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求ム、告ゲラレシ天命ノ被験者

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求ム、告ゲラレシ天命ノ被験者

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1月生まれ:冴弥 永夜(さえわたり・とおや)のケース


『検証か。ちょっと面白そうだな……』


 レポート作成のため、薔薇の学舎に登校した永夜だったが、なかなか捗らないまま時間だけが過ぎていた。
 折角、必要な資料を粗方揃えることはできたのに、進捗が芳しくない理由の一つは、新しくしたノートパソコンのせいだろう。この手の機械は、慣れるまで使い辛いものだ。すっかり馴染んでいた前のパソコンを懐かしく思いながら、鼻梁の天辺を挟むように指でつまんで圧す。長い時間パソコンと格闘すると目が疲れるし、背や肩も張ってくる。
 占いでは、新調したものが幸運を呼ぶようなことを書いてあったのだが……
「休憩、するかぁ……あ、ルカ姉。悪い。まだしばらくかかりそうで」
 バキバキの背を伸ばして大きく伸びをしたところに、パートナーのルカフォルク・ラフィンシュレ(るかふぉるく・らふぃんしゅれ)が入ってきて、永夜はややすまなそうに声をかける。今日はレポート作成に付き合わせてしまっているが、大して仕事もない上に時間ばかりがかかっていて、さぞ退屈させているだろう。
 だが、ルカフォルクは気にした様子もなく、うっすら微笑んで、手にした購買の物と思しき袋を掲げて永夜に示した。
「アイス、買ってきたわよ。休憩するなら食べない?」
 大好物の名を聞いて、疲れていた永夜の目が輝いた。

 ――実を言うと、ルカフォルクは退屈を持て余した末に、密かに動き出していたのである。
 掲示板にあった占い検証依頼の貼り紙を見て、退屈しのぎにと乗り出したのであった。4月生まれなので、自分につけるキャッチコピーは、

『こっそり依頼遂行!』

 永夜には内緒で、何事かやってやろうと思い立った。
 そして、1月の占いにある「冷たいものの食べ過ぎに要注意」に目を付けた。
(アイスをよく食べるアイツなら、確実に当たりそうじゃない!)
 そこで、期待に胸をふくらませ(?)、アイスを急遽30個も買いこんで、永夜のいる資料室に戻ったのだ。
 そんなパートナーの思惑には何も気づかず、永夜はうきうきと、差し出されたアイスに手を伸ばす――


「この味もなかなかいいな。うん、息抜きにはやっぱりアイスだな!」
「……いつも食べてるじゃない。息抜かない時でも」
「え? 何か言ったか?」
「いえ……キミ、今日幾つ食べたの?」
 ゆうに十はある、各種アイスの包み紙や紙ケースの山を目の前に、すっかり毒気の抜けた顔でルカフォルクが尋ねると、
「ん? ……家で食べた分と合わせると、今38個目? かな?」
「……お腹、何ともないの……?」
「コレぐらい平気だって」
 アイスですっかり気分がリフレッシュし、新しいパソコンへの不満も目の疲れも忘れた様子で、永夜はやりかけのレポートに手を伸ばす。
「食べながらやろうかな。今度は進みそうな気がする」
 だめだこりゃ。ルカフォルクは、気付かれないように溜息をついて視線を逸らした。
 新品パソコンで、実は運気が上がっていたのだろうか……
「アイス美味いなあぁ」


『……タダアイスもたらふく食べられて、今日は良い日だった』
(ワタシの結果は当たったり当たらなかったりね。無理に準えるものじゃないわ。)


**************

●委員Bによるチェック●
 いい日だったのは結構だが……38個!? 本当に腹を壊さなかったのか!?
 こいつ、胃の中に業務用冷凍庫があるんじゃねえの!?
 「冷たいものの食べ過ぎに注意」の文言が惨敗している感がぷんぷんだが……いや、まぁ、いいか……いいのか……?