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リアクション
夜、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)、シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)、ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)、ケセラン・パサラン(けせらん・ぱさらん)の四人はせつな達と共に見回りをしていた。
「…………」
「フィス姉さん、一人で先に行かないで」
「…………」
「あはは……聞いてないみたいね。一緒に見回りをするときからあんな感じだったけれど、どうかしたの?」
「生身でイコン部門トーナメントに出れないからふてくされているだけです」
せつなの疑問にヴィゼントが答える。シルフィスティは意気揚々と生身でイコン部門の予選会へと参加しようとしたのだが、『生身での参加は出来ない』と先生にたたき出されてしまったのだ。
「ふてくされていないわ!」
シルフィスティがキッと振り返る。
「こうなったら……トーナメント中に乱入して……」
「……そんなことさせないわよ。そんな事をしたら、本気で止めるから」
良からぬ事を考えるシルフィスティに答えるリカイン。
「潔く大人しくしていてください。でないと、分かりますよね?」
「うっ……」
ヴィゼントの言葉に顔が引きつるシルフィスティ。そして、ため息をつく。
「……分かったわよ。しょうがないから大人しくしているわ」
「分かれば良いのよ」
「なかなか大変ね」
そのやり取りを見ているせつなは、苦笑していた。
「……ナナシ、少し良いかい?」
そのやり取りを見ながら、ケセランは一人周囲を警戒しているナナシに声をかけた。
「なんだ?」
「過去を変えようと誰かが未来からやってくる……。ところがそれ自体がすでに過去を変える行為。そして、変えようとした部分以外も否応なしに影響してしまう……」
「……それがどうした?」
「事実、ナナシ。キミが来たことでキミの知らない『C』という存在が現れるという変化が起こってしまっている」
「ふむ、確かにそれは一理ある。それで、何が言いたいんだ?」
「まずは、そのもう一人の『C』を対処するべきではないだろうか?」
「コード:S^2の方をか?」
「これ以上過去を変えてしまうのはまずい。だから、まずは起きた変化に対処するべきではないだろう」
「どの道、対処しなければいけないことに変わりはない。倒せるほうから倒すだけだ」
「……ケセラン、普通に喋れたのね……」
リカインはナナシとケセランのやり取りを聞いていた。
「普段は何聞いてもまともな返事を返してこないというのに……、このイラッとするようなもやもや……。どうやって発散させようかしら……?」
一人悶々としたまま、二人を窺う。
「……あんた誰?」
先頭をずんずん歩いていたシルフィスティが誰かを見つけ止まる。リカインも一度考えをやめた。せつな達もすぐにシルフィスティに追いつく。
「…………」
目の前には男子生徒。静かに佇みせつな達を見つめていた。
「……コード:S^2か」
ナナシが男子生徒を睨む。
「おっと、俺もいるぜ」
そして、陰から出てきたのはダヴィデ。
「コード:S^2にも仲間がいたのね……」
身構えるせつな達。コード:S^2がゆっくりとナイフを構える。
「……対象捕捉。攻撃開始」
「ふふふ……ちょうど良いわ。あんたでこの鬱憤晴らさせてもらうわよ!」
シルフィスティはレーザーブレードを構え突撃してくるコード:S^2に向かって走る。
「妨害対象捕捉。殲滅開始」
「良いわ。やってみなさいよ!」
「…………」
「おっと、お前の相手は俺だ。名無しの権兵衛」
加勢しようとしたナナシの前に出るダヴィデ。
「悪いがお前の相手をしている暇はない」
「残念だがそういうわけにもいかないんだよなぁ。お前の話は聞いた。結果的に未来が救われるなら殺人も厭わない、目的の為なら他人の理解もいらん……。そんなお前の態度が気にいらねぇ。だから――」
ダヴィデが武器を捨て拳を突き出す。
「本気で未来を救う気があるなら、俺を口説き伏せて見やがれ、権兵衛!」
「そんな戯言……付き合う気などない」
「ふん、怖気づいたか? それとも、お前の言う事などその程度の戯言か? はっ! 笑わせてくれるぜ!」
「…………」
ナナシが静かに前に出る。
「……ナナシ?」
不思議に思ったせつなが首を傾げる。
「……こいつは俺がやる。そっちは任せる」
「え?」
「……ダヴィデと言ったな。良いだろう。俺の本気とやらを見せてやる」
ナナシが構えを取る。
「……そうこなきゃな」
「……投擲」
「そんなんじゃ当たらないわよ!」
コード:S^2の投げるナイフを、シルフィスティは悠々とかわしてみせた。
「それっ!」
そして、無数に飛び交うナイフをすり抜けコード:S^2へと鋭い突きを放つ。
「……防御」
シルフィスティのブレードをナイフで受け止め、受け流すコード:S^2。
「……反撃」
そこから、ナイフを繰り出す。シルフィスティにかすりはするものの超人的肉体とT・アクティベーションで頑丈な肉体を持つシルフィスティには大したダメージを与えられない。
「残念だったわね!」
腕を伸ばし、無防備なコード:S^2へブレードを突き出す。
「……!」
素早く反応したコード:S^2。常人離れした速度で下がり、シルフィスティの攻撃を回避してみせる。
「あれを避けるなんて……面白いわね」
「……腕部損傷」
だが、コード:S^2の腕には深くはないが斬り傷があった。傷の具合を確認する。
「……行動に支障なし」
そして、コード:S^2は再度ナイフを構える。
「良いわ。そうこなくっちゃ!」
「フィス姉さん一人だけにやらせておくわけにはいかないわ」
リカインが前に出る。
「ちょうど、もやもやしていたし……、せっかくだから発散させてもらうわ!!」
リカインが咆哮を放つ。
「ぐっ……、なぜワタシを巻き込むのですか!?」
なぜか、ケセランを巻き込んだ。
「別に他意はないわよ。レゾナント・アームズの力を解放するのに必要なことだし、文句を言われる筋合いはないわ。さて、行くわよ」
シルフィスティの攻撃の合間を埋めるように、リカインが解放した力をぶつける。それによりコード:S^2は防戦一方になる。
「ほらほら、どうしたの? 攻撃しなきゃ勝てないわよ!」
「……これ以上の戦闘は危険。撤退する」
コード:S^2は距離を取るため、迫る二人に対しナイフを投擲。
「逃がさないわよ!」
アクセルギアで加速するシルフィスティ。
「……退却」
コード:S^2がポロッと服の中から落としたのは、閃光弾。地面に触れると同時に眩い閃光を発する。
「くっ!」
シルフィスティも足を止める。光が治まったときにはコード:S^2の姿はなかった。
「逃がしたわね……」
「二人とも平気!?」
「えぇ。私達は平気。それよりもナナシくんは?」
「……まだ殴り合っているわ」
せつなが二人へと視線を向けた。
「ふっ!」
ダヴィデのフックを、ナナシが屈んで回避する。
「どうした、デカイ口を叩いたわりにはその程度か」
そこからダヴィデへとアッパーを見舞う。
「まだまだ!」
それをバックしてかわし、ストレート。
「俺の本気を見せろと言ったな?」
それをナナシはブロック。防御体勢からのフック。
「あぁ! 別に未来を救いたいというのが本気じゃないというつもりはないが……。お前の態度が気に入らないからな!」
ナナシと同じように返しのアッパー。ただ、狙いは腹部。
「ぐっ!」
それがナナシへ刺さり、ナナシの動きが揺らぐ。
「追加だ!」
そこにストレート。だが、それをナナシは回避してみせる。
「……お前がどう思おうと勝手だ。だが……」
ナナシが鋭いフックをダヴィデへと決める。
「っ!」
更にアッパーを決める。
「ぐっ!?」
「何を言われようが、俺は最初から本気でやっている!! お前に文句を言われる筋合いはない!!」
トドメのストレートがダヴィデを貫く。ゆっくりと倒れるダヴィデ。
「なんだ、もう終わってたの」
助けに入ろうとしたシルフェスティがつまらなそうな声を上げる。
「こいつはどうするの?」
そして倒れているダヴィデを指差す。
「まだなにかするならどこかに縛っておくとか……?」
「いや……その必要はない」
ゆっくりと起き上がるダヴィデ。
「……まだやる気か?」
「いいや、お前の本気は分かった。だったら俺はもうお前の邪魔はしない」
ダヴィデはナナシに向けて手を差し出す。
「良いパンチだったぜ」
「ふん、お前もな」
ガッチリと握手を交わす二人。
「……何これ」
「男同士の友情と言うやつですよ」
「あっそ……。さて、あいつ逃げちゃったし戻りましょ」
シルフェスティは付き合ってられないとばかりにさっさと部屋へと戻ってしまった。
「……私達も戻りましょ」
「そうですね」
「ほら、ナナシとダヴィデ君も今日は遅いからもう部屋に戻りましょう?」
「そうだな」
こうして、無事に……とは言えないが、六日目は終わった。
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