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【ぷりかる】出会いこそが願い?

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【ぷりかる】出会いこそが願い?

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 石専門店『ストッツ』、売り場。
 キーアが救い出される少し前。

「……二人共、まだかなぁ」
 ホシカは不安そうにドアを見たり壁に掛かる時計を見たりと落ち着きがない。
「……全ての人の願いを叶える石を作れば世の中平和になる、か。どうして彼はそう考えたんでしょうか」
 ホシカの様子を見に来た涼介は気が紛れたらと彼女に話しかけた。
「……分からない」
 ホシカは首を振った。そんな深くまでは話した事は無い。そんな話をする前に口論となって会話が終わってしまうから。それにそれほど親しくは無いので。
「……私は説明の時にも話したけど、そんな石、人の手で作るにはあまりにも手に余ると思うし、願いって叶えて貰うよりも自分で叶える方がいいでしょ」
 ホシカは涼介に答えた。ほんの少しだけ今の不安から気を逸らして、
「……確かに。私も願いのために如何に努力をしたかの方が人として成長出来ると思います。願いは十人十色、争いを望む者もいるはず。その者の願いが叶ったら平和とは程遠くなりますよね。極論ですけど」
 涼介も同意し、なるべく長く話して、ホシカの注意を不安から引き離す。
「私もそう考えてる……」
 涼介に答えながらホシカはまた時計を見たり入り口を見たりし始めた。話が終わればまた行方不明の二人の事が気になって仕方が無いのだ。

 そこで
「大丈夫だよ。みんながきっと見つけてくれるから。そうやって時計を見てるから嫌な想像するんだよ」
 ルカルカが何とかホシカの不安を取り除こうと明るい調子で話しかけた。
「……みんなが頼りになるのは分かるけど」
 ルカルカの言うように来てくれたみんなが頼りになる事は分かるが、目の前に二人がいない限り安心は出来ない。
「そうだ! 二人共帰って来たらお腹空いてるはずだから何か作ろうよ!」
 ルカルカはさらに明るい声で提案。何かしていた方が心が潰れずに済むだろうというルカルカの気遣いである。
「何かって」
 ホシカはルカルカの唐突の提案に戸惑っていた。
「キーアの好物は知ってる?」
 ルカルカは続けてキーアの好物を聞く。
「……好物かぁ。キーアちゃん、嫌いな物が無くて何でも食べるんだよね」
 ホシカはキーアの好物を思い浮かべている。その顔に不安は無かった。
 それを見たルカルカは
「じゃ、たくさんおいしい物作ろう」
 さらに言葉を重ねる。
「……そうね」
 ホシカは、ルカルカの明るい調子と流れから断れず、一緒に作る事に。

 ルカルカとホシカがシチューとサラダやカップケーキを作っている間、店内の石処理組はしっかりと仕事をしていた。

 作業室。

「……最期に作られた石は失敗した物よりもずっと完成度が高いね」
 作業の手を止めた涼介は、唯一写真が載っていない資料を見ていた。『博識』と『薬学』でどれだけ最後の石の完成度が高いか分かる。
「……それは成功したという事でしょうか」
 涼介の言葉が気になったミリィが訊ねた。
「……それは分からない。この資料上の事だから」
 涼介は頭を左右に振った。完成度が高いからと言って職人の求めた石が出来上がっているとは限らない。
「……確か、消えた石と同じ素材が使われていましたよね。もしかしたら盗まれている事も」
 ミリィは石の完成度よりも重要な事を口にした。嫌な予感に不安な顔をしていた。
「もし完成していたらすごいけど、盗まれてしまったら大変な事になるね」
 近くで話を聞いていた真菜華が言葉を挟む。
「そうだね。この石を発見したという連絡は入っていないから余計に気になるよ」
 涼介は真菜華の言葉にうなずいた。未だに処理完了の連絡が入らないので気になって仕方が無い。
 とりあえず、三人は自分の仕事に戻った。

 小さな調理室。

 ルカルカとホシカは、キーアとグィネヴィアのために食事を作っていた。
「これだけ作ったら二人共、喜ぶね」
 ルカルカは料理をしながら絶えずホシカに話しかけていた。
「……そうね。ありがとう」
 ホシカは気遣ってくれるルカルカに礼を言った。
「……いいよ。心配なのはルカも分かるから」
 ルカルカは笑顔で答えた。
 二人は何とかキーアとグィネヴィアの空腹を満たす料理を作り終えた。
 それから作業室に様子を見に行った。

 作業室。

「終わったよ」
 料理を終えたルカルカがホシカと一緒に来た。隣にいるホシカはほんの少し元気な顔をしていた。

 石処理組が何か言う前に突然、
「あっ」
 連絡が入ったのだ。ルカルカは急いで確認した。その表情は真剣なものから安心と喜びに変化した。
「二人が見つかったのかも」
 真菜華がルカルカの表情から吉報だろうと判断。
 そしてその判断は正しかった。
「キーアが見つかったよ。グィネヴィアはまだだけど、すぐに見つかるよ」
 話を終えたルカルカが本当に嬉しそうに言った。

「良かった。あとはグィネヴィアちゃんだけね」
 ホシカはほんの少しだけほっとしていた。本当に安心できるのは二人が戻って来てから。
「……良かったですね」
「怪我もしていないみたいで安心したよ」
 ミリィも涼介も一休みを忘れてキーアの無事を喜んでいた。
 そして、一休みを終えるなり、みんなそれぞれ作業に戻り、それが終わるとひたすらキーアが戻って来るのを待っていた。

 キーア無事の連絡を受けて少し時間経過。

「……まだかな」
 ホシカは苛々と時計を見たり入り口を見たりとせわしなくうろうろしていた。
「……もう少しだよ」
 ルカルカはそう言いながらもちらりとドアの方を見ていた。

「そうですわ。ここで少し一休みして何か飲みませんか? 処理も終わった事ですし」
 ホシカの様子を見に来たミリィが気が紛れたらと声をかけに来たのだ。

「それいいね! ルカはチョコレート」
「真菜華は猫舌だから冷たい物がいいんだけど」
 ルカルカと真菜華が次々とリクエスト。

「ミリィに任せるよ」
「……私は何でもいい」
 涼介とホシカはミリィに任せた。

「……出来ましたよ」
 『調理』と『医学』を持つミリィはすぐに美味しくて癒す飲み物を作って戻って来た。お任せの涼介には疲れが吹っ飛ぶ物をホシカには心が安らかになる物を用意した。
 五人は少しだけ一休みをした。

 一休みを終えてしばらく後、店のドアが開き、
「おばちゃん、ただいま!!」
 元気な声が入って来た。
「キーアちゃん!」
 ホシカはキーアの姿を見て本当に無事だと確認し、駆け寄った。

 やって来たホシカに
「おばちゃん、お母さんには内緒にしてくれる?」
 キーアは口の前に人差し指を立てながら言った。
「それはだめ。私も一緒に怒られてあげるから。それより何か食べる?」
 ホシカは、キーアの人差し指を握り、笑顔で言った。ホシカも監督不行届で姉に怒られる事だろう。それでも良い、可愛い姪が無事だったのだから。
「……お姉ちゃんが戻って来てから一緒に食べる」
 キーアはグィネヴィアが大変な目に遭っているのに自分だけ楽しい思いは出来ないと思っていた。
「そう。だったらみんなと待ってようか」
 キーアが無事で戻って来た事によってグィネヴィアもきっと無事だと、みんなが助けてくれると完全に信じるようになっていた。
「うん。あっ」
 キーアはうなずくと入って来た人達に気付き、笑顔になった。

「無事に戻ったんだね」
「再会出来たみたいで安心ですわ」
 とさゆみとアデリーヌ。

「……よ、良かったです」
「あとはグィネヴィアだけだね」
 リースとマーガレット。

「これで少しだけ安心ね〜」
「そうだな」
 セリーナとナディム。

「本当にありがとう!」
 ホシカは入って来た人達に礼を言った。

「石の方はどう?」
 北都はキーアとホシカの再会を見守った後、涼介に聞いた。
「店内の石は全て処理したよ」
 涼介は笑顔で答えた。いろいろ調べたりしたが、細心の注意を払えば、処理はそんなに大変なものではなかったようだ。
「お疲れ様です」
 ミリィは二人を労った。
「そっちもな」
 白銀も石処理の二人を労った。
「よかったよかった」
 真菜華は嬉しそうにキーアとホシカを眺めていた。