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―アリスインゲート1―前編

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―アリスインゲート1―前編

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4.それはそうと、こんなところになんの用があるというのですか?

【グリーク国】
――戦場跡地

 村主 蛇々(すぐり・じゃじゃ)アール・エンディミオン(あーる・えんでぃみおん)は瓦礫地帯を歩いていた。
 だだっ広い荒野には機械の残骸と家屋の残骸。焦げた土と木材の跡に抉れた地面。壁には弾痕が無数。ここで何があったのかは想像がつく。

(アングラは避けたか……怖がりなのは相変わらずだが)
 アールが疑問を投げる。
「なぜここに来たんだ?」
 まったくどうして怖がりが、普通こんなまともじゃないところに来るだろうか?
 確かに、この国に危ない地下街(アンダーグラウンド)があるとは聞いてはいた。蛇々がそこに踏み入るよりは怖い思いはしなくて済むかもしれない。
 しかし、よりによってこんな戦場跡地になにがあるというのか。
「あの街、みたでしょ、私らの世界よりもすごい技術がありそうなんだから、こういったところに超ヘーキとか落ちてるかもだもん。とにかく情報を集めるわよ」
「《サイコメトリー》でか?」
 戦争で使っていた兵器技術を知ることが出来れば、一般流通製品のレベルを見るよりも科学練度が如実にわかる。もちろんそんなものをおいそれと見せてもらえるとは思えないので、ここは一つ戦地での過去の情景を見て判断しようとのことか。
「使わないわよっ! 戦場跡地よっ! 卒倒ものの記憶を垣間見るなんてイヤーっ!」
 どうやら違ったらしい。
「……じゃあなんでこんなところに来たんだ」
 仕方ないと、アールが代わりに《サイコメトリー》する。機械の基盤らしき破片を拾い上げて過去を読み取る。
 巨大な鉄塊、回転する壁、六花に咲く六角形、そして赤い鳥。
 いくつもの戦いの記憶が混ぜられて希釈していた。破片から読み取れるのはこのくらいでしかないが、戦いに大型のロボットを使っていたのは分かった。
「……それもこれは」
 符合するイメージを記憶に当てはめているアールに声が掛かる。

「お前たち、そこで何をしている」

 疑問符のない呼びかけに、顔を向けると世界開放機構(WLO)の集団とそれを牽引するルイ・サイファーが近づいてきていた。
 蛇々がとっさにアールの後ろに隠れる。
「あ、あんたたちこそ、何しに来たのよ!?」
「もちろん調査だ。安心しろ、君たちに危害を加えるつもりはない。むしろ、俺らが君たちに協力するつもりだ」
「どういう意味よ……」
「そのままの意味だ。俺らもこの世界に留まるわけにも行かない。それに、君と同じ制服の少年からもそうするように頼まれたからな。一時的な共闘というわけだ」
 一時的というニュアンスに不安を覚えなくもないが、元の世界に帰りたいのは蛇々もアールも同じだった。
「それで、なにかわかったことはあるか?」
 アールが答える。
「……元の世界に帰れるかは定かではないが、この世界に協力者を作ることはできるかもしれない」
「ほう? どうやってだ?」
 アールは遠目に見えるフェンス地帯、おそらく軍備施設だろう建物を指さし、
「あそこに行けばわかる」
とだけ告げた。