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―アリスインゲート1―前編

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―アリスインゲート1―前編

リアクション

 置いていかれた、キングが立ち尽くしていると、彼に声をかけてくる女性がいた。
 天貴 彩羽(あまむち・あやは)だ。
「まったく、教団のトップが情けなくて見てられないわね」
「あなたは……彩羽さんでしたね」
 どうやら覚えていたらしい。だが、彼には列車上での気迫も強行的態度も感じられない。トレインジャックを行い、アリスティアの入信を強要した勢いはどこへ言ったのやら。
 そればかりか、人の救いを掲げる宗教家がこの惨状を見て尻込みし、新入者にすら遅れを取っている。隠れてひっそりと彼らの動向を伺い、怪しい動きをしないかと見ていた彩羽だったが、隠れて監視するのが焦れったくなった。
「ここが『約束地』て言ってなかった? あれって嘘だったってこと?」
 辛辣な言葉にキングが答える。
「ワタクシはそう今でも思っています。いいえ、そう思いたかっただけかもしれません……、この光景になんの救いがあるのでしょうか」
「むしろ、救わないといけない人が大勢いるって感じだわ」
「そう……もしかしたらワタクシたちが訪れたここは、約束の地に至るための『試練の地』のかも……それをクイーンはわかっているのかもしれません」
「都合位のいい解釈ね……で、ボーとして何にもしないわけなら、私としてはそれでいいんだけど」
 キングがローブの中で首を振る。
「ワタクシもクイーンとともに彼らを救います……人を導くのが我らの役目なら、救うのも我らの教示でしょう」
 彼らもまた、アリスティアに習い、難民たちに奉仕を始めた。