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リアクション
★ ★ ★
「ふう、いったいどこまで逃げたんだあ。追いかけ疲れた。少し休むか……」
輝新閻魔を追いかけていた新風燕馬でしたが、いつの間にか見失ってしまい、仕方ないのでそばにある木立の陰で休むことにしました。
蒼空学園が崩壊した跡は、一面の荒野に変わっていました。ずっと見渡しても、単調な風景です。
なんだか、単調すぎて、眠くなってきました……。
すやすやすや……。
新風燕馬は、猫のように丸くなって眠ってしまいました。
★ ★ ★
「ここはいったい……。なんだか、見覚えがある風景のようじゃが……」
一人はぐれてしまった新風颯馬が、吹きつけてくる風と砂埃に、ちょっと腕で顔をかばいました。
再び正面を見ると、何やら集団の影が前方に見えます。
「あれは、閻魔ではないか。馬鹿な、奴は、最終決戦で倒したはずじゃ……。はっ、ここは、まさか、あのときの最終決戦場ではないのかのう。時空が歪みおったか。しかも、微妙に歴史が変わっておる。あんなにたくさんの手下を引き連れているなど……」
無数のペンギン型アヴァターラを引き連れている輝新閻魔を見て、新風颯馬が唸りました。
あまりにも、多勢に無勢です。これでは、到底勝ち目はありません。
「今のわしでは……、いや、違う。今のわしだからこそ、勝てるのじゃ。わしには、ブラウヴィント・ブリッツがある!」
そう言って、新風颯馬が、乗ってきたイコンを捜しました。
ありました、ありました。
荒野の中に、ブラウヴィント・ブリッツが片膝をついてうずくまっていました。けれども、背部高機動パックに取りつけたスナイパーライフルの砲身はむなしく天をさし、機体には全面に赤さびが浮きあがってぼろぼろになっていました。夕日に、朽ちたイコンの姿がシルエットとなって浮かびあがります。
「なんということじゃ。たった一つの希望が……。正義は充分ではない、じゃが、わしは真実を求める!」
意を決すると、新風颯馬は輝新閻魔に戦いを挑もうとしました。その頭に、突然飛んできた看板がぶちあたります。
「いてっ。なんじゃ、これは……」
新風颯馬がその看板を確かめると、その看板には『嘘か真か?! 目覚めるパワー?!の巻』と書いてあったのですが、端の方がめくれていて、貼ってあった紙の下から『機晶殲姫リュクーア 最終回』と書いた紙が現れました。
「そう。これで最後なのだよ!」
ドンと、色のついた爆発を背負ってザーフィア・ノイヴィントが現れました。
「あれはエンマー。今度こそ、いや、何度でも、倒してみせるのだ。いくよ、変身なのだ! リュクーア、ライアーチェンジ!」
そう言うと、ザーフィア・ノイヴィントあらため機晶殲姫リュクーアが、変身ブレスレットを高く掲げて叫びました。バンクの都合で、青いチャイナドレスのノーマル衣装から、胸元が大きく切れ込んであいた赤いノースリーブドレスのパワーアップ衣装に直接チェンジします。
「虚構の真実打ち砕く、正しき嘘を紡ぎましょう――機晶殲姫リュクーア、ここに推参!」
ザーフィア・ノイヴィントの名乗りを聞いた輝新閻魔が、不敵な笑みを浮かべつつ、手下たちをけしかけました。
「うー」
「そー」
奇声をあげて、ペンギン・アヴァターラたちがミサイルに変身して飛んできます。
「邪魔者はどこかに行くのだあ!」
バリバリと謎光線を放って、ザーフィア・ノイヴィントが敵を倒していきますが、いかんせん数が多すぎます。じりじりと、ザーフィア・ノイヴィントが押され始めました。
「くっ、このままでは……」
迫りくる敵に、一瞬ザーフィア・ノイヴィントが怯みました。そこに、ミサイルと化した敵が真正面から突っ込んできます。
避けきれないとザーフィア・ノイヴィントが防御姿勢をとったとたん、ミサイルが弾き飛ばされました。
「さあ、行くのじゃ!」
キランと歯を輝かせて、ナイスじじいの新風颯馬がザーフィア・ノイヴィントに語りかけました。そのまま、露払いとして、敵を蹴散らしていきます。
「ありがとうなのだ!」
その隙に、ザーフィア・ノイヴィントが一気に輝新閻魔にむかって突っ込んでいきました。
「マー君が裏切ったときはどうなることかと思ったけど、自らの命を捧げてボクにくれたこのウ・ソード、涙が出るほど嬉しかったんだ。ボクたちは、今、一つだよ」
新風燕馬が変身した黒猫マー君が変化したウ・ソードを両手で構え持って、ザーフィア・ノイヴィントが叫びました。
「いくぞ、必殺――リュクーア・エーヴィヒカイト・ズィーク! これが最後の必殺技――僕の……全力全開だぁ!」
ザーフィア・ノイヴィントが、手に持った変な形の剣でブラウヴィント・ブリッツをポカポカと滅多打ちにしました。なんか、いろいろな物がコロコロと弾け飛びます。
『いてっいてっいてっ……!』
なぜか、剣の方から悲鳴がします。
「ううっ……そそそそ……」
ボンと煙をあげて輝新閻魔が消滅しました。
「けほけほけほ……。ついに、エンマーを倒したのだ!」
勝ち誇るザーフィア・ノイヴィントの手から、ウ・ソードが消えました。代わりに、足許にぼろぼろになった新風燕馬が現れます。
「ああ、燕馬君、いつの間に一緒に戦ってくれていたんだ?」
ずれた眼鏡の位置をなおしながらザーフィア・ノイヴィントが訊ねました。でも返事はありません。ただの屍のようです。
「おーい。ブラウヴィント・ブリッツを修理せにゃならん。手伝ってくれ」
「はーい」
新風颯馬に呼ばれて、ザーフィア・ノイヴィントは新風燕馬を放置して行ってしまいました。
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