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学生たちの休日10

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キマクの大晦日

 
 
「おや、除夜の鐘だね」
 番長皿屋敷で年越し蕎麦を食べていた神戸紗千が、どんぶりから顔をあげて耳を澄ませました。
 シャンバラ大荒野のどこからか、鐘の音が聞こえてきます。
「除夜の鐘?」
「地球の風習だよ。大晦日に、鐘を百八回鳴らすのさ」
 聞き返すお菊さんに、神戸紗千が答えました。
「へえ、にしても、誰が鳴らしているもんかねえ」
 お菊さんが、ちょっと不思議そうに言いました。
 きん、こん、かん、こん〜♪
「よおし、次!」
 シャンバラ大荒野、キマク近くのゴーストタウンに残された鐘を、ジェミニ・レナード(じぇみに・れなーど)が順繰りに鳴らしていきました。この地の地祇であるジェミニ・レナードとしては、年の節目としてそれを鳴らして回ることを務めと考えていました。
「最後は、私の鐘でもある双子星の鐘だね……」
 きん、ごん、どさ、きゅう〜♪
「えっ!?」
 変な音がしたと思ったとたん、鐘の中から男の子が落ちてきました。
「とにかく、どこかに運ばないと……」
 自分の家として使っている建物に運び込むと、ジェミニ・レナードがその男の子をそこに寝かせました。
 しばらくして、なんとか男の子が目覚めます。
「おはよー、気がついた? なんで鐘の中に入ってたのよ、迷子なの?」
「えっと、えっと、えっとー……」
 ジェミニ・レナードが声をかけますが、その男の子、高峰 澄鈴(たかみね・すみれ)は、もの凄くびっくりした顔をしてしどろもどろです。
「あたし、何かしたかなあ?」
 さすがに、ジェミニ・レナードが高峰澄鈴に聞きました。
「……僕、ずっと会っていない父さんを探しに、遠い所から来たんだけど……帰り道が分からなくなって……」
 おずおずと、高峰澄鈴が答えました。なんだか、何か隠しているようなそぶりですが……。
 実は、未来人である高峰澄鈴は、ジェミニ・レナードの息子なのでした。顔を見てすぐに分かったものの、相手が身内では、変なことをしてタイムパラドックスを引き起こしては大変なことになります。そのため、慎重に言葉を選んでいるのでした。
「遠い所ねえ……」
 まあ、パラミタですから、遠い所と言っても、距離的にも、空間的にも、時間的にもいろいろとあります。気にしていたら、身が持たないわけですが。
「君、帰り道が分かるまでここにいなさい。これも何かの縁よ。うん、その方がいい! あたしはジェミニ。君は?」
「僕は……澄鈴、高峰澄鈴。よろしく、ジェミニさん