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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

リアクション

 休憩時間、裏では大変な事がおきていたが、ほとんどの生徒はそんなことなど露知らずだった。
 そして午後、予選会の後半戦が始まった。

 ――生身部門――

 最新シミュレーターによる対インテグラル戦。生徒達の前には、派手ではないものの豪華な鎧を身に纏った赤髪巨漢の男が佇んでいた。背中には無数の剣を差し、両手にもそれぞれ剣が握られている。
「あれが予選会の相手……」
「ここで立ち止まるわけにはいきませんわ」
「そうね……。相手は一人。一気に蹴りをつけてあげるわ!」
「わたくしも負けていられませんわね!」
「お嬢様、援護いたしますね」
 グループに入っているのはパトリシアとマリア、そしてガレス(沢渡 隆寛(さわたり・りゅうかん))。他にもそれなりの数の生徒が所属している。
「なぁ、インテグラルって物凄い強いって話だけどさ……」
「一人だしいけるんじゃね?」
 他の人達も相手が一人であると知り程度余裕が出てきたのか、お互いに会話しているものもいる。
『では、戦闘開始。各々全力を尽くすように』
 そのアナウンスの後に、全員が功績を求めるかのごとく我先にとインテグラルへ突撃する。ガレスはそれにあわせず、様子を見る。パトリシアも同様だった。
「先手必勝!」
 魔法を使う者達がインテグラル目掛け一斉に魔法を放つ。
 様々なものが混ざり合い、インテグラルを中心に爆発が起こり煙が舞う。その中を前衛メンバーが突っ込んでいく。
「…………」
 響いていた声がなくなり、途端に静かになる。
「倒した……?」
 煙が引くとそこにはインテグラルがほぼ無傷の状態で仁王立ちしていた。周囲には、突撃したであろう生徒達が倒れている。
「嘘でしょ……!」
 さすがの光景に驚きを隠せないパトリシア達。
「あの一瞬で何が起こったというの……!?」
「突撃した大量の生徒達をあの短い時間で全て倒したというのですか……」
 そして、インテグラルはゆっくりとパトリシア達に向けて歩き始める。
「この!」
 負けじとパトリシアがサンダーブラストを放つ。直撃したはずのインテグラルは顔色一つ変えず歩みを止める気配はない。
「効いてないの!?」
「……まだですわ!」
 マリアは禁じられた言葉で魔力を十分に引き上げ、歴戦の魔術による強力な無属性魔法を放つ。だが、インテグラルが歩みを止めることはない。
「きゃぁ!」
「うわっ!」
 その間にも、インテグラルは間合いに入った生徒達を一瞬にして斬り捨てて行く。
「あっという間ね……ほんとに」
 すでに残っている生徒の数は半分以下。最初の突撃でほぼ半分の生徒がインテグラルに負けている。分かっているのは、その事実だけだ。マリアもパトリシアも、何が起こったのかはまるで分析できていない。
「ですが、チャンスというものですわ」
 マリアは再び魔力を引き上げ始める。
「その分、残っているわたくし達にはチャンスが増えるのですから!」
 再び放つ無属性魔法。インテグラルに当たりはするものの、傷一つつく事がない。インテグラルは攻撃してきたマリアを視認すると、歩く方向をそちらへと向ける。
「って、こっちに来ちゃったじゃない!?」
「私が……!」
 焦るパトリシア。彼女の顔を見るからに、何らかの術式を発動させようとしているようだったが、まだ準備が終わっていないようだ。ガレスが二人の前に立ち、インテグラルと対峙する。
「はっ!」
 ガレスは剣を構えインテグラルへと向かう。それを見たインテグラルは剣を構える動作を取る。ガレスは素早い剣技でインテグラルに猛攻を仕掛ける。インテグラルはそれらを綺麗にさばいていく。
「そこですっ!」
 隙をついての一撃。剣はインテグラルの腕を斬る。
「……斬っている感覚はあるのに、ビクともしない……?」
 疑問に思うガレスへとインテグラルが剣を軽く振るう。
「……っ!」
 剣を構え咄嗟に防御。鉄と鉄がぶつかり合う鈍い音が響く。ガレスは一度距離を置き、自分の手を見る。
「……手が痺れるほどの重たい一撃……」
 軽く振られた剣を防いだだけであったが、ガレスの剣を持つ手は衝撃の反動を受け痺れを発していた。
「強い……。ですが!」
 諦めず、インテグラルへと突撃するガレス。
「はっ!」
 ガレスが突きを繰り出す。インテグラルはそれを片手の剣で受け止める。
「なっ!?」
 そこから流れるような動作でもう一つの剣でガレスを斬り払った。
「ガレス!?」
「申し訳ありません。お嬢様……」
 ガレスリタイア。
「くっ!」
 マリアはすぐさま、空飛ぶ魔法↑↑で上空へと回避。
「……準備完了。やれるだけやってやるわよ!!」
 術式の準備で見ていることしかできなかったパトリシアが、ついに動き出す。複数の魔道書を同時に展開。サンダーブラスト、天のいかづち、バニッシュ、雷術などそれぞれの魔法から乱射される。魔道書が魔力切れにならない限り、魔法を放ち続けることができるという、彼女の切り札だ。
「倒れなさいよ!」
「……いきますわ!」
 さらに上空のマリアからのシューティングスター☆彡を放つ。さすがのインテグラルも動きを止める。
「よし……!」
 だが、すぐに歩き始め、パトリシアを剣の間合いに捉える。
「消えなさい!!」
 魔道書の自動術式に加え、彼女自身の魔法が繰り出されようとする。しかしそれが届く前に、パトリシアがインテグラルの高速の一閃を受けてしまった。
「もう少しだと思ったのに……」
 パトリシアリタイア。残りは上空に退避していたマリアのみ。インテグラルがマリアを見上げる。
「この!」
 歴戦の魔術を乱射するマリア。インテグラルは一瞬屈む動作をした瞬間、跳躍。高速でマリアへと迫る。
「来ましたわね!」
 待っていたとばかりにマリアがグレイシャルハザードで迎え撃つ。だが、インテグラルはその冷気をすり抜けマリアの元へ。
「うそ――」
 言葉をつむぐ前に高速の剣技がマリアを捕らえた。
『戦闘終了。お疲れ様でした』