リアクション
エピローグ
「おう、前村長の兄ちゃん、やっぱりいい飲みっぷりじゃねぇか」
おせちをつまみに酒を飲んでいたカルキノスは同じく一緒に酒を飲む前村長にそう言う。
「兄ちゃんなどとおだてる必要はありませんよ」
はっはっはと笑い前村長はカルキノスと同じように酒を煽る。
「俺にしてみればまだまだ前村長の兄ちゃんは若者だ。……と、いつまでも前村長って読んでるのは味気ないな。名前を教えてくれ」
「名前……ですか。そうですね……今はハームと名乗っていますよ」
「ハームか。よし覚えた」
「しかし、できれば他に人がいる前では今までどおり前村長と呼んでください。特に娘の前では……」
「? おう。ルカには言っていいか?」
不思議に思いながらもカルキノスは頷き、そう聞く。
「契約者の方には別に言ってもらってかまいませんよ。ただ公の場では前村長と呼んでもらいたいんです」
カルキノスはなにか事情があるのだろうと思い、不思議に思いながらも詳しくは問い詰めなかった。それくらいにはこの自分にとっては若者のハームが気にいっていた。
「あーっ! 皆で食べようと思ってたのに!」
騒々しい声でおせちを食べているカルキノスを問い詰めるのはルカだ。
「悪いな、もう全部食べちまった」
悪びれずカルキノスは言うが、ルカは怒った顔から一転、得意げな顔になる。
「いいもん。もう一式もってきたから。冒険者はあらゆる事態を想定するのだよ♪」
「……ったく。それでコードはどうだったんだ?」
「バッチシだよ。ちゃんと他の契約者達とも協力できたみたい」
その代わり宥めるのが大変だったけどねというルカの言葉にカルキノスはまた酒を煽った。
「――、とこれが調査報告書です。媒体はHCと紙の両方を用意したので活用してください」
ルカたちから離れた前村長―ハーム―は森の調査報告をエースから受け取っていた。
「ご苦労さまです。報酬の方は娘のほうからお願いします」
「こちらも興味深い調査ができました。有意義な時間が過ごせましたよ」
そう一旦話を締め、エースはところでと話を始める。
「あの森の薬草には名前がないのですか?」
「ミナス草と私たちの世代は呼んでいます。ですが……」
自分の名前と同じように娘の前では言わないで欲しいとハームは頼む。
それにどんな意味があるのか、エースには分からなかった。
「前村長。これが鍾乳洞の調査報告です。モンスターや資源のことはよく注意して活用してください」
エースの報告の後、今度は和輝から鍾乳洞の報告を受ける。
表向き穏やかなやり取りをした後、周りに誰も居ないことを確認して前村長は顔を寄せる。
「『入り口』は見つかりましたか?」
「はい……ですが、中には入れないようです」
声を潜めてそんな会話をする。
「今はそれでいいんですよ……それじゃ、これが報酬です」
こっそりとハームは報酬を和輝に直接渡す。
「名前に薬草に俺への依頼……隠し事が多い人ですね。あなたは」
「聞いていたんですか。あなたも人が悪い」
はっはっはとハームは笑う。
「これで悪意を持って行動していないからあなたは興味深い『ただの』人間ですよ」
和輝の言葉にハームはまた笑い続けた。
「瑛菜おねーちゃんただいまー……くぅ……」
調査と報告を終えて帰ってきたアテナは瑛菜に帰りを告げるとすぐにベッドに横になる。数秒もしないうちに寝息を立て始めたアテナに瑛菜はおかしくなって小さく笑った。
「アテナが何をそんな一生懸命なのかは知らないけどさ、無理だけはするんじゃないよ」
眠ったパートナーに瑛菜はそう話しかける。
「頑張る時は一緒に……って、それはあたしが言えたセリフじゃないか」
アテナを置いて出ていくことがあるのは自分だって同じだと瑛菜は思う。
「でも……やっぱり一緒に行動するのが一番だよアテナ」
そう言って瑛菜もまたアテナの隣のベッドに入り、目をつむった。
「村と森と洞窟と」お楽しみいただけたでしょうか。
今回は今までの話のまとめと今後の話の軸となるものを各所に散らした話になります。
今回から村興しが本格的に始まります。といっても、今回はその前段階です。
リアクション中にも書きましたが本当に村には何もない状態です、特産品やら大きな宿屋やらなく本当に寂れた村だったりします。
そんなニルミナスをPCのみなさんと一緒に盛り上げていけたらなぁと思います。
村興しのアイディアなどどんどん提案してもらえると幸いです。
ただ、アイディアはガイドのアクションとは別枠でアクション欄にて提案してもらえると次回以降のシナリオガイドの参考にさせていただきます。
今回のご参加ありがとうございました。