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リアクション
「……貰った夢札を使ったはずですけど。ここは百合園女学院ですね」
学校で双子から夢札を貰い使ったリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)は百合園女学院の教室にいた。
「リース見て。ラグエル、エリート生徒さんだよ」
と同じように夢札を使ったラグエル・クローリク(らぐえる・くろーりく)が楽しそうな声を上げていた。どうやら二人は同じ夢を見ていたようだ。
「そ、それは凄いです」
とリース。
「リース、特訓しよう」
ラグエルは名案を思いついたとばかりに可愛い笑顔。
「え、えと特訓ですか?」
リースは不安に顔を曇らせてしまう。
「そうだよ。リースが一人前のお嬢様になる特訓! ラグエルお手伝い頑張るよ」
ラグエルはぎゅっと両拳を作り力強く言う。
「あ、はい。お願いします、ラグエルちゃん」
引っ込み思案のリースはラグエルの言葉に押されて特訓をする事に。
「まずは背をぴーんと伸ばして真っ直ぐ歩く特訓! んーと、リース、このご本を頭と両手に載せて」
ラグエルは両手を腰に当てながら最初の特訓内容を発表する。そして、いつの間にか机に置かれている薄めの本を5冊ずつリースの頭と両手に載せていく。
「……こ、これで歩くんですか」
本を載せられたリースは不安そうに視線を頭上の本に向ける。
「うん、ご本を落とさないように真っ直ぐ。ラグエルの所まで!」
ラグエルは数メートル際のゴール地点に移動する。
「は、はい」
リースは本を落とさないように慎重に歩く。本の厚さが薄かったため無事に歩ききった。
「すごいよ、リース! 次は少し厳しくするよ」
ラグエルは拍手をしてリースを褒めた後、分厚い本を頭と両手に5冊ずつ載せていく。
「……お、重いです」
あまりの重さに体力の無いリースの声が震える。足取りも右に左にふらりふらり。いつ本が落ちてもおかしくない状況。
「リース、頑張れ!」
ラグエルはゴール地点で必死に応援。
そして、
「リース、これできっと一人前になれるよ」
リースは何とかゴール。ラグエルは嬉しそうに拍手。
「……は、はい」
ゴールした途端、載せていた本が全て床に落下し、リースは力なく床に座り込んだ。
景色は百合園女子学院から海京に近い海に。
「よし、リース。今日は学校も休みだ。このまま漁に出るぜ!」
夢札使用中のナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)はリースと共に天御柱学院生徒になっていた。
「……りょ、漁ですか」
リースは周囲を見回したいつの間にやら教室から漁船に移動していた。今度はナディムと同じ夢を見たようだ。
「おう、このまま船を進めてパラミタカジキマグロっていう魚がいるらしい海域まで釣りに行くぞ」
ナディムは海を眺めながらリースに答えた。
「……あ、あの空が曇って来てますよ」
リースは雲行きの怪しい空に目を向けながら不安を口にした。
「……この天候だと大時化が来るかもな。まぁ、俺は泳ぐの得意だし荒れた海も慣れてるから問題ねぇけど、リースは船に振り落とされないようにマストにでも捕まっていた方がいいかもしれねぇな」
リースの言葉でナディムは灰色の空に視線を向けるも全く意に介さない様子。
「……あ、はい」
リースはナディムに言われたように船に振り落とされて波にさらわれたりしないようマストに捕まる。
夢の中であるためか悪天候はあっという間に進み、大時化になってしまう。
海は怒り狂い、漁船は玩具のように海に弄ばれ、周囲の音は暴れる波音に支配される。
「なかなかの荒れぶりだな。しかし、釣ってやるぜ!」
無茶苦茶に揺れる船上でも安定感抜群に甲板に立つナディムは悠々とパラミタカジキマグロ釣りを開始する。荒れる船上でまともな釣りが出来るか通常であれば疑問だが、ここは夢の中、無理も通る世界。
「……あ、あのナディムさん、海水が」
荒れる海初心者のリースは海水を浴びながら必死にマストに捕まりつつナディムに声をかけるが、激しい波音で全て消されてしまう。
釣りを始めてしばらく後。
「……ん、来たぞ!」
ナディムが垂らした釣り糸が激しく引き始める。この間にもリースは必死に声を上げているが、波音に支配されているためナディムの耳には聞こえていない。
「よしっ、なかなかの大物だぞ」
糸は激しく振り回され、いつ切れてもおかしくない。ナディムは両足を踏ん張り、慎重にリールを回していく。魚との一対一の真剣勝負。
真剣勝負中のナディムの近くでは
「……あ、あのナディムさん」
体力の無いリースが力尽き、マストから手が離れて、海へ。そのまま海の藻屑と消えるかと思いきや険しい山道へと早変わり。
最後にリースの前に現れたのは
「リース、特訓よ!」
マーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)だった。
「……今度はシャンバラ教団の生徒さん」
リースは自分とマーガレットが着ている服を確認した。
「そうよ。シャンバラ教団の歩兵科。心身共に成長して立派なボディーガードになってリースん家のおじさんにあたし達の実力を見せ付けて見返してやるんだから!」
マーガレットは両手を腰に当てながら息巻く。ちなみにリースの父親はボディーガード会社を経営している。
「……マーガレット」
リースはマーガレットのやる気に押され気味。
「燃えているところだし、今日はいつもの日課より少しハードにするよ」
マーガレットはそう言いながらどこからかタイヤを6個とロープを用意し、いそいそと3個ずつロープで体に括り付けていく。当然リースの体にも。
「……え、えと、マーガレットこれで山を」
リースは括り付けられたタイヤと山を見比べ、浮かべるのは不安。
「大丈夫、大丈夫。あたしがいるんだから」
マーガレットは元気に胸をどんと叩き、リースの不安を吹き飛ばそうとする。
「リース、出発するよ。今日は厳しいルートで行くよ!」
マーガレットはさーっと走り始めた。
「……ま、待って下さい」
リースも急いで走り始めるが、括り付けられたタイヤのせいか思うように走れない。
それでも必死に頑張るリース。
険しい山道の走り込みを始めてしばらく、
「……あ、あの動けないです」
リースはすっかり体力を失い、歩くのもやっとの状態。
「リース、頑張って、立派なボディーガードになって厄介者のように追い払ったおじさんを見返すんでしょ。ここで諦めたら終わりよ。ほら、足を動かして!!」
ついさっきまで先頭を走っていたマーガレットはリースが足を止めないように隣を走り叱って励ます。
「……で、でも」
マーガレットの励ましは嬉しいが、体が動かないリース。
「大丈夫、リースなら出来る」
マーガレットは必死に声をかけ続ける。
ペースはかなり遅く、時々倒れそうになるリース。
そして、何時間もかけてようやく辿り着く山頂。
「リース! 走り切ったよ」
息切れ一つしていないマーガレットは隣のリースに声をかける。
「……も、もう動けないです」
ぐったりしきったリースはその場に力尽き、意識を失って目覚めの世界へと戻って行った。
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