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カオス・フリューネ・オンライン

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カオス・フリューネ・オンライン
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リアクション

  
 「とと!……なんなのこいつ!?メカフリューネっぽいけど!」
 
ナビAI【轟】から匿名 某(とくな・なにがし)達がすでに【キレフリューネ】と戦闘をしていると連絡を受け
急ぎ別ルートから目的の広間に到着した【アダム】やパフューム・ディオニウス(ぱふゅーむ・でぃおにうす)達を待っていたのは
データーにない予想外の相手だった
思わぬ攻撃に声を上げた騎沙良 詩穂(きさら・しほ)の前に立ち塞がるその姿は外見は【メカフリューネ】であるが
首から下の装甲は軽量化され、どことなく【黒スーツ】を彷彿とさせている
しかも斜光が必要ないはずの目には【サングラス】をかけ、手には反りのない日本刀……いわゆる【ドス】を持っている
複数体いる彼女達の一部の顔には、これ見よがしの傷まであり……
 
 「ねぇお母さん、あれ知ってるよ!ヤク……」
 「よい子は言っちゃいけません!!」
 
統合される感想を述べようとした【詩音・シュヴァーラ】の口をあわてて塞ぐ詩穂お母さん

 『ガン飛ばしてんじゃネエゾ、ゴルァ!!』

そんな二人に、子供の社会教育には大変よろしくない外見をしてる彼女達の一体が、外見に相応しい口調で豪快に吠えた
ノーマルな【メカフリューネ】を上回る姿に一瞬動転したものの、冷静に周囲を観察すると
立ち塞がる彼女達の後方で何者かと戦闘している師王 アスカ(しおう・あすか)と某の姿が見えた

二人を相手にしているのは、メカではなく生身の質感を持つ【フリューネ】
しかしその姿は煌びやかな今日の着物を羽織り、手に二刀の【長ドス】を携え
そのうえ黒服の【メカフリューネ】を2体ガード役として護衛に携え立ち回っていた
その護衛が時々彼女を『アネサン!』と言っているあたり、彼女が何者なのかは一目瞭然のようなものだ
 
 「……なるほどね【斬れ】と【キレ】ね……でも言いたくないなぁ」
 
あはは……と口の端をひきつらせて笑うパフューム達一同を発見し、不敵に彼女……【キレフリューネ】は口を開いた
 
 「ようおこしやす……そないな少数精鋭でカチコミかける意気込みは流石でおますなぁ
  けど……極道の屋敷に土足で足を踏み入れる事がどう言う事か……覚悟見してもらいましょか?」
 「ねぇお母さん、極道って事はやっぱりヤク……」
 「だからよい子は言っちゃいけません!」
 
【キレフリューネ】の言葉を聞き、再び質問する詩音の口を塞ぐ詩穂ママ
しかしそんな面々に容赦なく広間の扉から【メカフリューネ】が登場し、囲み始める
しかも囲んでいる連中は何故か【セーラー服】、手には【ドス】ではなく【機関銃】を装備して援護射撃が目的の様である
先行している某達を含め、完全に【殴りこみした連中が囲まれている】図になってしまった光景を見て詩穂が呟いた

 「……パフューム、アダム君……右手奥の扉から抜けて、そこから上に向かえるはず
  詩音は二人を途中まで案内して……お母さんなら大丈夫だから」
 「わかった、頑張ってね!お母さん」
 
詩音が答えると同時に【キレフリューネ】がドスの利いた声が開戦の狼煙の様に部屋に響き渡る
 
 「おまんら!戦争じゃぁ!!ヤッチマイナァー!!」
 『オオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
 
それを合図に、一斉に【ドス】を振りかざし、【機関銃】を襲いかかるカスタム【メカフリューネ】
その攻撃を巧みに回避し、詩穂は【光明剣クラウソナス】を片っ端から叩き込む
フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)も【歴戦の立ち回り】を駆使し機関銃の弾幕を掻い潜る
 
 「……ところで、何でセーラー服何ですか?」
 「知るか!どうせ何かのネタだろ!?」
 
それでもマイペースに質問する彼女……親切に答えるベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)
そんな二人に容赦なく銃撃を降らせる【セーラーフリューネ】
その口が時折『カ・イ・カ・ン♪』と言っている処に疑問への回答があるのだろうが、彼にとってはどうでもいい事である
 
 「でも、なんで彼女だけこんなに手下がいるんでしょう?」
 
一方で核心に近い結崎 綾耶(ゆうざき・あや)の質問に彼女を守りながら答える某
 
 「おそらく【スキル特化】という性質の為だろうな」
 「な〜る……お互いのカードを対等にする為ってとこか」
 「つまり、どういう事だってばよ?」
 
彼の言葉に納得する大谷地 康之(おおやち・やすゆき)
まだわかってない轟の質問に綾耶詳しく解説をする
 
【スキル】を特化させ重視するバトルを行うという事は、一種の【カードバトル】と同じようなものだ
もっと平たく言えば【じゃんけん】、瞬時に判断し、時に先読みして繰り出す【スキル】の優劣で戦況は左右される
しかし、それは【一対一】の場合にこそ左右されるのであって【一対複数】だとバランスが機能しなくなる
一人の出した【スキル】に大勢の相手が【スキル】を出せば、必ず誰かのカードが勝つに決まっている
だから、こちらが同時攻撃を行えないよう妨害する駒が必要なのであり、その為のガード役なのだろう
 
現に大勢の攻撃を掻い潜って【キレフリューネ】にアタックをかけられる相手は同時で二人が限度になっている
もちろん彼女も【中ボス】に設定されているゆえ、その程度の攻撃なら十分対応できる様で、明確な被弾には至っていない
 
 「このっ!少しは当たれ〜!!」
 
【ゴッドスピード】で加速されたアスカが繰り出す【名も無き画家のパレットナイフ】同時に発動した詩穂の【ソードプレイ】
その両方を【乱撃ソニックブレード】で悉くパリィ(受け流し)していく
容姿に関わらずしっかり本物と同じ【ライド・オブ・ヴァルキリー】を連続発動させてのワザに、二人とも歯噛みする
 
 「それがあんさん等の本気でおますか?」
 
不敵に笑った【キレフリューネ】が続けざまに放つ【タービュランス】を回避するべく離脱するアスカ達
しかし続けざまの反撃行為は、追撃してくる3体の【黒服フリューネ】に阻まれ一方的に攻撃ターンが奪われてしまう
続けざまに某と康之が切り込んでいくが、同様の結果に終わるのは恐らく明白だろう
 
 「もう!これじゃスキル封じも狙えないよ!」
 
【スカージ】でのスキル封じのタイミングを妨害され、悪態をつく詩穂
【ゴッドスピード】同士の相殺で同様にスキル封じの【シーリングランス】を狙えない康之も同様の思いに舌を打つ
そんな面々を半ば狂乱的に凄みのある【極道】の笑みで見つめる【キレフリューネ】
 
……だが、その視線が戦闘をしている自分達だけでなく、別の方にも向いている事に某は気がつく
とっさにその方向を眺めた彼の顔色が変わり、遠くにいるフレンディスにありったけの声で叫んだ
 
 「フレイ!奥の扉急げ!!パフューム達がまだ突破できてない!」
 
その言葉に、詩穂もはっとして奥の扉の方に視線を向ける
そこには突破するべき扉の前に立ち塞がる数体の【黒服フリューネ】
そして往く手を阻まれ、【セーラーフリューネ】に囲まれているパフューム達の姿があった
パフュームだけなら何とか突破できる数でも、アダムと詩音という非戦闘の子供を抱えてというリスクを突かれたらしい
察したフレンディスとベルクが急ぎ地を蹴り駆け出すが、タイミング的に被弾は避けられない
 
 「詩音っ!!」
 
詩穂が自分を呼ぶ声に答えられず、向けられた銃口に詩音が目をつぶり
複数の銃口が火を吹くと思われた刹那……彼女達の周りを炎が包み込み、すべての射線が妨害される
 
 「炎の……フラワシ?」
 
その炎の中に垣間見える陰にパフュームが口を開くと同時に、目の前に飛び込んできた影が凄まじい勢いで型を切る
 
 「破ぁぁぁぁぁっ!!」
 
丹田の奥から吐き出す呼吸
そして震脚とともに凄まじい勢いで繰り出された拳法の連撃が【歴戦の立ち回り】となり一気に周囲の敵を吹き飛ばす
その型が見覚えのある【八極拳】だとわかり、その影を認識したパフュームが笑顔とともにその名を呼んだ
 
 「鳳明!!」
 「だぁぁぁ!ドッキドキだった!綺麗に決まってよかったぁ?!
  パフュームさん久しぶりっ。一人で頑張るのもいいけど、無理はダメだよっ!?」
 「……ゴメン、何か今あたし、めちゃめちゃデジャヴってるんだけど」
 
今しがたの神速の放ち手と思えない笑顔で答える琳 鳳明(りん・ほうめい)
その姿にかの空賊のコロッセウムでの光景をパフュームは思い出す、確かあの時も同じ人を助けに行っていた気がする
気がつけば【ニューラルウィップ】で更なる権勢を行っていた彼女のパートナー藤谷 天樹(ふじたに・あまぎ)
子供たちの傍に歩み寄っていた
無言のままの天樹の顔を、子ども二人が不思議そうに覗き込む中、不意に彼がホワイトボードに文字を書き全員に見せる
 
 『遅くなってごめん!鳳明が全然この空間になれなくてちっとも先に進まなかったんだ』

その文章に猛烈に抗議をする鳳明

 「だってだって!私こんぴゅーたとかそういうの苦手なんだもん!
  だからこんな時の為にって、助っ人として天樹ちゃんにも来て貰ったんじゃない!
  でももう大丈夫だもん!普通に動けるってわかったから」
 「うん、今の動き見ればわかる、助けてくれてありがとね!」
 「急いでるんでしょ?行ってきなよ!ここはまかされたっ!」

再会の抱擁を交わし、ようやく開いた扉から奥に進むパフューム達
そんなやり取りに某や詩穂達も安堵する……だが、だからと言って事態が好転してるわけじゃない
そんな中、それぞれの目の前にメッセージアイコンが点灯する
戦闘を続行しつつ、それぞれがウィンドウを開いてメッセージを展開すると、それは目の前の天樹からのものだった
 
 『見たところネックは周りのガードキャラみたいだから、戦力を分担してそこを抑えた方がいいと思う
  ゲーム何だからこういう時こそパーティープレイだよ
  数人で周囲の敵を抑えて、壁(タンク)がボスをガードする中、後方支援がパターンを分析
  あとはアタッカーが開いた突破口からスキルを叩き込む……どうかな』
 「……ゲーマーならではの発想だな、だが一番理にかなっている、乗った!」
 
メッセージを読んだ某がにやりと笑う。他の全員も考えは一致したらしい
 
 「まさに優秀なハイテク忍犬の僕が活躍できる時なのですよ」
 「俺も分析手伝うぜ!父ちゃん母ちゃんにやっぱいいとこ見せたいからな!」

忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)と轟の言葉にベルクがやれやれと息をつく

 「ポチの奴等が何やりてぇのか知らねぇが、フレイ、俺たちはその間遠慮なく暴れておくぞ」
 「はい、マスター!」
 「周囲の有象無象は任せろアスカ、お前を狙う敵は全力で守る」
 「ありがと、よ〜しどんどんいこう〜♪」
 
ルーツの言葉に【オーダリーアウェイク】で身体強化を施しながらアスカが笑顔で答え、一番に地を蹴る
大地と交互にフォーメーションを組みながら【キレフリューネ】にアタックをかけ
3人を妨害する周囲のエネミーには、某とルーツが応戦する
 
詩穂の【オートガード&バリア】に守られながら、攻撃パターンをポチの介と轟が彼女とともに解析に専念する中

綾耶とフレンディス&ベルクがさらに彼らの周囲を全面的にガードしつつ、一体ずつエネミーを機能停止させていく
それは僅か5分の様であり、1時間にも及ぶ長さにも感じられたかもしれない
一秒が命の全力の戦闘が続く中、ポチの介が全員に分析データーを送るのと
根気よく応戦したことにより、周囲のガードエネミーの勢いが僅かに弱まったのが同時だった

 「いける!同時に攻めるぞ!」
 
残り少ないSPの中、康之が合図とともにアスカの身体強化の一撃とともに【剣の舞】を叩き込む
 
 「その程度……なめとったら死にますえ?」
 
だが案の定、【キレフリューネ】の【タービュランス】が暴風ごと二人を吹き飛ばそうとする
だがその行動はすでに分析済み……
そのスキル発動の一瞬を狙い、次の手を打つべくずっとチャンスを狙っていた鳳明と天樹が、彼女に向けて一気に跳躍する

最短距離を最速で通り最高の一撃を一番効果的な箇所に打ち込む
先ほどの攻撃も鮮やかではあるものの、鳳明の本来の攻撃特性は一対一に特化している
その特性を生かし、練りこんだ気を一気に放ち円環の動きで数体の【黒服フリューネ】の攻撃を掻い潜り突き進む
追撃する敵は後続の天樹の鞭が牽制する絶妙な連携の中、必死に【キレフリューネ】が態勢を立て直す

 「千招を知る者を恐れず、一招に熟練する者を恐れよっ!」

【千の技を知るよりも一つの技を極ろ】……八極拳の偉大な先達の言葉と共に【黒縄地獄】の一撃を繰り出す
もちろん、そんな次手で隙が生まれるはずもなく【強化装甲】込みの防御で凌ごうとする【キレフリューネ】
だが、直前で放たれた天樹の【信号弾】が猫だましの様に彼女のタイミングを狂わせる
十分に防御が間に合わない中、鳳明の一撃が叩き込まれ【強化装甲】で上がった防御値分、強力なノックバックを生じさせる
 
そして……三手目!!
同様に弾かれる鳳明の陰から、フレンディスの影が飛び込んだ
だが予測を超え、僅かに多い【セーラーフリューネ】の銃口が彼女をハチの巣にするべく狙いを定める
それが某達の【殺さず戦闘不能に腐心する】行為が原因とはいえ、それを責めることなど誰もできはしない
 
覚悟を決めたルークとベルクが飛び出し、彼女と銃口の間に壁を作る
【風の鎧】でガードしつつ、それでも降り注ぐ銃弾を身をもって防ぐ中
それでもただでは転ばんとばかりにベルクが【貴族的流血】【我は誘う炎雷の都】を叩き込んだ
 
 「!?……マス……」
 「迷うな!行けフレイ!!」
 
思わず叫びそうになるフレンディスだが、ベルクの叫びに想いを理解し、意を決して前を見据える
その眼差しはいつものマイペース忍者にあらず【忍びの頭目】に相応しき眼光
その意志を持って【稲妻の札】を発動し、帯電の光を纏わせながらさらに【魔障覆滅】を叩き込み
【キレフリューネ】の【乱撃ソニックブレード】と激しくぶつかり合い、激しい衝撃音を響かせる
 
 「「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」」
 
お互いの裂帛の気合の元、連撃が続く応酬……
本来ならパワー差があるが、度重なる攻撃にタイミングを乱された【キレフリューネ】のそれと互角の勝負を繰り出す
狂楽的な彼女の顔から余裕が消え、凄まじい殺気が放たれ、咆哮の叫びが木霊する
 
 「な……め、るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 
【三騎士】の意地か、最後の地力の勝敗か、それでも衝撃に押され、宙を舞ったのはフレンディスの方だった
度重なる応酬の中、自分に向いた勝利の女神に安堵する【キレフリューネ】
だが……彼女はフレンディス・ティラという存在の本質を知ってはいなかったのだ
衝撃にダメージを負いながらも、フレンディスの顔は笑顔であり……口からは微かな言葉が漏れる
 
 「……今です、みなさん」
 
その声の意図に【キレフリューネ】が気がついた時、彼女の上から詩穂と康之の声が響き渡った
 
 「ありがとう!これで決めるから!」
 「ちゃっちゃと片付けるとするか!いくぜ!」
 
【スレイプニル】に跨った二人が彼女めがけて降下する、発動する技は【シーリングランス】と【スカージ】
その目的は………【スキル封じ】

 「あんたら!最初からこれが目的でまわりくどいことをっ!!」
 
【キレフリューネ】が叫ぶ中、二人の技が確実に成功し彼女のスキルを完全に封印する
特性を封じられた今、勝負はもはや決まったも同然であった

着地した詩穂の【光明剣クラウソナス】が輝きを増し、二度目の【ソードプレイ】が発動される
康之の【ウルフアヴァターラ・ソード】から峰打ちの【レジェンドストライク】が放たれ
某の【フェニックスアヴァターラ・ブレイド】のそれと重なる中
真っ直ぐに飛び込むアスカから放たれた【百獣拳】が炸裂する
 
 「うあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

広間の中央に凄まじい光が迸り、周囲のガードエネミー達が消滅していく
それは目指すべき目標に到達するための一つの障壁が取り払われた瞬間だった


その光景を倒れたままで眺めながら、フレンディスが傍らのベルクに声をかける
ゲーム用に設定された彼女らのHPバーは完全にゼロを示し、その体が光に包まれる

 「………ま、やる事はやったんだ、先にログアウトさせてもらうか」
 「せっかく来ていただいたのに……巻き込んでしまって申し訳御座いませんマスター……戻り次第お夕食作りますね」
 「おいおい……こんなときでもそんな事気にしてんのかよ」
 
相変わらずのお互いのやり取りに苦笑し、共に横たわったまま手をつなぐ
満たされた笑顔と共に、二人の姿が掻き消えた