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囚われし調査隊、オベリスクの魔殻

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囚われし調査隊、オベリスクの魔殻

リアクション



序章 「孤軍奮闘」


 〜遺跡内部・小部屋〜


「くそッ! どれだけ湧いてくるんだ、このモンスター共!!」

 身を岩陰に隠しながら調査隊の男性隊員が襲いくるモンスターに、小銃を連射する。
 発射された弾丸はモンスターに命中し、数体の息の根を止めるが小部屋の入り口からは
 それ以上のモンスターが侵入してくる。

 別の岩陰から調査隊の女性隊員が襲いくるモンスターを的確に狙撃し、その進行を止める。

「そっちの弾薬は!?」
「……そろそろ無くなる! 替えはない!」
「そう、長くは持ちそうにな……ッ!!」

 モンスターの一体が女性隊員に迫る。
 男性隊員は小銃をモンスターに向け、引き金を引くが弾は出ない。
 小銃を捨て、男性隊員は女性隊員の元へと走る。

 反応が遅れ、身構える事ができない女性隊員にモンスターの爪が振り下ろされる。
 間一髪のところで男性隊員が抜き放った剣が振り下ろされた腕ごと切断する。
 モンスターは咆哮と共に後ずさり、体勢を崩す。
 男性隊員は隙を見逃さず、モンスターの頭部に剣を突き立てモンスターの生命活動を止めた。

 剣をモンスターから抜きながら、

「お前は下がっていろ! 脱出の突破口は俺がッ!」

 男性隊員は入口に向かって走り、回転するように剣を振ると多くのモンスターを切断した。
 
 殺気を感じ、反射的に剣を振ると壁にでも叩きつけたかのような衝撃が手に伝わった。

「なっ!? ゴーレムッ!」

 石で出来たその巨体は、大きく腕を振り被ると男性隊員を殴り飛ばす。

「があぁぁあああーーッ!!」

 まともな防御姿勢も取れないままに、男性隊員は壁に叩きつけられた。

「ぐ……あ……」

 身体を動かそうにも、意思に反して身体は動かない。
 徐々にゴーレムが女性隊員に迫っていくのが見える。

「ああ……あ……」

 ゴーレムの振り上げられた腕。女性隊員は恐怖のあまり、身動きができなくなっていた。

 しかし、ゴーレムの腕は振り下ろされない。正しくは振り下ろすことができなかった。
 接合部に何かが挟まり、うまく稼働出来ないようであった。

「もう大丈夫。後は任せて」

 清泉 北都(いずみ・ほくと)はゴーレムの行動を予測し、その動きを徐々に止めていく。

「どんなに硬い外装をしていても、接合部って……弱いものだよね」

 鈍った動きで北斗を追うゴーレムの腕や拳を軽く躱すと、サイドワインダーを接合部に放つ。
 接合部に挟まった異物により、ゴーレムの動きは更に制限されていった。

「そろそろ、終わりにしよう。救助者もいるしね」

 宮殿用飛行翼を広げると、ゴーレムとの距離を一気に詰める北斗。
 接合部を狙い、ティアマトの鱗でゴーレムをバラバラに解体。ゴーレムはその全機能を停止した。

「……ふう。外装が硬いって結構困るよね」

 北都は女性隊員に手を伸ばし、助け起こす。

「あ、ありがとうございます……」
「当然のことをしたまでだよ、だって僕らは
 あなた達調査隊の人を救出に来たんだからね」
「あの……あの人は!」

 女性隊員が気にした方向には、男性隊員がいた。

「大丈夫、今治療を受けてもらってるよ。
 少ししたら動けるようになるんじゃないかな」

 女性隊員は安心したように表情が柔らかくなる。

 ソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)は男性隊員を命のうねりで回復しながら話しかける。
 男性隊員にかざしている手が発光し、その傷を癒していく。

「もう少しで治療が終わる。ゴーレム相手に剣一本で向かうなんて、無茶しやがるなぁ」
「……弾薬も切れ、剣しかなかった。あんたらがこなかったら、どうなっていたか……」

 気を落とす男性隊員。ソーマは治療しながら、言葉を続ける。

「確かにゴーレムには負けたが、他のモンスターから彼女を守ったのはお前だ」
「……しかし、この様では……」

 男性隊員から見えない方の手を握りしめ、ソーマは話を続けた。

「いいか、結果がどうであれ、お前は彼女を守った。確かにゴーレムには負けたが、
 お前も彼女も生きてるんだ。なら、次は不測の事態に対応できるようにすればいいんだよ」

 俯いていた顔を上げ、男性隊員は言う。

「そう、だな……」
「……ったく! 誰かに言われなくても、このぐらい自分で気づけ」


 〜遺跡内部・小部屋前〜


「北斗達は!?」

 襲いくるモンスターをM203グレネ−ドランチャーで吹き飛ばしながら、
 大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)ソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)に声をかける。

「今、中に入りましたわ! 出て来るまで持ちこたえませんと!」

 ソフィアは剛太郎が撃ち漏らした敵を大剣の一撃で両断していく。
 二人の見事な連携により、北斗達が小部屋に入ってから、襲いくる敵の小部屋への侵入を許していない。

「よし! 北斗達が出て来るまでここを死守するぞッ!!」

 剛太郎は岩陰から少し身を乗り出し、89式小銃を連射する。
 モンスターは力なく崩れ落ち、ただの肉塊へと変わっていく。

 89式小銃をリロードしている間はソフィアが大剣で薙ぎ払い、モンスターの接近を許さない。
 剛太郎の合図でソフィアが退き、M203グレネ−ドランチャーが発射される。

 密集したモンスターに向かって発射された擲弾は着弾と共に爆炎を巻き起こし、
 多くのモンスターを炎に包みこんだ。

 火だるまになったモンスターはもがくように暴れまわると、黒い炭となった。

 ソフィアが大剣を振り、ゴーレムに襲い掛かる。
 大剣の重い一撃はゴーレムの外装を粉砕し、その体勢を大きく崩した。

「体勢は崩れました、いまですわッ!」

 大剣の一撃で外装を破壊され体勢を崩したゴーレムのコアがむき出しになっている。
 剛太郎は息を整え、コアに狙いを付けると89式小銃を単発で発射する。
 弾丸はコアを撃ち抜き、ゴーレムは火花を散らしてその場に崩れ落ちた。

 小部屋から男性隊員と女性隊員を連れた北斗達が出て来る。

「救出完了のようだな。ソフィア、モンスターを足止めしつつ入口まで退くぞ!」
「言われずとも、そのつもりですわ!」

 剛太郎とソフィアは北斗達の後方に位置し、モンスターを足止めしつつ、
 入り口へと向かった。