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鳴動する、古代の超弩級戦艦

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鳴動する、古代の超弩級戦艦

リアクション



序章 「先行偵察」


 〜荒野・上空・高高度地点〜


 古代兵器の進撃する荒野の上空、地上が霞むほどの高高度に一機のイコンが滞空していた。
 PHOENIX_F【フィーニクス飛行形態】ブラックバード
 コマンダー佐野 和輝(さの・かずき)と魔法少女の強化人間アニス・パラス(あにす・ぱらす)の駆るイコンである。

「戦場に向かう各機とのデータリンクの申請は済んだ。これで、こっちの情報を奴らに回してやることができる。
 あとは……あの古代兵器の情報収集だが……」
「和輝〜、外見から得た情報をそっちの画面に回すね」
「ああ、頼む」

 和輝の全面モニターにアニスから送られた情報が表示される。
 敵の外見から予測できる武装データ、装甲の脆弱部分などのデータが送られた。

「これだけ見ると、ただの馬鹿でかい戦艦なんだが。それに洗脳と身体変化をもたらす声ってのが、厄介だな。
 アニス、声には耳を傾けるんじゃないぞ。俺達の役目は情報の収集と管制だ」
「うん、わかった」

 アニスの耳に誰かが囁く様な声が微かに聞こえてくる。
 助けも求めるような、何かを叱っているような、よくわからない声。

(でも……なんだろ、どこかで聞いたことがあるような……ないような……もう少し集中してみようかな……)

 そんなアニスの様子に気づかず、和輝はモニターの情報と睨めっこしていた。

「武装は、平均的な戦艦の物が巨大化しているってぐらいか、外見では特に特殊な武装はなさそうだな」

 主砲に、副砲、多数の対空火器……装備的にはどこも特殊な所はない。
 しかし、どこか不気味な所を感じる。言い知れない恐怖心のような。

「やはり、アンノウンな所は外見からじゃ見えない……後は、突入隊からの情報に頼るか」


 〜テメレーア内・戦闘指揮エリア


 精密機械と多数のモニターが設置された20人程度の入れる戦闘指揮エリアの司令官席に座る男性。
 彼はテクノクラートの英霊ホレーショ・ネルソン(ほれーしょ・ねるそん)
 Mobile_Fortress【機動要塞】HMS・テメレーアの司令官である。

 彼の隣に位置し、情報画面を見ながらオペレーターを務めるのは
 ブレイブのローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)
 和輝……呼称コードネーム、ホークアイから送られてくる情報を受け、テメレーアの進行ポイントを決めていく。

「ホークアイからの情報を考えると、進行ポイントに最適なのはこの辺りね、今そっちに情報を送るわ」

 ネルソンはローザマリアからの送られた進行ポイントを見る。古代兵器は背の高い丘の間を進んでおり、
 このまま正面から進行すれば、足を止めると同時に逃走経路を奪える。

「進行ポイントはこれでいいだろう。しかし、実に不可解だ」
「そうね……どうして古代兵器はこんな所を進んでいるのかしら。
 攻撃を受けたら、逃げ場のないような位置を。」

 ネルソンは顎を触りながら、

「敵の狙いが分からんな……細心の注意を払って進行するのがいいだろう。
 よし、通信回線開け。これより戦場に向かう者に対し、言葉を届ける」
「了解……少し待って……OK。通信回線開いたわよ」

 ネルソンは立ち上がり、マイクに向かって語りだす。

「こちら、テメレーアのホレーショ・ネルソン。俺達はこれから正体不明の古代兵器に挑まねばならない。
 各々不安もあるだろう……しかし、各員がその責務を全うすれば、勝てない相手ではないと俺は思う。
 今こそ、己が力を信じ立ち向かおうではないか」


1章 「先手必勝」


 〜オリュンポス・パレス内部・中枢〜


「……各員がその義務を全うすることを確信する。以上」

 ネルソンの通信が終わり、白衣の男性がその口を開いた。

「ククク……ネルソンめ、面白いことを言う。古代兵器など……そんなもの、我ら秘密結社オリュンポスに
 かかれば、赤子の手を捻るように簡単なことだという事を教えてやろうッ! フハハハハハハ」

 腰に手を当て、悪役よろしくの高笑いをしている彼の名はコマンダーのドクター・ハデス(どくたー・はです)
 鏖殺寺院の戦力増強を防ぐ為、Mobile_Fortress【機動要塞】機動城塞オリュンポス・パレスにて
 古代戦艦を迎え撃つべく参上したのである。

「ハデス君が契約者達の為に動くなんて、どういう風の吹き回しですか?」

 そう口にしたのは、テクノクラートの魔導書天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)
 彼は、オリュンポス・パレスの制御を担当し、作戦参謀も務めている。

「甘いな、天樹十六凪。鏖殺寺院は我ら秘密結社オリュンポスと敵対する相手。
 そんな奴らの新兵器……野放しにするわけにはいかん。共闘? 違うな、我らが目的の為に
 契約者達を利用するのだッ!!」

 天樹は静かな微笑を浮かべつつ、

「そう言うと思っていましたよ。既にオリュンポス・パレスの武装は使用可能な状態にあります」
「よし、ならば主砲の照準を敵、古代兵器に合わせろ! 主砲、発射……」
「無理です」

 発射の声と共にポーズをとっていたハデスは、がくりと体勢を崩す。

「天樹十六凪ッ! 主砲が発射できないとはどういう事だ! せっかく掛け声を出した意味が……」
「主砲を撃つには、エネルギーの充填が必要です。充填時間から考えると、撃てるのは一発が限度でしょう。
 ベストのタイミングを見極め、撃つ必要がありますからね」
「そ、そんな事……当然わかっていたぞ! 我らは副砲で砲撃を与えながら、主砲を撃つタイミングを
 待つのだ!」
「承知しました、ハデス君。これより鏖殺寺院の古代兵器を敵性戦力とみなし、
 副砲による射撃戦闘を開始します」

 オリュンポス・パレスの副砲は機械音を上げて稼働し、その照準に古代兵器を捉える。
 副砲のレーザーマシンガンが一斉に古代兵器に向かって発射された。

 古代兵器に向かって放たれた横殴りの雨のようなレーザーは次々と着弾し、
 その装甲に大、小、様々な穴を開けていく。
 被弾した古代兵器はその速度を若干落とすが、動きを止めるまでには至らない。

 オリュンポス・パレスは攻撃の手を緩めずに、徐々に前進し古代兵器との距離を詰めていった。


 〜テメレーア内・戦闘指揮エリア


 ローザマリアの元に和輝から、ハデスが攻撃が開始したとの報せが届く。

「ホークアイから報告……どうやら、ハデスが攻撃を開始したみたいだわ」
「ふむ、定刻よりも早いな。まあ……協力してくれただけ良しとしよう。俺達も攻撃を開始するぞ。
 砲撃の合間にイコン部隊を出撃させる、準備をしておけ」
「了解、総員第一種戦闘配置、繰り返す、総員第一種戦闘配置」

 ネルソンの指揮の元、テメレーアは古代兵器の真正面から進行する。
 古代兵器はオリュンポス・パレスの攻撃を受け続けているが、特に反撃する様子はない。

 その様子を見たローザマリアは言い知れぬ不気味さを感じていた。

「……これだけの攻撃を受けているのに反撃が一切ないなんて……何か狙いがあるというの……?」

 ローザマリアにネルソンが落ち着いた口調で声をかける。

「確かに反応がないのは不気味かもしれんが、恐れていては何もできない。向こうが攻撃を開始する前に、
 一気に畳掛けてしまえばいい。確実に武装を一つずつ潰していくぞ」

 テメレーアは古代兵器から一定の距離を取った場所に位置すると、ネルソンの指揮によってその機体側面を
 古代兵器に向けた。
 装備された全砲門が古代兵器を照準に捉え、ネルソンの一声を待つ。

「全砲門、古代兵器を捕捉」
「よし、弾種、徹甲。オープンファイアリングッ!」

 ネルソンの一声でテメレーアの全砲門が一斉に火を吹いた。
 時間差で発射される要塞砲の砲火は古代兵器に次々と着弾し、搭載されている武装を破壊、
 火の手を上がらせる。

 しかし、古代兵器は一切の反撃を行ってくる様子はない。

「イコン部隊、第一陣、出撃開始! 砲火に巻き込まれないように留意せよ、と伝えておいてくれ」
「了解、イコン部隊第一陣出撃、繰り返す、イコン部隊第一陣出撃」


 〜テメレーア内・格納庫エリア


 IRR-SFIDA_F【スフィーダ飛行形態】陣風の通信機からローザマリアの出撃の声が聞こえる。

「佐野さんとのデータリンク完了しました。敵古代兵器の位置と、味方の位置を常時味方に送りますね」

 ミコの剣の花嫁高嶋 梓(たかしま・あずさ)は、前部座席に座っているテクノクラート湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)に声を掛ける。

「ああ、頼む。さーて、アレを止めに行きますか……」

 出撃の最終チェックをしながら、湊川は各小隊機にあらかじめ決めておいたTACネームで呼びかけた。
 なお、TACネームは正式な呼称ではなく、小隊内でのみ使用される呼称である。

「此方ウォードッグ4ストライカー、クリンカ、スコール、リュミエール、準備はいいな?」
「此方ウォードッグ2クリンカ、いつでも行けるわよ」
「佐野さんとのデータリンク、此方も完了しています。発進問題ありません」

 まず呼びかけに答えたのは、IRR-SFIDA_F【スフィーダ飛行形態】ファスキナートルを駆る
 ナイト富永 佐那(とみなが・さな)とウィザードの英霊エレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)であった。

「ウォードック3スコール、いつでも行けるぜ」
「機体の状態、兵装共に問題ありません。発進可能です」

 次に答えたのはPHOENIX_F【フィーニクス飛行形態】ラーズグリーズを駆る
 スカイレイダー柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)とブレイブの機晶姫エグゼリカ・メレティ(えぐぜりか・めれてぃ)

「ウォードッグ1リュミエール、も、問題ありません」
「はっはっはっは、おまはんは硬くなり過ぎぜよ! もっと肩の力を抜かんと」

 最後に答えたのは、CHP008【プラヴァー(デフォルト)】オプスキュリテを駆る
 ソルジャーのフィサリス・アルケケンジ(ふぃさりす・あるけけんじ)とナイトの英霊高杉 晋作(たかすぎ・しんさく)
 高杉は豪快に笑い、フィサリスの肩をばんばんと叩く。

「だ、大丈夫……。晋作もいてくれるし、平気だよ」
「嬉しいことを言ってくれるぜよ。よし、俺達が一番最初に行かねば。では、行くぜよ!」

 オプスキュリテがカタパルトに乗り、勢いよく射出される。
 それに続くようにファスキナートルが射出され、オプスキュリテのやや後方に位置する。
 佐那がフィサリスに通信で呼びかけた。

「リュミエール、あなた達はイコン戦は初めてみたいだけども、ちゃんとフォローするから安心して」
「う、うん……フィサリスにできる事を精一杯頑張るよ」 
「そうそう、その意気その意気」


 〜古代兵器付近・上空〜


 オプスキュリテ、ファスナキートルの2機は大きく旋回し、古代兵器を真正面に捉えると、兵装の発射準備に入る。
 オプスキュリテは銃剣付きビームアサルトライフルを構え、艦首から艦尾に向かって抜けながら掃射する。
 放たれたビームは対空火器を次々と破壊していった。

「へぇ……やるねぇー、これはこっちも負けてられないね」
「敵兵装のマルチロック、既に完了していますわ」
「よし、全兵装解放! 一斉射開始ーッ!!」

 オプスキュリテに続き、ファスナキートルがミサイルポッドとレーザーライフルの雨を撃ち込んでいく。
 容赦なく撃ち込まれた攻撃は対空火器だけでなく、甲板や装甲までズタズタに破壊する。
 破壊された各部位に小規模の爆発が起こり、黒煙を上げた。

「リュミエールとクリンカが思いの他片づけてくれたな。よし、俺達で仕上げと行こうか!」
「此方ウォードッグ3、スコール了解。反撃なんて一切させてやるかよ」

 2機の後方に位置していた陣風とラーズグリーズが攻撃を開始する。
 ラーズグリーズのウィッチクラフトキャノンとミサイルポッドの攻撃が古代兵器の甲板に降り注いだ。
 着弾の爆発を見るよりも先にショルダーキャノンが撃ち込まれ、大きな穴を次々と開けていった。

「まだまだぁぁーー! 変形で一気に畳掛けるぞ!」

 エグゼリカは恭也の意図を理解し、出力の調整を開始する。
 モニター上で機体各部の出力が人型形態に最適化されていく。
 兵装はツインレーザーライフルを用意。
 変形の直後に両手に配置されるように機体との連結をベストのタイミングで解除した。

 飛行形態から人型へと変形したラーズグリーズは高度を徐々に下げつつ空中でツインレーザーライフルを握ると
 回転しながら古代兵器側面の対空火器を破壊し、再び飛行形態へ変形。全速で艦尾方向へ抜けていく。

「それなら、俺は大物を狙わせてもらおうか」
「砲台の攻撃ポイントを割り出しました。そちらに送りますね」

 梓から指定されたポイントに狙いを定め、湊川は陣風の大型ビームキャノンとスフィーダレーザーを撃ち込んでいく。
 攻撃の着弾した砲台は、次々と火を噴いて爆砕していく。
 ラーズグリーズから遅れる事無く、陣風も全速で艦尾方向へ抜けていった。

「よし、ここまでやれば後は……」

 機体を右旋回させようとする湊川に梓が叫ぶ。

「敵、古代兵器の砲撃、来ます!! 反対方向へ旋回を!!」
「何だとッ!? クリンカ、スコール、リュミエール、各機全速で離脱しろ!」

 湊川の通信を受け、編隊を組んでいた4機は散開。それぞれ古代兵器の砲撃に対し、回避運動を取った。
 古代兵器の後部から休むことなく砲弾が発射され、4機を襲った。

「リュミエール! それでは高度が低すぎるッ!!」
「え……?」

 1機だけ高度の低かったリュミエールに砲弾が迫った。
 古代兵器後部から砲撃された砲弾はオプスキュリテの右腕を吹き飛ばす。

「きゃああああああーー!」
「これしきの事でぇ……!! ぬうううう! 体勢を回復するぜよ!」

 衝撃で大きく吹き飛び高度を下げるオプスキュリテであったが、晋作の素早い対応もあり、
 なんとか体勢を回復する。

「此方、ウォードッグ2クリンカ! リュミエール、大丈夫なの!?」
「こ、此方……ウォードッグ1リュミエール。な、なんとか……大丈夫」

 佐那は困惑の表情を浮かべた。
(さっきの攻撃で、ほぼすべての武装は破壊したはず……まだ武装を隠していたとでもいうの?)
 エレナが佐那に落ち着いた口調で、

「先程の破壊した兵装部位と現在の兵装部位を佐野さんから送られた情報を元に解析してみたんですが……」
「何か分かったの……?」
「ええ、信じられないかもしれませんが、先程破壊した部位が全て修復され、さらに強力な物に変化している
 ようなのです」
「え……修復だけじゃなくて、進化してるって事!?」
「はい、そのように捉えてもらっていいかと思います」

 通信を聞いていた湊川が落ち着いた口調で言う。

「修復してしまうならば、それ以上のダメージを与えればいい。編隊を組み直し、再度攻撃を掛けるぞ!
 クリンカはリュミエールのフォローを頼む」
「ウォードッグ2クリンカ、了解」

 4機は編隊を組み直し、古代兵器へ再度の攻撃へ向かった。


 〜古代兵器・艦尾付近〜


「修復、進化する古代の兵器……相手にとって不足はない!」

 IRR-S01W【S−01】翔龍の操縦席で闘志を燃やしているのは、
 ブレイブのエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)

「なんか、すごく燃えてるね! こっちまで熱く燃えてくるよ!
 よーし、前以外はボクが見るから、エヴァルトは思いっきり古代兵器をやっつけちゃってよ!」
「おう! 任せておけッ!!」

 一緒に闘志を燃やそうとしているのは、フェイタルリーパーの機晶姫ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)
 実際彼女が燃やすのはいつも闘志ではなく、エヴァルトの財政なのだが。

 翔龍は古代兵器の砲撃を回避しつつ後部推進器へと迫った。
 レーザーライフルを構え、推進器目掛けて発射するが、穴を開けるそばから修復してしまう。

「なんだか回復速度の方が早いみたいだよ!」
「くっ、ならば、接近戦に持ち込む!」

 レーザーライフルを投げ捨てると、翔龍は地面を蹴って高く跳躍する。
 推進器に向かって全体重を乗せた重いパンチを打ち込んだ。
 翔龍の拳は推進器の装甲をぶち破り、推進器に爆発を起こす。
 誘爆の炎に包まれる翔龍。

 直後、突入部隊苦戦の報告が入る。
 しかし、翔龍が離脱する気配はない。

「エヴァルト! どうして離脱しないの!? ボク達まで爆発でやられちゃうよ!
 早く、離脱して突入部隊の援護に……」
「ロートラウト、勇者には退いてはならない場面がある! それが今、この時だッ!!
 ここで退いたら、また損傷は修復し、古代戦艦の足を止めることはできないだろう……
 そうなれば、突入は難しくなる、しかし!」

 エヴァルトは自分の前のモニターをしっかりと見つめる。

「俺達が攻撃し続ける事ができれば、推進器の修復は防げる! 突入部隊が突入するまで、俺達が
 退いちゃいけないんだッ!」
「エヴァルト……わかったよ、ボクもエネルギーとダメージコントロールを頑張ってみる!」

 翔龍は続けてパンチを叩き込んでいく。絶え間なく続く推進器の爆発で徐々に翔龍の装甲はダメージを受けていった。
 肩の装甲が吹き飛び、右脚部にはヒビが入っていく。

「古代兵器! 俺達はぁッ! お前なんかにッ! 負けはしないんだァァァアアアアッッ!!」

 エヴァルトの決死の攻撃のおかげで、古代兵器は地上へと落ちる。
 砂煙と土を巻き上げながら地上を滑り、丘に艦首を激突させてその動きを止めた。

 しかし、対空砲火はより一層激しくなり、移動が止まったとはいえ突入は困難を極めた。


 〜古代兵器・艦首付近〜


「これがけ砲火が激しくては、突入部隊が突入できませんね。こちらで注意を引き付けてみましょう」

 CHP009【ジェファルコン】アイオーンを駆るのは、
 スナイパーシフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)とトランスヒューマンの
 強化人間ミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)

 ミネシアが嬉しそうに話し始める。

「対艦戦なんて滅多にないからね、できるだけ派手に行こうよー。そうだ!
 最初からバスターレールガンとか撃ち込もうよ!」
「多少のダメージは回復してしまいますからね、その手が有効かもしれません」

 アイオーンは高度を高く上昇させると、古代兵器の上空に位置する。

「降下しながら、攻撃を開始します。ミネシア、攻撃ポイントの指定をお願いしますね」

 ミネシアは張り切ったような表情で、

「はーい! 攻撃ポイントの割り出しは済んでるから、順次表示していくね」

 アイオーンは古代兵器目掛けて高速で降下しながら、バスターレールガンを発射する。

 正確無比なその射撃は、古代兵器の主砲を何度も撃ち抜き、爆発させるが……その度に修復され、大きな効果はない。
 古代兵器の対空砲火がアイオーンに集中し始めると、シフは回避行動重視へとその動きを変化させる。
 
 砲火の間をすり抜け、回避運動の合間に銃剣付きビームアサルトライフルを掃射する。
 ビームは古代兵器の副砲に命中し、火を噴かせるが……やはり次の瞬間には修復されてしまっていた。

 既に副砲とは言えないほどの強力な砲火を回避しながら、シフは呟く。

「やはり、破壊するたびに進化しているってことでしょうか……」

 ミネシアが何かに気づき、シフに報告する。

「なんかね、進化だけじゃないみたいだよ? えーとね、なんだかこっちの攻撃を受けて学習してるみたい」
「学習……攻撃すればするほどこちらが不利になる……しかし、攻撃しなければ突入部隊が突入する隙が
 作れない……最悪の悪循環ですね」

 現に、シフは回避重視から既に回避のみにその行動を変えていた。

「さすがに……あまり長くは持ちそうにありませんね……」