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渚の女王、雪女郎ちゃん

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渚の女王、雪女郎ちゃん
渚の女王、雪女郎ちゃん 渚の女王、雪女郎ちゃん

リアクション

 ビーチバレーのコートには観客が集まり始めていた。

「しかし、君たちまで参加してくれるとは……ありがたいよ」

「なーに、俺も個人的に参加したかっただけさ。それにいつまでもここを雪原にされてるのはたまんねぇからな」

 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が長い銀髪をきゅっと結んで無限に笑いかける。

「勝ち抜きトーナメント制だし、人手は大いに越したことはないんだが……」

 ちらりと向こうを見れば屈強な男たちが勢ぞろいしていた。
 こちらに気付いたらしく無限をみてふっと鼻で笑う。

 参加チームは全部で五組。
 無限チーム、エヴァルトチーム、そして親衛隊チームが二つに隊長と雪女郎のシードチームだ。

「隊長たちはシードだし決勝戦まで当たらない。もし順調に勝ち進んでも俺たちのどちらかはやつとは戦えない。でも俺たちは必ず勝たなきゃいけないんだ」

 がしりと腕を組み合う無限とエヴァルト。
 今まさに海を雪女郎から解放するという真夏の命運をかけたゲームが始まろうとしていた。

「ボクは〜寒さを感じない〜だだっだー♪ ロボットだから〜マシンだから〜だだっだー♪」

 ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)がふんふんと鼻歌を歌いながら廿日 千結(はつか・ちゆ)とともに準備体操をしていた。

「ロートラウトちゃん、ビーチバレーして大丈夫なの?」

 ふと気になったので千結は尋ねた。機晶姫であるロートラウトが海にいるというのも珍しいのだが、さらに砂浜でビーチバレーなんて大丈夫なんだろうかと。

「別に海にボディごと浸かりにきたわけじゃないしね〜。それに千結ちゃんとこと同じで何とか浜辺を元通りにしたいって思うし。だったら手伝わなくちゃって思って」

「そうだね、頑張りますか!」

 終わったら海の家行こうよ、なんて話をしながら準備をする二人を遠巻きに見ていた親衛隊の下っ端たちは、ピリピリした空気の中に少しの安らぎ空間を見出していた。


「あっついわねー」

 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)がストローを噛みながらあっという間に氷の溶けてぬるくなり始めたジュースを飲みながら言った。
 何やら浜辺の命運をかけた大勝負だという噂を聞いた夏侯 淵(かこう・えん)に引っ張られ、コートのすぐ側に陣取りビーチバレーを観戦していた。
 両者ポイントを譲らずに白熱している試合だが、こう暑くては試合に集中できない。

「そうだ! すぐ雪が溶けちゃって足りないと思うし、空からブリザードでもまいてこようかなあ」

 立ち上がろうとしたところを隣から腕をぐいと掴まれて制止させられる。

「今は真剣勝負中だ。邪魔をしてはいかん」

 う〜、と大人しくルカルカが視線をコートに戻そうとした瞬間、勢い良く打たれたスパイクがルカルカの隣にいた親衛隊を打ち抜いた。
 ビーチバレーというものがこんなにスピードの出るものだったものだろうかとボールを見れば、うっすらと氷でコーティングされている。
 倒れた男を見やれば顔面にぶつかった箇所が赤い丸を描いていた。

「そこの人、ごめんなさーい!」

 雪女郎がわたわたと両手を動かしてコートの中から謝っている。
 慌ててこっちに駆け寄ろうとしてうっすら積もった雪に足を取られてぺしょりと転んだ。

「……これはアリなの?」

 命のうねりを使って倒れた男に回復をかけながらルカルカは淵に怪訝な顔で尋ねる。

「向こうも最初から気付いている。それに男と男の勝負だ。こういうやるかやられるかの試合のほうが燃えるというものだ」

 どうにも腑に落ちないという顔のルカルカだが、それでも淵が目を輝かせて見ているので、しばらくは横で観戦することにした。