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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

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【ぷりかる】幽霊夫婦の探し物

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第二章 料理を作ろう!


「親睦会がとんでもない方向に行ってるみたいね。グィネヴィアの方はみんながいるから大丈夫として私は料理の方にでも行こうかな。幸い時間も沢山あるし、一品ぐらい作っておこうかしら。せっかくのグィネヴィアの親睦会だし。その前に……」
 ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は冷静に今の状況を分析し、自分が取るべき行動を選ぶ。行動を起こす前に助っ人としてルカルカ・ルー(るかるか・るー)に連絡をした。

「……キスミ君の料理がテーブルを埋め尽くす前に美味しいお菓子を作って親睦会を盛り上げようか」
 涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)は調理スペースの方に顔を向けた。テーブルにはまだ料理が無いので参加者が食べる前に手を打たなければならないと。
「はい。わたくしも得意なお菓子を作りますわ」
 ミリィ・フォレスト(みりぃ・ふぉれすと)はやる気十分の様子。料理は涼介達両親の手伝いをしていたので得意なのだ。
「それじゃ、ミリィ行こうか」
 涼介はミリィと共に調理スペースへ急いだ。

「今回は大人しい方じゃな」
 ルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)は親睦会の様子を眺めて一言。双子の今までの悪戯の中では大人しい方ではないかと珍しく思っている。すっかり巻き込まれ慣れているのは確か。事情を知っているためかルファンには幽霊に対して驚いている様子は皆無。
「これは楽しそうアル。料理を食べるネ」
 シルヴィア・シュトロン(しるう゛ぃあ・しゅとろん)は幽霊夫婦に美味しい料理と賑やかな様子に浮かれ食べる気満々だ。シルヴィア自身料理出来なくはないが、食べたりする方が好きなのでキスミの料理処分担当を決める。
「……うぅ、悪い幽霊じゃないのは分かってるけど、やっぱり」
 イリア・ヘラー(いりあ・へらー)はウルバス夫妻を恐々と見ていた。ハナエはともかく頭のないヴァルドーは少し恐怖だ。
「もっと呼ぶか? あの二人に友達がいないか聞いてくるネ」
 シルヴィアが楽しそうにイリアの怖がりを煽る。シルヴィアは元々幽霊が見えるので驚いたりはしていない。
「ヴィー、そんな事しなくていいから!」
 イリアは強い調子で夫妻の所に行こうとするシルヴィアを必死に止めた。

 そして、
「ダーリン、早く行こう」
 イリアは恐怖のためルファンの腕を掴み、ウルバス夫妻から身を隠すように小さくなって何とか自分の視界に入らないようにしている。
「そうじゃな」
 ルファンはイリアにうなずき、幽霊が苦手なのは周知の事なので腕を掴まれたまま調理スペースに向かった。何かあればイリアの指示で自分が料理をする事も考えながら。
 イリアのためウルバス夫妻の近くを通らないように遠回りをして向かった。
「早く、早く、来るアル。怖くないネ」
 祭りが大好きなシルヴィアは元気に先頭を歩き、恐々と歩くイリアに笑いながら言った。当然イリアの顔は強ばっていたが。

「……これが幽体離脱クッキー」
 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)はクッキーを一枚手に取り、楽しそうにお喋りをしているハナエの方を見た。そこにある考えが浮かんでいた。
「食べ物で遊びやがって」
 シン・クーリッジ(しん・くーりっじ)は怒りの混じったため息を吐きながら幽体離脱クッキーの山を見た後、ほんの少しだけ味見。グィネヴィアの感想が真実か確かめるために。
「……この効果はともかく、キスミのやつ美味い料理を作りやがるな。これは燃えてきたぞ。勝負だ!」
 一瞬だけ霊体化し、元に戻ったシンの目はすっかり料理人に変わっていた。昇天する料理を作ってやると闘志に溢れている。怖いものが苦手だが、ウルバス夫妻の陽気さと料理勝負への闘志で大丈夫のようだ。
「……せっかくの親睦会だから一人残らず楽しんで貰いたいね。シンや皆が作る美味しい料理もたくさんテーブルに並ぶだろうし、堪能できないのは寂しい気がする」
 ローズはシンの闘志を気にする事なく、頭の中で何事かを考えていた。親睦会は参加者全員が楽しんで初めて成功するのだ。お喋りをしているハナエを見るともう部外者ではなく参加者の一人に見える。
「何か薬を作るのか?」
 ローズの様子から思考内容を察したシンが訊ねた。
「少しね。霊体の人を対象に少しの時間だけ実体にする薬を作ろうかなと」
 ローズは考えていた事を話した。自分達だけ楽しむよりもウルバス夫妻にも楽しんで貰いたい。それこそ本当の親睦会だとローズは思っている。
「そうか。とりあえず、オレは美味い料理を作るぜ。キスミの奴に負ける訳にはいかないからな」
 キスミへの闘志は消えないが、ウルバス夫妻を楽しませる事は忘れない。
 早速、ローズは薬、シンは料理のため調理スペースへ急いだ。

「……キ、キスミさんのお料理をグィネヴィアさんや他の参加者が食べないようにしなきゃ」
 リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)は楽しくお喋りをしているグィネヴィアの様子を見た後、賑やかな調理スペースの方を見た。
「……あの双子のお坊ちゃんの悪戯は知っていたけど、まさか巻き込まれるなんてな」
 ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)は双子については同じ学校なのでよく耳にしているがまさか自分達が巻き込まれるとは思いもしていなかった。
「賑やかな親睦会ねぇ」
 セリーナ・ペクテイリス(せりーな・ぺくていりす)はのんびりと会場を見回していた。
「と、とりあえず料理を作っている所に行ってキスミさんの料理を引き取って来ます」
 リースは幻覚茶と幽体離脱クッキーしかないテーブルを見た。ここに無いという事は調理スペースに大量にある確率が高い。
「俺はグィネヴィアのお嬢さんの所に行ってキスミのお坊ちゃんの襲撃に備えるぜ」
 ナディムは来るだろうキスミの襲撃に備える事にした。あの悪戯小僧なら周囲の目をかいくぐり悪戯を仕掛けるはずなので。
「私はレラちゃんとここでキスミちゃんのお料理を待っているわねぇ」
 セリーナは側にいる賢狼・レラの頭を撫でながら言った。
「えと、セリーナさん、お料理はレラさんに食べて貰ったらどうですか」
「そうねぇ」
 リースはセリーナが食べないようにアドバイスをしてから調理スペースに行った。

「またあのロズフェル兄弟ですか。とりあえず、ボクは親睦会を楽しみながらキスミさんと捜索に行っているみんなの肉体の監視をします」
 非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)はため息をついていた。同じ学校であり空京デパートでの怪人大暴れ事件に巻き込まれた事があるので双子については知っている。悪戯が出来るものがあれば我慢が出来ないはず。
「我は直接キスミの所に行って監視をしよう。霊体になり姿を消した際は近遠、頼む」
イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)はキスミの近くで見張り役。
「分かりました。大人しく料理と捜索をしていればいいのですが、きっとそうならないはずですから」
 近遠はうなずいた。
「まともな料理がなさそうなのであたしは調理の方に行きますわ」
 ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)は調理の手伝い。
「それじゃ、アルティアは料理を運んだりお手伝いをするでございますよ。ついでに情報伝達はお任せですわ」
 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)は給仕と伝達係。
 役目が決まったところで早速行動開始。

「……あれは」
 調理スペースに近い席に着こうと移動していた近遠が会場から離れようとしているセリーナを発見した。
「あら、近遠ちゃんもキスミちゃんが作ったお料理を食べるの」
 近遠よりも先にセリーナが声をかけて来た。
「……ボクは双子と捜索者の肉体の監視です。大変な事になりましたね」
 近遠が答えた。
「……そうねぇ。でも楽しいわ。みんなお料理を作ったりお喋りをしたり食べたり、ヒスミちゃんとキスミちゃん、とても素敵な親睦会を作ってるわ」
 セリーナは賑やかな会場の空気に笑みを作っていた。
「……そう言えばそうですね。呆れたり文句を言ったりしながら楽しそうですね。でもヴァルドーさんの頭が見つかればもっと楽しくなると思います。それもきっと見つかりますよね」
 近遠も会場を慌ただしくしている人達を眺めた。確かに楽しそうである。近遠自身も役目に楽しむを入れていたりするので楽しんでいる人達の気持ちは分かる。
「みんな、とても凄いからすぐに見つかるわ」
「そうですね。では、ボクは」
 セリーナの捜索者への信頼に満ちた言葉にうなずき、近遠は目的の席に着き、密かなる監視を始めた。
 セリーナも目的の場所に着いた。

「……しかし、あの兄弟は本当に懲りないねぇ。今回はそれほど被害が少ないみたいだけど」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)はため息をつきつつも巻き込まれた数々の悪戯に比べて可愛らしいレベルの今回に説教は無しで終わるかもと思っていたり。
「だよな。あの二人にしては珍しいよな」
 白銀 アキラ(しろがね・あきら)もすっかり双子に巻き込まれ慣れていて今回の悪戯の規模に珍しそうにしている。端から見れば十分驚きレベルだが、すっかり慣れてしまっている。
「静観でもしていようかな。少しは息抜きも必要だしねぇ。あれこれダメ出しするのも可能性を否定するようなものだからね」
 北都は双子が聞けば調子に乗りそうな事を言った。
「それに説教をするのも疲れるしな」
 と白銀。
 二人は静観を決め込み、お喋りをするグィネヴィアの所に向かった。ちなみに白銀は狼に獣化した。知り合う事になったグィネヴィア誘拐事件では狼姿で駆け回っていたので分かるようにという配慮のためだ。

「……椅子に座っていますわね。意識は身体の方にあるのかも」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)と一緒に親睦会に参加していたリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)は背筋を伸ばして座る頭部のないヴァルドーを不思議そうに見ていた。
「しかし、辛気臭い話をしてるな。こんな楽しい時にもったいねぇな。オレ達も行って一緒に歓迎しなきゃな!」
 シリウスは、聞こえてくるハナエ達のお喋りに肩をすくめていた。
「リーブラ、行くぞ。こういう時だからこそ賑やかにしねーとな」
「……そうですわね」
 シリウスはリーブラを引き連れ、ハナエ達のお喋りに参加しに行った。