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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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【第二話】激闘! ツァンダ上空

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『待たせたな!』
 蒼空学園の通信帯域へと新たに入ってきた通信音声は若い女の声だった。その通信の発信源にして、たった今、プラズマライフルを撃ち抜いたレーザー光の出所はスフィーダのカスタム機と思しき一機のイコンだ。
『シャンバラ教導団所属、朝霧 垂(あさぎり・しづり)ならびに夜霧 朔(よぎり・さく)竜戦士≪光龍≫でこれより援護に入るぜ!』
 入電と同時にアストレアのコクピットのモニターの右下に四角いウィンドウが立ち上がり垂の画像が映し出される。ウィンドウの中の垂は快活そうに笑うと、再び口を開いた。
『大丈夫か、ハーティオン?』
 すると今度は左下にやはり四角いウィンドウが表出し、中にハーティオンの画像が表示される。ウィンドウの中のハーティオンは心底感動した様子で垂へと語りかけた。
『ああ! 感謝する――垂、君ならきっと来てくれると……信じていた!』
 ハーティオンの反応が予想以上だったのか、垂はくすぐったそうに照れ笑いすると、やはり恥ずかしそうに言う。
『ま! ハーティオンには前回の借りがあるからな! 何はともあれ、無事に借りを返せてよかったぜ!』
 通信越しに垂が会話するのと並行して、光龍は一気に距離を詰めて接近し、蒼空学園の部隊と合流を果たす。ハーティオンの隣に停止した光龍はホバリングしながら空いた手でハーティオンの肩を軽く叩いた。
『元気そうでなにより! よし! それじゃあとっとと連中をブッ倒そうぜ!』
 威勢良く言い放ち、左右それぞれの手にレーザーライフルを一挺ずつ構える光龍。声だけでなく、その立ち居振る舞い一つ一つにも威勢の良さが感じられる。
『……ん? この空域に別方向から接近してくる機体が三機? 俺ら教導団と天学以外なんだろうが……一体誰だ?』
 機体システムが告げた接近機体の存在に対し、思わず困惑気味に呟く垂。直後、あたかもその疑問に答えるかのように共通の通信帯域に若い男たちの声が響き渡る。
『何とか間に合いましたね――ヘル』
『ああ。にしてもまさか敵が全部前回戦ったアイツとはな……タチの悪い冗談だな……一機であんだけ苦戦させられたアイツが五機同時だなんて』
『確か二人は既にあの機体と交戦経験があるんだったな』
『ええ。ですから敵機の性能も身を以て知っています。たとえ今の自分たちのように、高高度から戦闘区域へ侵入しているとはいえ、油断は禁物です。あの機体ならばこれぐらいの高度、どうということはないでしょうから』
『だな。まぁ今更しょうがねえしやれるだけやってやるぜ。しかしあの機体を操れるパイロットがそうそういるとも思えねえがな……』
『そうした疑問を解決する為に俺とアニス、そしてブラックバードがいるんだ。俺達はデータ収集という俺達の役目を果たす――それだけだ』
『了解です。自分たちはアルマイン・ハーミットで戦闘部隊に合流します。佐野さんたちもお気をつけて。清泉さんも戦闘部隊に合流する予定で?』
『もちろん。かなりの強敵なら、味方の数は多い方がいいでしょ。二世代機すらない機体でどこまで戦えるか。少なくともデコイにはなれるし、タダでやられるつもりは無いよ』
『教導団、蒼空学園…ここが襲われたのは偶然でしょうか? 次はまた別の学校が襲われるのでしょうか。そうならない為にも、ここで落としておきたい所です。テストや実験のようだと思うのは私だけでしょうか』
 そこで会話が終わるととともに二機のイコンがツァンダ上空へと現れる。一機は人型の昆虫のようなデザインをしたイルミンスール製のイコン――アルマイン・ハーミット。ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)強盗 ヘル(ごうとう・へる)の愛機である。もう一機は戦闘機を思わせる黒い機体――ブラックバード。こちらは空京大学の佐野 和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)の愛機だ。そして三機目は騎士のようなフォルムを持つ紫色の機体――アシュラム。この機体は薔薇の学舎から来た清泉 北都(いずみ・ほくと)クナイ・アヤシ(くない・あやし)の愛機だ。
 三機が姿を現した直後、早速ブラックバードから友軍の共通帯域へと通信が入る。
『こちらは空京大学の佐野和輝だ。これより蒼空学園を援護しつつ偵察行動を開始する。それに伴い、既に区域内で行動中の部隊へ相互リンクを要請する。俺の機体は情報戦に特化している。餅は餅屋だ管制と観測は任せてくれ』
 自身で集めた情報と現場の情報を統括して、後方部隊へと転送し解析を依頼し、そして、纏められた情報を受け取った後は、実働部隊へ必要な情報を配布していく管制機としての行動を偵察行動と合わせて行う――それが和輝の目的だ。また、後方からの艦砲射撃等の支援砲撃に対する観測機としても行動も彼の作戦には含まれている。
『イルミンスールのザカコ・グーメルです。情報収集は佐野さんに任せるとして、自分とヘルは皆さんの戦列に加わります――行きますよ、ハーミット!』
『薔薇学の清泉北都だよ。僕たちもイルミンスールの虫メカと一緒にみんなの援護にまわろう』
 ブラックバードに続いて移動したアルマイン・ハーミットとアシュラムはハーティオンと光龍の隣に並び、四機での陣形を形成する。
 新たな味方に感謝しつつも、ハーティオンは重々しく語りかけた。
『了解だ。だが気を付けろ、奴等は前回私たちが戦ったタイプとは違う――あの機動力の前には攻撃を当てることはおろか、姿を捉え続けることすら難しい……先程、私を救ってくれた時のような手も二度は通じないだろう。それにザカコの機体がいかにスピードに優れているとはいえ、やはり五機もの数が相手では……』
 先程から意気軒昂な垂とは対照的に重々しく告げるハーティオン。だがそれでも、垂の威勢は微塵も衰えなかった。むしろ更に増したとすら感じられる威勢の良さで垂は言い切る。
『問題ねぇって! なにせこっちには――おっと、噂をすればなんとやらだ。来たみたいだぜ』
 小さな含み笑いとともに垂が言うと同時、蒼空学園の機体のコクピットで一斉にアラートが鳴り響く。