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リアクション
第三章 決戦
「我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス!」
甲板に出たキロスの行く手を塞ぐのは、高笑いと共に現れたドクター・ハデス(どくたー・はです)だ。
その背後には、数十人の戦闘員が控えている。
「一度ならず二度までもしてやられたが、今回はそうはいかん! 我らオリュンポス、その聖杯を奪い返し、野望を打ち砕いてくれよう!」
「ち、本当にどこまでも狙ってくる奴だな」
キロスが剣を構えると、そこに複数のペガサスの羽音が聞こえてきた。
「『シャーウッドの森』空賊団……突入する!」
声と共に舞い降りてきたのは、ユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)だ。
その後を、リネン・エルフト(りねん・えるふと)、フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)、ヘリワード・ザ・ウェイク(へりわーど・ざうぇいく)が降りてくる。
「そうはいかないわ……私は、そこのあなたに用事があるの」
ワイルドペガサス・グランツのネーベルグランツに乗ったリネンはハデスの後ろに立つ女首領を見据えて、アーリエの剣を眼前にかざした。
「決着をつけにきた、というところか」
「ええ、そうね。聖杯を取り返すためではなくても、あなたと戦いたいの」
リネンは首領と向き合い、その視線と視線をぶつけ合う。
「ククク、聖杯は我々が奪い返してみせよう! さあ行くが良い、オリュンポスの戦闘員よ!」
「露払いはオレに任せろ!」
天馬のバルディッシュを手に、フェイミィが襲いかかってきた戦闘員たちの前に立つ。
「お前は決着つけてこい。リネン!」
フェイミィの言葉に励まされるように、ネーベルグランツは天を蹴った。飛空挺の上空へと舞い上がる。
「あたしも援護するわ! 思う存分戦って!」
ヘリワードがリネンとフェイミィの後ろで、飛装兵を指揮する。
「私は投降したり逃亡する空賊の相手をしますわ」
ユーベルはそう言って駆け出した。リネンは三人の様子を見て、首領を見据えた。
「私はリネン・エルフト! 義賊フリューネ・ロスヴァイセに助けられ、同じ道を歩む者!」
「……トラッシュと名乗っている。所詮は屑だ。本当の名は捨てた」
女首領――トラッシュはぎらりと眼光鋭くリネンを睨める。
「――お前らから見れば屑だろうが、俺には義賊によって生きる手段を奪われた者に再度生きるチャンスを与えるという信念がある。
貴様らに理解してもらうつもりもないが、黙ってやられているわけにもいかねえ」
「間違っていることは間違っていることなのよ。覚悟しなさい!」
リネンがそう言った瞬間、空を裂いて何かがリネン目掛けて跳んできた。――剣で撃ち落としたのは、小型のナイフだ。
その攻撃を仕掛けた主は、光学迷彩で首領の近くで待機していた柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)だった。
「どうも、清く正しい傭兵でーす」
恭也はにやっと笑うと首領の前に立った。首領はその後ろでひゅっと口笛を吹くと、ドラゴンが現れた。
「本当に、どこまでも敵が増えるわね……!」
リネンは恭也を出し抜くように飛翔した。恭也の前には、フェイミィが現れる。
「おっと、二人の戦いの邪魔はさせねえぜ?」
フェイミィがバルディッシュを振りかざして駆ける。ぶんと振られた斧の軌跡を恭也は軽くかわし、素早く体勢を整える。
二人の背後では、ヘリワードとハデスが、それぞれ飛装兵と戦闘員とを指揮して戦わせている。
「さあ、決戦といきましょう」
リネンはそう言って、乱気流を起こした。トラッシュはすかさずリネンの背後に回り込むとともに、ドラゴンが炎を吹き付ける。
「その程度――!」
リネンは背を見せぬように高度を上げつつトラッシュに向き合い、剣を突き出す。キン、と弾かれる刃と刃。
トラッシュは飛空挺に着地し、膝をついた。カットラスが、数歩離れた甲板に突き刺さる。
リネンはそのまま空から降りると、トラッシュの首もとに剣を向けた。
「決着はついたわ」
リネンは静かに言葉を紡ぐ。
「後は好きにしたら? 死にたければ自害すればいい、逃げるなら今は追わない……その方が屈辱的でしょ?」
「ふん……そんな挑発には乗らねえよ」
「そ。誠に申し訳ないが依頼主を殺らせる訳にはいかねぇんだわ」
恭也は空飛ぶ魔法↑↑を使ってさっと空を駆けると、千里走りの術で素早く首領を抱きかかえて逃走していった。
「決着は、ついたみたいだな」
キロスがリネンの元に近づいてきた。
「俺たちもイルミンスールに向かおうぜ。この聖杯を、届けなくちゃな」
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