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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

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パラミタ・ビューティー・コンテスト2

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緋桜ケイ

 
 
「よし、ここをこうと……ううーん!」
んっ……っ……
 楽屋裏で、悠久ノカナタに思いっきり帯をきつく締められて、緋桜 ケイ(ひおう・けい)が苦しそうに呻いた。
「この程度でなんだ。和装とは、きちっとした心構えがないと着こなせぬものなのだぞ。よし、これでなんとか形にはなっただろう」
 ふうと一息ついて、悠久ノカナタが緋桜ケイを押し出した。
『続いては、エントリーナンバー15番、緋桜ケイさんです』
 ステージの方から、シャレード・ムーンの呼ぶ声がする。
「よし、行ってこい」
「ううっ、やるしかないか……」
「往生際の悪い!」
「いっ、行ってくるぜ!」
 空元気を全開にして、緋桜ケイがステージに出ていった。
 だいたいにして、今回もコンテストに参加するつもりはなかったのだ。だが、自分の引き立て役にぴったりだとばかりに、勝手に悠久ノカナタにエントリーされてしまっていたのだった。
 衣装も、しっかりと悠久ノカナタが用意していた物だ。
 和装がいいと言うことで、黒い振り袖が用意されていた。今風の和風ゴスロリにも通じる、本絹の光沢がある美しい黒だ。そこに、緋桜ケイの名にあやかってか、桜の模様が肩と袖や裾にむかって美しく咲きほこっていた。小袖は緋色で白のつけ衿で襟元をうまく飾っている。帯の所には白い紗を挟み込み、今風のちょっとモダンな感じを演出している。豪奢な金色の帯には、紫の帯揚げを着け、帯締めの端には黒薔薇をあしらい、そこから黒い紗の飾りが下がるようにしてあった。
「ここまで来たら……」
 腹を決めた緋桜ケイが、顔をあげた。凜とした表情で、軽くも裾を手で掴むと、ゆっくりと花道を進んで行く。
 なんだか、ちんとんしゃんとBGMが聞こえるが、これは悠久ノカナタが用意していたものだろう。
「隙のないみごとな動きであるな」
 和装の歩き方に様式美を見て、イグナ・スプリントが感心してみせた。
「ええ、上品でございますわ」
 アルティア・シールアムも納得のようだ。先ほどの激しい緋王輝夜から一転しての静のイメージにちょっと安心したらしい。
 なんとか花道の端まで辿り着くと、長い振り袖をふわりと翻して振り返る。
 まだ半分。
 頑張って、帰り道も同じようにしてしずしずと進んで行く。
「これはまた、今までの参加者とはまったく違う衣装であるな。実に、奥深い」
 コア・ハーティオンが、腕を組んだまま感心しきりにうなずいた。
 その間に緋桜ケイはやっとステージに戻りついたが、ここで何かをしなければならない。
 帯に挟んでおいた扇子を手に取ると、それを広げて構えた。BGMに合わせて、即興の舞を踊ってみせる。
「うむ、上出来だな。もちろん、パラミタでは、わらわに次いで二番目ではあるが」
 舞台袖から、満足そうにそれを見る悠久ノカナタであった。
『緋桜ケイさんでした。さて、審査員の方々、今のはどうでしたでしょうか』
 シャレード・ムーンが、審査員たちに訊ねる。
『きらびやかな出で立ちはポイント高いですわよ』
 エリシア・ボックが、その衣装を評価する。
『うん、煙と同じ残念さを感じるよお。ちょっといいかもぉ』
 どこにシンパシーを感じたのかは分からないが、不動煙の反応もよいもののようであった。