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リアクション
――イコン部門――
相手は、ニルヴァーナに存在する20mほどの大型モンスター――イレイザー。
「こんなところで負けてられねぇぜ……」
一人意気込んでいるのは、フリーダムに乗るトーマスだ。
「さて、お手並み拝見といくか」
陣風に乗るは湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)と高嶋 梓(たかしま・あずさ)。
「準備完了、いつでもいけますわ」
「了解」
『では、戦闘開始です』
「よっしゃ! 行くぜ!」
開始の合図と共に前に出たのは、フリーダム。
「負けてられないな……!」
イレイザーに少し気後れしていた他のイコンはフリーダムを見て、負けじと前に出る。
「よし、行こう」
陣風も飛行形態で空へ。
イレイザーが咆哮すると、背中に生える無数の触手が自在に動き、迫り来るイコンへと迎撃を始める。
「喰らえ!」
フリーダムが触手へ向け、銃剣付ビームアサルトライフルを乱射。だが、不規則に動き、かつ的の小さい触手に思うように当たらない。当たったとしても、かなりの堅さを持つ触手に一発命中したとしても攻撃を中断できるものの、破壊には至らない。当たらなかった触手の口から火の弾が射出される。
「この程度楽勝!」
無数に撃たれた火の弾を回避、ビームシールドを展開し防御しながら接近する。イレイザーは接近するフリーダムに対し、口から衝撃波を発する。
「おっと」
さすがのフリーダムも前進をやめ、退避。
「そう簡単に近付かせてはくれないか。何か良い方法はねぇかな……」
一度、距離を置くフリーダム。
「さすが、フリーダムだな」
亮一は上空から様子を窺っていた。巧みに動くフリーダムを見て、感心の声を上げる。
「触手、複数方向から多数接近です」
「了解。回避する」
迫り来る触手は陣風向けて火の弾を発射。陣風は縦、横と自在に旋回して回避していく。
「牽制といくか」
触手達を掻い潜り、ショルダーキャノンをイレイザー向けて発射。直撃を受けるイレイザーだが、強靭な肉体を持っているためそこまでダメージを与えられない。仕返しとばかりに陣風へ向けて衝撃波を放つ。
「離脱」
一撃離脱の構えを取る陣風。すでに距離を取っていた陣風は悠々と回避。
「さて、どうするかな……」
距離を置いたトーマスは周囲を見る。どのイコンも自在に動く触手に混乱させられ、あっという間に触手に囲まれボコボコに殴られたり、触手の火の弾の餌食になったり、他のイコンに誤射してしまったりと混戦状態になっていた。
「悔しい話だが、一人でイレイザーまで接近するのは不可能だろうな……」
先ほどの突撃を元に、冷静に判断するトーマス。勇気と無謀は履き違えるものではない。このプログラムに参加して分かった事でもある。
「だが、遅れを取るわけにもいかねぇんだよな……」
予選会を突破できるのは上位二名のみ。このまま何も出来ないでいれば最悪予選落ちとなり前には進めない。
「……ん?」
触手のいくつかが空へと伸びるのを見て空を見る。そこには、空を翔る陣風。
「あれは、陣風だったか……」
イレイザーも中々当たらない攻撃の当たらない陣風へと意識が向いている。
「……チャンスがあるならそこか」
フリーダムは行動を開始した。
「……触手の数が増えたか」
陣風を狙う触手の数が増え始めている。だがそれでも確実に攻撃を回避し、ショルダーキャノンを撃ち、一つずつ触手を破壊していく。
「えぇ。それに、地上のイコンの数がかなり減っていますわね」
「……このまま、回避し続けても仕方ない。そろそろ行こう。索敵を頼む」
「了解です……あら?」
レーダーを見ていた梓が、単騎でイレイザーへ向かうイコンを見つける。
「どうした?」
「地上で、一機だけイレイザーに向かっていく機体があります」
「……さしずめフリーダムってところか。イレイザーの注意はこちらに向いている。その内に接近しようとしているのだろうな」
実際、フリーダムよりも陣風を狙う触手のほうが数が多い。
「どういたしますか?」
「やる事に変わりはない。触手の数を減らしつつ接近。イレイザーに攻撃する」
「了解しましたわ」
陣風は旋回し、イレイザーの方向けて飛行開始。進行を防ぐため、迫り来る触手へショルダーキャノンを撃ち、道を開く。
「どけっ!」
その間、フリーダムは少なからずも無数に迫り来る触手をビームサーベルで斬り捨て、距離を置き火の弾を撃つ触手にはビームアサルトライフルで射撃しながら突き進む。
「よし、いまだ!」
イレイザー上空まで到達した陣風、そこから人型に変形。イレイザーの頭上からスフィーダソードを振り下ろす。
「おらよっ!」
そして、同時に正面からフリーダムがビームサーベルで斬りつける。
同時に斬りつけられたイレイザーは悲鳴を上げるも、倒れるまではいかず、暴れるイレイザー。強靭な爪でフリーダムと陣風をなぎ払う。
「うおっ!?」
「くっ!」
吹き飛ばされる二機。そこに迫る、触手。
「おいおい、さすがに避けられねぇよ……」
「ここまで、だな」
触手による全方位からの総攻撃が陣風、フリーダムへと降り注ぐ。
『戦闘終了。おつかれさまでした』
全機がリタイアとなったところで、アナウンスが鳴り響いた。
「あ、そちらも終わったみたいね。おつかれさま」
「お疲れ様です」
「……おつかれ、さま」
教室に戻った、イコン組を出迎えたのは生身組の面々。
「おう、おつかれさん」
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
「みんな、どうだった?」
「まぁ、手応えはあったんじゃね? イレイザーには勝てなかったがな」
「こちらも似たようなものね……。インテグラル……噂には聞いてたけど、凄まじかったわ。と、なると後は筆記のテスト次第かしら?」
「そうだな。まぁイコン問題は余裕だったな!」
「わたくしもあの程度なら問題ありませんでしたわね」
「第一世代とか第二世代とかそんなことはどうでも良いんです。皆、イコンで兄弟なんですから分け隔てなく仲良く一緒にすれば良いんですよ!」
一人胸を張って答える、翔一。
「……一応、参考までに聞くわ。翔一、あなた最後の問題なんて答えた?」
「凄まじい枕です!」
翔一の言葉に呆れる一同。
「……凄まじい枕など、選択肢にはなかった気がします……」
「毎度ながらあなたは……」
「パトリシアさんにしか興味がない僕が分かるわけ無いじゃないですか。大丈夫! 僕が予選落ちしたら観客席からパトリシアさんの勇姿を撮影しておきますから!」
「……まぁ、良いわ。ライバルが一人減ったと考えれば……」
「そうですわね」
「亮一殿、こちらでしたか」
休憩室へと入ってきたのは陣風の機体整備を担当していたアルバート・ハウゼン(あるばーと・はうぜん)とソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)である。
「二人とも予選会お疲れ様」
「あぁ、そちらこそ機体整備ありがとう」
「いえいえ、今の私達にはこれぐらいしか手伝える事がありませんゆえ」
「……破壊工作や妨害工作が行われないか用心していたけれど、特に問題なかったわ。もちろん、陣風にも何もされてなかったみたい」
ソフィアが亮一にしか聞こえない距離でそっと耳打ちする。
「……そうか、助かった」
「このぐらいならお安い御用です」
「さて、後は結果が出るまで、自由だな!」
トーマスが立ち上がる。
「んじゃ、俺はフリーダムのところ行って来るわ。トーナメントで会えたら会おうぜ」
「僕たちも、ラードゥガの調整をしておきましょう。それでは皆さんまた会いましょう」
「……またね、です」
「またね。それじゃ、私も部屋に戻ろうかしら」
「わたくし達も、トーナメントに出られるように一通り準備しておきましょう」
「かしこまりました。お嬢様」
「亮一さん、私達はどういたしますか?」
「先ほどの戦闘のデータの確認と、陣風の最終調整をしておこう」
「もし、不備があればなんなりと申しつけを」
「了解。では行こう」
テストも終わり、それぞれが自由に行動を始めた。
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