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屍の上の正義

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屍の上の正義

リアクション

 地中から現れた敵の前に、その身を晒しているの者たちが三人。
 エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)のパートナーでもある、緋王 輝夜(ひおう・かぐや)アーマード レッド(あーまーど・れっど)ネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)
 突如として沸いて出た敵にも動じず、また一歩も引きはしない。それどころかそれぞれが武器を持ち敵に向かっていく。
「地中からの急襲、悪くないよ。悪かったのはあんたらの運だ」
 もともと高い身体能力に『超人的肉体』を上乗せして、スピード&トリッキーな動きを駆使して敵を抉るように倒していく。
「人間サイズじゃなきゃ、生き残れたかもしれないね」
 そう言い残し、鋭き爪と化した武器で敵を片っ端から八つ裂きにしていく。
「敵生体…確認 イレイザー・スポーン……反応多数 戦闘システム…起動 火気管制…ロック解除」
 ゆっくり、確実にシステムを展開していくアーマードに気づいた小型スポーンたちが向っていく。だが一足遅い。
「システム:オールグリーン ……オープンコンバット……」
 起動した合図と共に自身に装備している大型銃器、重火器を稼動し瞬く間に敵を壊滅させていく。
 その姿や大きさから、傍目から見れば小型のイコンと見まごう程。
「敵 接近確認……切替 パイルシールド」
 【大型アサルトライフル】から【三連装パイルシールド】を構えるアーマード。
 敵の攻撃をその巨大な盾で軽々とガードし、接敵している相手をそのまま地面を利用して押しつぶす。
 飛び掛ってきた相手には、内臓されているバイルバンカーを射出。その威力は人型サイズ程度のスポーンを跡形もなく消滅させるほどだった。
「ククク…我らの遊び相手は…彼らですか……」
 【魔瘴龍「エル・アザル」】に跨り空から攻撃をするはネームレス。
 その幼い外見とは不釣合いな大斧【要塞崩し】を軽々しく傍らに構え、周囲には【瘴龍】を4体引き連れている。
 広範囲に散らばっているスポーンたちを【瘴龍】を使い各個撃破、そしてネームレス自身もまたその身をもって敵を攻撃する。
「さあ…思う存分…楽しみましょう…」
 【魔瘴龍「エル・アザル」】の飛翔のスピードを斧に乗せ、【要塞崩し】を思い切り振りぬく。
 数体から群れていたスポーンたちをまるで豆腐のように軽々と両断し、屠った。
 近距離戦を多様するため、細かな傷はあるもののネームレスは元々魔鎧。然したる問題はなく、ネームレスの足を止める要因にはなりえなかった。
 地中から現れたイレイザー・スポーンも、飛び出た先にいた生身の契約者がこれほどまでは思わなかっただろう。
 三人があらかた敵を掃討した時、援護をしようとしていた煉が到着する。
『凄まじいな。生身でこれほどまでやれるとは』
「どうやら援護に来てくれたみたいだけど、悪いね。全部倒しちゃったよ」
『大事無いのならそれでいい。それにお前らの強さもわかった、十分だ』
「傭兵だからねー、お給金の分は働くよ」
 そう言って向ってくるイレイザー・スポーンに向けて駆け出す三人。
 この程度の危機を乗り越えられなくて、誰があの人を止めるのか。そう意気込んで戦場を駆け巡る。

「避難経路の確保は大丈夫?」
「完璧とはいえませんが、現状考えられる最適な経路は確保してあります」
「いつでも逃げられるように準備はしておいて。こちら【情報管理室】、ホークアイ応答願います」
『こちらホークアイ』
「現在の状況を手短に説明してもらってもいいかしら」
『最前線の防衛ライン及び中間地点については戦況はあまり変わっていない。
 「中継基地」前の守りは順調……たったいま超大型スポーンの存在を確認。予想通り、機動要塞を取り込んでいる模様』
「遂に来たわね……」
『更に取り込まれていると思われる未確認イコン機の詳細だが、どうやら『機動城塞オリュンポス・パレス』というイコンのようだ』
「うん、なんとなく予想はしてた」
『荷電粒子砲のチャージが中途半端だが行われている模様。オリュンポス・パレスの方が足が速そうだ』
「了解、引き続き監視をお願いします。一旦通信を閉じるわ」
 【情報管理室】で忙しく働くのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)。戦うだけではなく、「中継基地」に住む人々へのフォロー等を担当していた。
「住民に現在の状況を報告します。繋いでください」
「……繋ぎました」
『みなさん、国軍大尉ルカルカ・ルーです。現在緊急警戒警報が発令されています。
 指示があった場合、速やかに指示に従い避難するようお願いします』
 通信を切るときはゆっくりと、しかし切った後は機敏に。
「イレイザー・スポーンが先ほど決めたラインを超えたら即座に避難誘導を開始してください。
 私はこれよりイコンの搭乗し、敵迎撃部隊に加勢します。ここをお願いしますが、危なくなれば速やかに放棄し、あなた方も逃げてください」
 そう言い残してパートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が待つ、イコンゴウへと急ぐルカルカ。
「ごめん、遅れた!」
「問題ない。それよりもだ。この位置から機動城塞オリュンポス・パレスを確認した。かなり近いようだ」
「超大型の方は?」
「前線と中間地点の方では確認されているが、ここからはまだ確認できてない」
 現在の状況を手短に、かつ的確に説明するダリル。
「なるほど。見たところ後衛ラインも猛者揃いで超えられてないみたいだね」
「ああ。だが超大型スポーンとオリュンポス・パレスについてはどうにかせねばなるまい」
「そうだね。でも考えながらでも、援護しないと」
 そう言われた次の瞬間、下を走っていたイレイザー・スポーンが『二連磁軌砲』によって瞬く間に壊滅。
「うん、ばっちりだね」
「さあ。ようやくゴウの本気が出せる。荷電粒子砲の準備をするぞ」
「了解っ!」
 味方の援護をしつつ、迫り来る超大型スポーンに向けて、一瞬の油断もしないルカルカとダリルの二人。
 その瞳は必ず「中継基地」を防衛して見せると強く煌いていた。

 イレイザー・スポーンの数もかなり減り、見渡す限りのおぞましい光景はそのなりを潜めていた。
 しかし、中型〜大型クラス、更に超大型クラスのイレイザー・スポーンの反応。その状況は決して優しいものではなかった。
 そして更に悪い情報でもある大型イコン機が乗っ取られているという情報。
 そのイコンである機動城塞オリュンポス・パレスの制御を取り戻そうと白衣を乱しながら必死になる人物。
「人気のない荒野でオリュンポス・パレスの新装備、反陽子ビーム砲(【荷電粒子砲】)の発射テストをおこなう予定がああっ! どうしてこうなったのだ!」
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)が悔しげにそう語る。その隣では普段の冷静や物腰の柔らかさ、掴みどころのない人物、天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)がいた。
 珍しくその顔からは焦りが見える。スポーンに取り付かれたオリュンポス・パレスが何をするのか、その結果から見えるものが彼を焦らせていたのだ。
「ダメです、ハデス君! パレスの制御システムにハッキングをかけられています! システムの70%を掌握されました!」
「大体やばそうな数値だな……だがどうにかせねば。十六凪よ! 何としてもオリュンポス・パレスの制御を取り戻すのだ!」
「メイン制御系への防げていますが……! 主砲の制御システムを奪われました!」
「主砲というと……荷電粒子砲か!?」
「動力カット間に合いません! もはやこちらから主砲の発射を止めることは不可能です!」
 目にも留まらない速さで操作を行いながら乗っ取られていくシステムの進行を何とか食い止める十六凪。
「防壁プログラムで時間を稼いでいる今しかありません! 今のうちに契約者たちに協力要請を!」
「周りにいるスポーンを排除してもらえれば制御を取り戻せるのか?」
「取り戻します。ガラでもないですが、意地でも」
「……わかった! すぐに通信で連絡する」
「上空に管制機らしきイコンがいます! そこに通信すれば防衛している契約者たちにも連絡が行くはずです!」
「了解したっ! あー、こちらオリュンポス・パレス! 聞こえるか!」
『こちらホークアイ。聞こえている』
「現在オリュンポス・パレスはスポーンに取り込まれている真っ最中だ! すまないが、周りにいるスポーンを撃退してくれ!」
『すまない、通信状態が悪いようだ。もう一度……た……』
「だー! パレスの周りにいるスポーンどもを! 頼むから! ゲ・キ・タ・イ・してくださいお願いしますっ!!」
『………』

ザーザーザーザー………

「通信系も掌握されました! 通信はもうできません!」
「くそっ……頼む、伝わっていてくれよ!」
「ハデス君! こちらにきて手伝ってください!」
「わ、わかった!」
 パレスを侵食するその魔の手から一秒でも逃れるために、懸命に抵抗を試みる二人。
 果たして二人の通信は届いているだろうか。