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屍の上の正義

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屍の上の正義

リアクション

「管制機、ホークアイから連絡が入りました。どうやら大型スポーンの1体が当機の方へと向かっているようです」
「どれくらい大型なのかしら? 楽しみね」
「こちらに向かっているのであれば嫌がおうにも見ることになるだろう。今は一体ずつ確実に仕留めていくぞ」
 高い機動力を保持する黒いイコン機ゴスホークを駆使して戦うのは、柊 真司(ひいらぎ・しんじ)、そしてパートナーであるリーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)等三人だ。
 数で圧倒しようとする小型スポーンの群れをいなしつつ、確実に仕留めていきその数を減らしていく。
「減らせども減らせども目の前に広がる光景が変わらないなんて、うんざりしちゃうわね」
「……今回ばかりは同意だな。ヴェルリア、各兵装の残弾は?」
「『プラズマライフル内蔵型ブレード』を多用しているため、他の兵装に余裕はあります。エネルギーの方もまだ大丈夫です」
「あら、ねえねえ。あのでっかいの、さっき言ってた大型のやつじゃない?」
 真司の魔鎧となっているリーラが前方を顎で指す。そこにいたのは、先ほど合体して大きくなった個体よりも一回り大きなイレイザー・スポーンの姿があった。
「あれは、骨が折れそうだな」
「小型が大型の群れの回りに集結中。……合体しているものと周りに留まるものがいます」
「あらあら、まるで虎の意を狩る狐ね」
「面倒事は嫌いなんだがな……そうも言ってられないようだ」
「……? 味方機から通信です」
「繋いでくれ」
 通信回線を開くヴェルリア。
『こちらフレスヴェルグ、斎賀 昌毅(さいが・まさき)だ。そっちと協力してこいつらを蹴散らそうと考えているんだが、どうだ?』
「どうしましょうか?」
 真司に振り向くヴェルリア。真司は迷いことなく即決する。
「この状況で味方の救援を拒む理由はないな。こちらゴスホーク、柊 真司だ。そちらと共闘してあの大型を叩く」
『りょーかい、だがこっちの兵装はいまいち決め手に欠けるんでね。周りの雑魚はこっちで処理するから、大型は任せたいところだ』
「了解した。こちらからは以上だ」
『こっちからも以上。通信閉じるぜ』
 通信が終わると同時にゴスホークの隣に中距離射撃支援型であるフレスヴェルグが並び立つ。
「あら、中々綺麗ね。こんな機体と共闘なんて素敵。私も外にでて戦いたいくらい」
「あちらに小型機を任せて、俺たちは大型へと突っ込んで力で捻じ伏せる」
「了解しました。BMIの補助は任せてください」
「さあ、行くぞっ」
 ゴスホークが『エナージバースト』を使用し、突貫する。寄ってくる小型イレイザースポーンのみ『プラズマライフル内臓型ブレード』で斬り伏せて、大型へと向かう。
 
「さーてと、あちらさんが沈まないように気合入れてかないとな。そっちの方はどうだ?」
「二人のおかげで索敵に集中しやすい分、見落とす可能性が減りました」
「あー、それはいいことだが。今回のメインである二人は」
「えーっと、ここに本体を接続して。……? うまくいかないの」
「まったく、整備士である那由他を機体内に入れたところでどうにかなる訳でもないであろうに。機体状態くらいには常に気を張ることならできるが……」
 昌毅に返事をするキスクール・ドット・エクゼ(きすくーる・どっとえくぜ)、彼女の後ろで四苦八苦しているのはマイア・コロチナ(まいあ・ころちな)阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)の三人。
「んーやっぱり難しいか、ぶっつけ本番にしちゃ舞台がでかすぎたかね?」
「かもしれませんね。けど機体状態のチェックだけでも、ボクは非常に助かります」
「ならとりあえずはよしとするか。今回の構想については実験段階だからな。それじゃ、ぼちぼち支援開始しますか」
 突貫しているゴスホークに追い縋ろうとする小型スポーンを『アサルトライフル』で着実に撃破、牽制していく。
「わわわ、すごい揺れなの」
「い、いきなり攻撃するな! 先に言っておいてくれ!」
「揺れるぞ」
「先にと言ったであろうが!」
 軽快なやり取りをしつつも昌毅はゴスホークへの支援を怠らない。その甲斐あってゴスホークへの攻撃は阻止されていた。
『支援ありがとうございます。どうやら小型の動きを見るに、そちらに気づいたようですのでお気をつけください』
「わかりました。あと大型に攻撃するときにこちらでも微力ながら援護射撃をしますね」
『了解しました。それでは、通信を切ります』
「順調のようだな。上等上等」
「そうみたいですけど……! ゴスホークに群がっていた小型スポーンの群れがこちらに来ます!」
「……前言撤回。言わなきゃ良かったぜ」
 昌毅の搭乗するフレスヴェルグに気づいた小型スポーンが群れを成して向かってくる。
『アサルトライフル』で弾幕を張りながら小さく左右に避けていては恐らく間に合わず、そのまま潰されるか、取り込まれてしまう。
「あー、マイアはともかくとして、キスクールと那由他」
「どうしたの。やっと本体と接続し終わったところなの」
「なんなのだ?」
「舌噛み切らないようにしてくれ」
「わ、わかったの」
「……那由他達はパイロットの訓練を受けてないからそのGに慣れてないというか、急な加速減速はやめてほしいというか、安全運転でお願いしたいのだが」
「……最初のうちはなんというか、吐きそうになったりもするが誰しもが通る道みたいなもんだから、安心してくれ」
「敵来ます! 回避行動を取ってください!」
「イコン整備時に乗る事はあってもイコンでの戦闘は初めてなのだから、本当に、マジで安全運転でぇぇぇ!!」
 敵から逃れるため、フレスヴェルグが左に猛加速する。そのGは並大抵のものではない。更にその状態から『アサルトライフル』による攻撃。
 かなりの振動を起こしながらも、襲ってきた群れの掃討に成功。
「敵反応消滅しました。……ついでに後ろの二名の反応も微弱です」
「こ、これがフレスヴェルグの加速力……ふ、ふふ、ふふふ。すばらしい……」
「もう少しお手柔らかに頼みたかったの……」
「……なんとかなったようだからよしとするか。あちらさんもそろそろ着くみたいだしな」

「こちらゴスホーク。大型スポーンに接敵まであと少しです。援護射撃をお願いします」
『……微弱です』
「? 聞こえていますか?」
『は、はい! 援護射撃ですね。わかりました。』
「通信をこっちにくれ」
「わかりました」
 通信を真司に渡す。
「そっちのメインパイロットにつなげてくれるか」
『もう代わってるよ。攻撃タイミングは難しいからな。メイン同士で確実に行こうぜってことだろ』
「話が早くて助かる。こちらは接近して側面から攻撃をする。真正面から射撃してくれてかまわない」
『助かるよ』
「接敵まであと10秒です」
 真司の前にはかなり大型のスポーンが待ち構えていた。今もなお他のイレイザ・ースポーンを飲み込みながら大きくなろうとしていた。
「残念だが、ここで終わりだっ」
「! 攻撃、来ます!」
 真司を待ち構えていたイレイザー・スポーンがその身ごと体当たりをしてくる。
『右に避けろ!』
「!」
 瞬時に右に回避行動を取る真司。その左側数ミリにフレスヴェルグから射出された『バスターライフル』が大型の動きを止める。
「斬るっ!」
 その側面から『エナジーバースト』の加速を機体にありったけ乗せて『ファイナルイコンソード』を叩き込む。
 見えぬ斬撃。斬られたことすらわからぬ大型のスポーンだったが、徐々にその体が崩れ落ちていくのだった。
「助かった」
『ああ。それより一旦後退してくれ。こっちにわんさか来てるんでな』
「わかった。ヴェルリア、通信を返すぞ」
「はい」
「私も戦いたいわ。ちょっと外にでてもいいかしら?」
「却下だ」
 リーラの申し出を即座に却下した真司は、フレスヴェルグの援護をするべく一度後退するのだった。

「いやーばっさばっさとやっとるやっとる。あっちもこっちもイコンだらけで爽快やなー」
「我等も負けてはおられぬが、ともかく討たれぬことだけは避けようぞ」
「そうやなぁ、イコンデータ採取してたら仏さんになるなんて冗談にもならんしな」
 細身なフォルムが印象的なイコンバンデリジェーロに搭乗するのは、大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)及び讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)の二人。
『大久保さん、聞こえてる? こちら高崎 朋美(たかさき・ともみ)です』
「おお、たっきー。聞こえてるでー」
『どうやら周りには大型のイレイザー・スポーンはいないみたい』
「まあ、いても僕ら二人じゃちょいときついからね。僥倖っちゃ僥倖や」
『はい。とにかく連携を意識していきましょうね』
「そうやな。じゃないとぱっぱと死んでしまいそうやし。とりあえず通信はなるたけ、きらんようにしような」
『はい』
 連携を取る旨をお互いに理解しあったところで、タイミングを見計らったかのように現れるイレイザー・スポーン。
「こりゃまた大所帯で、迷惑も考えんと図々しいやつらやな」
「言っている場合でもないであろう。最初は任せるぞ」
「りょーかいりょーかい、たっきー! 先に出るで! 援護よろしゅうな!」
『任せて!』
 飛び狂いながら二人に向かってくるイレイザー・スポーンの群れ。その懐に飛び込んだのは泰輔たちだ。
「機動とパワーで圧倒や! 覚悟せい!」
 『ソウルブレード』を華麗に扱い、小型のスポーンたちを次々に撃破していく泰輔操るバンデリジェーロ。
 しかし、左側からも敵が沸いてくる。まるで湯水の如く。
「あらら、ほいじゃ顕仁! 任せたで!」
「任せられよ。その距離からでは反撃はできまいな? こちらはできるがな」
 『アサルトライフル』と『ハンドガン』を器用に使い分けて、相手を近づけさせない顕仁。左側にある武装は顕仁が、右側にある武装は泰輔が担当。
 使うときは瞬時に入れ替わるというトリッキーな操縦だが、息のあった二人にはさしたる苦もないことだった。
「やることやったらほなさいならや! たっきー! 頼むでー!」
 泰輔は後退を開始。それを後ろから援護していた朋美が代わりに前に出る。

「了解! ここからはボクたちの番よ!」
 パンデリジェーロと負けず劣らずの細い線を持ったウィンダムが前に出る。
「機体の位置や姿勢制御はこっちでやるから、攻撃お願いね!」
「ああ、今度は俺たちが暴れないとな!」
 『精神感応』をし朋美とシンクロし、イコンでの攻撃を担当するのはウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)だ。
「早速行くぜー!」
 『アサルトライフル』で敵を牽制しつつ、相手の懐へと飛び込んでいくウィンダム。
「3時の方向っ!」
「あいよっ!」
 朋美が指示した方向から来る敵に振り向きもせず、『新式ビームサーベル』で一閃。
 見事に攻撃は小型スポーンを真っ二つに切り裂いた。
「次っ! そのまま正面、距離は……」
「言われなくとも伝達済みだ!」
 口頭で距離を言われる前に『ハンドガン』で相手を撃ち抜くウルスラーディ。
 言葉で言わずとも互いに『精神感応』で繋がっている二人ならではの攻撃だ。
「4時方向から来るよっ! 大久保さん!」
『言わずもがな、任せとき!』
「こっちも合わせて攻撃だなっ! 一気に畳みかけるぜ!」
 ウィンダム、そしてパンデリジェーロが『アサルトライフル』を連射し凄まじい弾幕を張る。その地点にいた小型のスポーンはたちまちその身を蜂の巣に変えた。
『おっしゃー! ばっちりやな!』
「やるじゃないか! こりゃ負けてられないな!」
「そういって、相手に取り込まれないようにね」
「ああ、わかってるよ。あっち側で戦うなんてまっぴらごめんだからな」
『敵機に動きあり。……一箇所に集まってとは、はて?』
 ばらばらだったイレイザー・スポーンたちが一箇所に集まっている。それが意味をするのは、奴らが合体するということだ。
「合体して大きくなるとは聞いてたけど、大きくなりすぎじゃ」
『そんなことよりどうにかせんと! とりあえず合体しようとしている奴等を引き剥がそうや!』
「了解! ボクたちは左半分の奴等をどうにかしよう!」
 そう言ってウィンダムは左側へ、バンデリジェーロは右側へと回り込み、攻撃を開始。
 合体しようとするイレイザー・スポーンに狙いを定めて次々と引き剥がしていく二機。
 しかし、それ以上に合体するスピードが早く二機では処理しきれない。
「こいつら、どこからこんなにわらわらとっ」
『悔しいが、そろそろ撤退せな。他のスポーンに囲まれてまう』
 だがこの二機が諦めてしまえば、大型スポーンの出現を許してしまう。
 しかし最早囲まれる寸前。仕方なく後退しようとしたとき、もう一機のイコンが現れる。