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求ム、告ゲラレシ天命ノ被験者

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求ム、告ゲラレシ天命ノ被験者

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12月生まれ:エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)のケース


『占いって、基本的にあまり信じていない。ふーん、そう、って感じ』


 朝、エースが大学に行く準備をしている横で、パートナーのクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)が何やら意気込んで騒いでいた。
「オイラに天啓が下りたのでいっす。オイラも大学に行って学食へ行くよっ」
 夏休みに入ってから、クマラを学校に連れていっていない。
 朝のテレビの占いコーナーに釘付けになっていたが、突然登校宣言したのと何か関係があるのだろうか。
 やけにテンション高く「つれてけ〜、つれてけ〜」と騒いでいるので、まぁ連れていくことにした。
 ついでに自分の占いを見ると、『あなた独自の表現で〜〜』などと出ていて、エースは苦笑した。
 ――自分の独自の表現と言えば……学校に行った時に女の子を見かけたら花一輪渡しつつ挨拶。奇をてらっているわけでも、過度の下心があるわけでもなく、 平常から女性を敬う気持ちから出てくる、自分としては 自然な行為のつもりだが、他の人間にはあまり見ないから独自表現ということになるのだろう。しかしそれはいつも通りのことで、その日の運など意識しなくても出てくる、なんという平常運転。
(まぁ、占いなんてそんなもんだろうな)
 と、ただ心の片隅に留め置くだけにして、クマラと出発した。


 午前中は空京大学の図書館で植物の資料をあさっているエースを待ちながら、クマラの頭には学食のことしかなかった。
 ――5月生まれのクマラの占いには、『今まで聞いたことのない名前を知ることで、大きな幸運が〜〜』とあった。
(だったら、知らないメニューの名前を見つけたら、美味しい料理との新たなる出会いがあるかも知れないじゃん!)
 学食で、今まで知らなかった美味しいものがきっと待っている。
 そう思うとうずうずして、もうそれしか考えられなかった。


 エースの用事が片付いて、ランチタイムとしても適当な時間になると、クマラはエースの先に立っていく勢いで学食に突撃した。
「『越前おろしそば』!? 見たことのないメニューにゃん! これっ!! オイラこれにするー」
「解ったから、そんなに大はしゃぎしちゃ駄目だぞ。他の人の迷惑も考えなさい」
 うんっ、と、語気だけはいいが明らかに意識は食べ物のことに占拠されているだろうと分かりすぎる返事を残し、クマラは売り場に飛んでいく。やれやれ、とため息をついてそれを見送ったエースだったが、知っている女子学生もちらほらいるのを見て、『平常運転』を開始する。
「可愛いお嬢さん、昼食御一緒できないかな?」
 そして花一輪。これがいつもの挨拶。顔見知りの子ならそんな彼の言動も分かっていて、皆で食べた方が楽しいから…などとワイワイしているうちに、
「いっただっきま〜〜〜す」
 かなり迅速に、越前おろしそばを載せたトレーと共に戻ってきたクマラがしっかり席についていた。目を輝かせて、大根おろしをのっけたお蕎麦をすすり込む。。
「(ずるっ、ずるっ)おっ、おおぉっ!!」
「……クマラ」
「さっぱりしててうまいにゃん!! 辛目の大根おろしがお蕎麦の味をより引き立てていて、ぶっかけの出汁つゆともよくあってるにゃん!!」
「……だから、他の人に迷惑をかけないように」


「うーまーいーのーにゃーっ!!!」


占い信じていい事があったのにゃ。信じる者は得をするのにゃん!!(ほくほく)』
(……特別な事は特に無かったという印象の一日。当たっている、とは言い難い。外れたという程の逸脱もないけれどね)


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●委員Cによるチェック●
 時々、開運行動それ自体が当人にとってラッキーである、というパターンがあるようだ。彼もそんな感じのように見受けられる。
 ……越前おろしそば……そんなに旨いのか……