱらす)は、和輝に向かってそういった。
 そんなアニスの言葉聞いたリモン・ミュラー(りもん・みゅらー)は、たくさんある遺体たちの処理をしながらもつぶやく。

「それは九分九厘、敵の増援と見て間違いないだろうな」
「そうだな……こりゃ、ヤバイことになりそうだ。空大の方にも連絡を入れておくか」
「そうだね。じゃあそれはアニスがやっておくね」

≪――誰か聞こえるか≫

「えっ?」

 と、アニスの頭の中に突然ティフォンの声が響いた。
 アニスの精神に感応しているティフォンは、そのまましゃべりつづける。

≪千年王の霊廟にいる者よ。ワタシはティフォンだ。いま、そちらに向かっている。ワタシが到着するまで、友の事はしばらく頼んだぞ≫

「――ねえ、和輝。ティフォンがこっちに向かってるって」
「それは本当か?」
「うん、ホントみたい。和輝、どうする?」
「そうか、ティフォンが……それなら、空大への連絡はいらないだろう。あとは内部へとの連絡だな」

 和輝はそう言いながら、斥候に視線を向ける。
 斥候は和輝の意志を読み取り、跪いて頭を下げるとすぐさま踵を返した。

「よし、それじゃあ俺たちはこの拠点の防備を固めるぞ」
「にゃは〜っ、なんだか騒がしくなってきたね。アニスもがんばろっと」
「……戦闘になるか。まあ、負傷者が出たら私の出番だな」

 3人はそういうと、敵を迎え撃つためにそれぞれ準備を始めた。


                                        ***


「千年王、わたくしたちの歌を聞いて! そして思い出して!」

 契約者たちに体力を回復してもらったエンヘドゥは再び立ち上がり、歌をうたいはじめる。
 そんなエンヘドゥの姿を見て、共に歌う契約者たちも声にさらに力を込めた。

「……これは使えるかもしれないわ」

 と、千年王の暴走を止めるべく、ウィッチクラフトの秘儀書を開いて効果のありそうな魔術式を探していたフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)は、それをようやく見つけてつぶやいた。
 そんな彼女の横で、同じように秘儀書を覗き込んでいたルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)は、視線をフレデリカに移す。

「エンヘドゥさんたちの歌に千年王の復活させた儀式を打ち消す魔術の力を乗せてぶつけるんですね」
「ええ、そうよルイ姉。歌と魔法の組み合わせは親和性が高いし、儀式の効果を打ち消す対抗呪文の効果も高まるはず……だから、試してみたいのよ。手伝ってくれる?」
「もちろんです。あんなボロボロの姿で現世に強引に呼び戻された千年王は見ていられません。安らかな眠りをもう一度与えてあげましょう」

 ふたりはうなずき合うと、それぞれに動き出す。
 フレデリカは、先ほど休んでいたエンヘドゥから聞いた千年王の復活に使われた儀式についての話などを参考にしながら、秘儀書を片手に儀式の効果打ち消す対抗呪文を構築していく。
 そしてルイーザはその対抗呪文を乗せる演奏方法、歌唱方法などを即席で組み立てはじめた。
 共に博識な知識を持つメイガスであるふたりは、千年王を助けるために持てる力を全力で発揮する。