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リアクション
2.突然ですが、早速、迷子になります。
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は故郷を思い出しつつ、
「ここがカナンかー。随分ハイカラな国になったもんだなだー」
などと嘯いた。
彼女の故郷がどこなのかは分からないが、レンガを基調とする建築となるとヨーロッパの亜寒帯気候に属するところになるだろうか。
「え? ここがカナン何ですか? 思っていた以上にハイカラですね」
とアリサが勘違いをし始める。
「うわ! いつかいたんだ!?」
背後に現れた彼女にシリウスが驚く。事故現場の喧騒から抜けだして街中を散策していたところに、アリサが現れるとは思っていなかった。
サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)がアリサの誤解を解く。
「いや、違うから。なんで上野行きの列車に乗って逆方向のカナンに着くんだよ」
「ではつまり、ここはUE=NOですか……私の知っている日本とは大分イメージが違いますね」
「いや……それも違うから、あとその日本のイメージも間違ってると思うから」
訂正するのがめんどくさくなってきたサビクだった。
「とりあえずわかってることはだな……」
シリウスが周辺の人から聞いた本当の地名をアリサに教えた。
どうやらこの壁より向こうの国は【グリーク国】。そして国境の街側にあるのが【ノース王国】だということだ。しかもこの一帯だけ入国管理がゆるいらしく、審査無しで両方の国を行き来できるとのことだ。
「そいやアリサ、何か変な感じとか、気分悪いとかないか?」
シリウスの不意の質問に、アリサは首を傾げる。乗り物よいの心配をしているのかと思ってしまう。
「いいえ、別になんともないですけど」
「そっか、それならいいんだけどな……」
シリウスにはどうもアリサを中心に事が回っている気がする。
そんなのアタリマエのことなのだが――
しかし、アリサの乗り間違った列車でテロに殺人鬼騒動。おまけに異世界に飛ばされる始末。厄ネタに困らない彼女をこのままにしておくのも不安だ。
せめて有事に役立つ戦闘スキルでもあればいいのだろうけど、聞いた話ではアリサは《精神感応》しか使えないという。
「アリサ、お前が良ければだけど、魔法で人の潜在能力を解放させるってのがある。試してみるか?」
と、シリウスが提案する。《潜在解放》でサイオニックとしての能力を解放できないかと思ってのことだ。かつてアリサの別人格が行動していた際には幾つもの攻撃的スキルを使用していた。ならアリサもそれらを使えるはずなのだが。
しかし、そんなのはお構いなしに
「……ってイねぇ!?」
二人が一瞬目を話した時には、アリサの姿はここにはなかった。流石は間違った方向に強化されただけのことはある。
「ここまでくると国家神級の迷子ね。アリサちゃんは」
「なに言ってんだ、とにかく追うぞ。サビク!」
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