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―アリスインゲート1―前編

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―アリスインゲート1―前編

リアクション

「列車から降りたアリサに待っていたのは、緑に塗り固められた機械の国、ノース王国……だが、ここは地獄だった。アリサは欲望渦巻く地雷の緑苑に、自ら足を運ぶ。アリサもまた、巨大な不発弾。迷子・巻き添え、ご用心。
 次回『遡行』
 次回も、アリサの迷子に、付き合ってもらう」
「エヴァちゃん何やってんの? てか誰に向かって言っているの?」
 むせるような次回予告を第四の壁に向かい告げるエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が呆れ気味に尋ねる。
「……さぁ?」
「それはいいですが」
と、御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が話を切って、《テレパシー》で得た情報を伝える。
「アリサ様なら【グリーク】の方へ行かれたみたいです。それと……」
 付け加えて、
「もう、すでに迷子になっているそうです」
「……やっぱりそうか」



3.言っておくが、観光している場合じゃない。

【ノース王国】
――国境の街、アーケード

 ドレス姿の長身の女性二人が浮遊広告の街を歩いていた。
 街中を歩くにしてはまったくもって似つかわしくない、その扇情的な女性の曲線をあらわにする格好は、よくも悪くも目立つものだった。
 しかし、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はあまり気にしてはいないようだ。破れたスカートから足を見せ、踵を折ったヒールで街を闊歩する。
 隣のセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は多少気にしてはいるが、パートナーに歩調を合わせている。
 二人は身に着けていたネックレスなどを質屋らしき所で換金して多少の資金を得ていた。今では、物見遊山の観光というなの情報収集をしている。
「おお! また変なのが売って有りそうよ?」
 とやっぱりセレンフィリティは観光主体のようだ。
「ちょっとセレン、すこしは緊張感をもったらどうなのよ?」
 アホの子同然にはしゃぐドレス姿の恋人にため息混じりのセレアナ。
 コイントスでノース側へと来たはいいものの、セレンフィリティがこの調子だ。本当に情報を集めるきがあるのだろうか。と、露店へ小走りする彼女を見てセレアナ思うのであった。
「おばさん、これ何?」
 一見、露店アイスなのだが、なんとも不思議な色味をしていた。流れるような虹のグラデーションを薄く掛けたそれが、ミントに似たような清涼感のある匂いを漂わせていた。
「知らないのかい? 『大樹の葉』で作ったノース特製のアイスだよ」
「大樹?」
「そんなことも知らないのかい? この国に生えているそれは立派な樹のことだよ。もしかしてあんたたち、……グリークからの旅行者かい?」
 『グリーク』という言葉に一瞬の不愉快感が伺えた。警戒と憎悪。友好的ではないニュアンスがその一言に集約されていた。
「違いますよ。あたしたち、もっと遠いところから来たんですよ。この国のパーティーに誘われて」
 スカートをつまみ上げて見せるセレンフィリティを見て、店主はなるほどと不快な顔つきを元に戻した。更に、貨幣を渡してアイスを2つ頼むと、顔つきはさらに良くなる。
「まあ、そうだったの。そうよね、あんな野蛮な国に舞踏会なんて発想はないでしょうからね」
「そうなんですか? 向こうの国も見てこようと思っていたのですが」
 セレアナの言葉に店主は首を横に振って
「やめときな! あそこは物騒だよ。勝手に戦争をふっかけてきたり、地下では”人買い”をやっているって聞くよ。あんたらみたいな旅行者なんていい的だよ」
「わ〜じゃあ行かなくてよかったね。セレアナ」
「ええ、そう……ね」
 コイントスでこっちに来たなんて言ったらこの店主は怒るだろうか。
 二人は虹色に光るアイスを手にとって店主に別れを告げた。
「侵略戦争てやつなのかしら……。国同士の心情は良くないみたいね」
「そうね……あ、これ意外と辛い」
 セレアナの話を聞き流しているセレンフィリティの視線に、一組の男女の姿が止まった。たしか、自分たちと一緒に列車に乗っていたような……