校長室
開催、第一代目パートナーバカ決定大会
リアクション公開中!
「あんなに叫びながら、あれほどの戦闘をこなせるなんて。先輩たちはさすがだな」 「とても、器用なんですね」 観戦席で唯一乱入せずに観戦し続けていたのは守凪 那月(かみなぎ・なつき)と守凪 夕緋(かみなぎ・ゆうひ)の二人。 出場している各学園・学校の先輩たちの実力を見定めるため、という口実で妹の夕緋を連れ出してきた那月。 観戦席から先輩たちの戦いぶりや情熱を見ながら、感じながらも、その心中では。 (やはりウチの妹の方が可愛いと思うんだがな) そう思っていたのだった。 確かに大会に出場していた選手はみんな魅力的だったと思う那月だが、彼もまた、妹を愛する兄なのだ。 (病弱で天然が入っている性格。それもあって素直で純粋、世話だってしてあげたくなる。 それは総じて、守ってあげたいという気持ちにもなれる。だから、やっぱりウチの夕緋のほうが……) 思いながら夕緋のほうへと目をやる那月。闘技大会を輝いた瞳で見守るその儚げな姿は、絵にすら写しきれないほどに美しかった。 一方の夕緋もこの大会の熱気と想いに触れて、兄の那月に伝えたいことを自分の中でめぐらせていた。 (いつか私も、いつも世話をしてくれる兄さんにこの感謝の気持ちを、それだけじゃなくて……兄さんがどれだけ素敵な人か、多くの人に伝えたいな) 大会を見ながらそんな想いをめぐらせていた時、横からの視線に気づいた夕緋は那月のほうへと振り返る。 「どうしたの、兄さん?」 不思議そうな顔で那月を見る夕緋。 「……なんでもない」 自分の視線に気づかれたことに、平静を装い夕緋から視線を逸らす那月。 一度繋がった二人の視線はまたリングへと向けられる。だが。 (いつか俺も、夕緋の可愛いところ、多くの人に、何より夕緋に伝えたいな) (いつか私も、兄さんの素敵なところ、いろんな人に、誰より兄さんに伝えられるといいな) こうして二人の心は、いつも繋がっていた。 乱入に乱入が重なる大乱闘アピール大会も全ての試合が終了し、現在は審査員たちがそれぞれジャッジを行い、 その意見をまとめたうえで優勝者を決めているところだ。 審査員であるローグとコアトルも、数あるアピールの中から選択を強いられていた。 「こりゃ思った以上に責任重大。独断と偏見で決めるといったが、どいつもこいつも惜しいやつらばかり」 「ふむ。やはりどの執念もすごかった。どれも甲乙つけがたい」 「確かにどいつもこいつもいい執念だった。でもそれを言うなら、それと対等に戦ったやつらの気概も素晴らしいと思うが」 「そうだな。しかし、我にとっては気概よりも執念や嫉妬のようなものが好ましく思えてな」 「言葉で語らず、あれもぐっときたな。言葉で伝えなきゃならないことをあえて飲み込んで、一言だけ。シビレたよ」 「嫉妬、するというよりあきれ返るほどの忠誠心をみせたあのアピールも捨て置けんな」 次から次へと大会に出場した選手たちのアピールを分析し、相談する二人。 この激戦を勝ち残るのはいったい誰なのか。優勝候補者の目処はまったく立たず、審査の方もかなりもめているようだ。 しばらくして、混乱を極めた審査のほうも無事に落ち着き、いよいよ優勝者の発表となった。 『みなさま、大変お待たせしております。今しがた優勝者が決定いたしましたので、発表に移らさせていただきます。 審査はローグさん、コアトルさん、今大会の説明係りをつとめた者を中心に厳正なる審査をさせていただきました。そこで……』 『優勝者のほかに、入賞者を決めたよっ! 部門は二つ! 「王道アピールで賞」と「執念アピールで賞」を追加決定!』 『それでは発表に移ります。まず「王道アピールで賞」の受賞者発表です』 ―――ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル、デンッ! 『……ルゥ・ムーンナル選手です。それでは部門担当のローグさんお願いします』 『ああ。ルゥ・ムーンナル選手のアピールは王道から少しズレているように思えるが、 誰しも、語らずに相手に思いを伝えることをやってみたいと思うものだ。それを今大会でやってのけたことを考慮して、この賞を授けたいと思う』 『なるほど、解説ありがとうございます。ルゥ選手、おめでとうございます。それでは次に、「執念アピールで賞」の受賞者発表です』 ―――ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル、デンッ! 『……ルディア・ローライキャネル選手です。部門担当のコアトルさんお願いします』 『うむ。最後まで迷ったのだが、ルディア・ローライキャネル選手の表情一つかえずして、その背後にまとわせた執念に近いオーラ。 そして、「目に入れても痛くない」という言葉から感じたホンキを考慮し、この賞を授与させてもらいたい』 『わかりました、解説ありがとうございます。ルディア選手、おめでとうございます。これで二つの部門の受賞者の発表は終わります。 いよいよ優勝者の発表です。誰のパートナーが、アピールが、優勝するのでしょうか。それでは音響さん、お願いします』 ―――てってってーってってっててー 『あ、それSEまちがってます。……大変失礼いたしました。それでは音響さんの趣味がばれたところで、改めて優勝者の発表です』 ――――――ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル、デンッ! 『……優勝者はマネキ・ング選手です。盛大な拍手をお送りください』 ―――パチパチパチパチパチッ!! 『大もめにもめた今大会でしたが、マネキ・ング選手の一方的すぎるセリスさんへのアピール。 しかしセリスさんの反応を見ても凹たれることすらなく、更なる妄想を具現するマネキ・ング選手のその姿勢・心意気。 まさにパートナーバカに相応しいと判断いたしました。優勝、おめでとうございます』 ―――『マネキ・ング!』『マネキ・ング!』 『ほとんどがカタカナコールでしたが、これにて本大会は終了とさせていただきます。 また、第二回の機会があるその日まで、さようならー』 しばらくの間、会場からは歓声と拍手が鳴り止まなかった。 波乱と騒乱を呼んだ『第一代目パートナーバカ決定大会』は無事に閉会し、それぞれの体と心は温まった。と、思いたい。
▼担当マスター
流月和人
▼マスターコメント
お疲れ様です。係りの者兼実はマスターを勤めていた者です。 今回は戦わずして勝ってしまえる闘技大会、という謎の大会にご参加くださり誠に感謝しています。 みなさまから頂いた数々のアクションに胸を焦がし爆発しつつ、楽しく書かせて頂きました。 第二回の大会があった場合にもご参加頂ければと思います。 それ以外のシナリオでも、またみなさまとまみえることがあればよいと思っています。 最後に。 みなさまが末永く爆発されることを祈っています。 流月