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うそ!?

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うそ!?

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    ★    ★    ★
 
「ふう、もはや、ここは異世界なんだな。それにしても、どこかで見覚えが……」
 なんだか、中世風の都市に迷い込んだブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)が、キョロキョロと周囲を見回しました。
「この景観、この都市はまさか王都【うそうそ】? どうやら【うそうそ】の世界に迷い込んでしまったようだな」
 なんだか、知っているような都市名を口にしたブルタ・バルチャでしたが、なぜか台詞に被るように大音響で鷽の鳴き声が聞こえました。
「こ、これは、まさか、ピー音の仕事なんだな!?」
 タイミングよく入る鷽の鳴き声に、ブルタ・バルチャが敵対する存在を感じて叫びました。
 見れば、見知っているはずの別世界の風景にもなんだかモザイクやぼかしがかかり始めています。
「めげないのだな。【うそうそ】の紅き雷こと【うそうそ】団長に……ええい、鷽がうるさいんだな! これでは、我が【うそうそ】騎士団の【うそうそ】の【うそうそ】の一翼【うそうそ】枢機卿も元気かどうか分からないんだな。【うそうそ】高き【うそうそ】こと【うそうそ】副団【うそうそ】と【うそうそ】バ【うそうそ】長は【うそうそ】? 【うそうそ】で【うそうそ】な【うそうそ】と【うそうそ】の【うそうそ】は【うそうそ】も【うそうそ】ある【うそうそ】に【うそうそ】を【うそうそ】るのだ【うそうそ】? ええい、何も聞こえな【うそうそ】【うそうそ】【うそうそ】【うそうそ】【うそうそ】【うそうそ】」
 ついに、鷽の大合唱で、ブルタ・バルチャの声が完全にかき消されていきました。
「わーい、鷽の大合唱なんだもん」
 その声を聞いて、ノーン・クリスタリアが喜びました。
「凄い声でございますね」
 さすがに軽く耳を塞ぎながら、世界樹ジャイアント・ピヨの足許でアルティア・シールアムが言いました。見あげた世界樹ジャイアント・ピヨは、全面に目玉が浮き出て、まさに妖怪百目状態です。
「いえ、これはすでに音波攻撃です!」
 イグナ・スプリントが、非不未予異無亡病近遠やユーリカ・アスゲージに耳を塞ぐように指示しました。
 
    ★    ★    ★
 
「ふにゃにゃにゃにゃ……。すばらしいのだよ。この場所は、なんとアワビの養殖に適していることか。これならば、パラミタだろうが、ニルヴァーナだろうが、地球だろうが、すべてのアワビ流通は、我が肉球の上になのだあ。にゃっははははははは……」
 何やら、生体要塞ル・リエーの中で、マネキ・ング(まねき・んぐ)が高笑いをあげています。
「ほれ、その稚貝はそちらにくっつけて……」
 生体要塞ル・リエーの中では、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)がなぜか作業員服を着た鷽たちを使って、アワビの稚貝を要塞内の水槽にどんどん入れているところでした。ぬめぬめしている生体要塞ル・リエーの内壁や外壁も、稚貝を貼りつけるには最適のようです。
 よほどこの場所の艦橋がパラミタアワビにとっていいのか、あるいは鷽作業員たちの手際がいいのか、アワビはもの凄い速さで成長し、まるでビデオの早回しのように増えていきます。それどころか、大きさもどんどん大きくなっていくので、マネキ・ングとしてはほくほくです。
 大振りのアワビがどんどん量産されていくのです。これは大もうけの匂いがします。いえ、磯の匂いと大差ありませんが。
「それにしても、どうしてこうなった……」
 自分は、パラミタにアワビの養殖のためにやってきたのではないと、セリス・ファーランドが溜め息をつきました。
「何を言っておるのだ。これこそが天啓。鷽たちは、我とここでアワビ養殖ができる日を待っていたのだ!」
 マネキ・ングが決めつけました。
「さあ、どんどん増えろ、育て。限界など、今の我らにはない!」
 勝ち誇る、マネキ・ングでした。
 けれども、端から見ると、生体要塞ル・リエーは相当気持ち悪い存在です。
「キモっ!」
「キモいですわ」
「気持ち悪いのでございます」
「みんな下がって、あれは邪悪です。きっと、鷽の巣そのものに違いありません」
 生体要塞ル・リエーを見て気分が悪くなる非不未予異無亡病近遠たちを、イグナ・スプリントがその場所から遠ざけました。
「鷽の巣だそうです」
「おっしゃあ、突っ込もうぜ、御主人」
 逆に生体要塞ル・リエーのキモさをものともせず、ソア・ウェンボリスと雪国ベアは生体要塞ル・リエーへと進んでいきました。
 近づくにつれて、生体要塞ル・リエーの全体が、奇妙に変化していきます。
 ええと、アワビの表と裏が交互にその表面に貼りつき、なんだかキモいモザイクのようになっています。
「なんてことなんだな。生体要塞ル・リエーまでもが、モザイクの餌食に……。まさか、あの中ではモザイクになるような、全身【うそうそ】を【うそうそ】な【うそうそ】をつけた【うそうそ】が【うそうそ】を……。ええいしゃべらせるんだな!」
 まともな状況説明台詞さえ話せなくなって、ブルタ・バルチャが苛ついて地団駄を踏みました。
「キモいです、お師匠様」
 プルンと、リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)が身体を震わせて言いました。
「あれこそは、我が輩をこんな姿にした悪魔アンドリアルフスが潜む城に違いあるまい」
 アガレス・アンドレアルフス(あがれす・あんどれあるふす)アガレス・アンドレアルフスが決めつけます。アガレス・アンドレアルフスが鳩の姿になっているのは、その悪魔の呪いという設定です。もちろん、未だにリース・エンデルフィアは半信半疑ですが。
「えっ、でも、それは去年、お師匠様が退治したのではないのですか?」
 ちょっとわざとらしく、リース・エンデルフィアが聞き返しました。去年の鷽騒動のときに、鷽が化けた悪魔をアガレス・アンドレアルフスが退治して、彼の悪魔退治は一応の決着を見たと思っていたのですが。
「何を言うか。我が輩の呪いはまだ解けず、この姿は鳩のままじゃ」
 ドきっぱりと、アガレス・アンドレアルフスが言いました。
「あの悪魔があの城にいると分かったからには、とるべき道はただ一つ。突撃じゃ!」
 そう言うと、アガレス・アンドレアルフスが生体要塞ル・リエーにむかって突進していきました。
「ああっ、師匠、待ってください。師匠〜」
 リース・エンデルフィアは、あわててアガレス・アンドレアルフスの後を追いかけていきました。
「ううっ、目玉が、オカマが……。おおっと、あれこそは、正統派の悪の城。きっと、あの中には、囚われの乙女がいるに違いない。待っていろ、この魔界ハンター貴仁が助けに行くぞ!」
 ガリガリに気力を削られているにもかかわらず、鬼龍貴仁も果敢に生体要塞ル・リエーへとむかっていきました。そのときです。
「うそピヨ〜♪」
「いやー。お椀風呂は嫌ー!」
 大きなお椀にノーン・クリスタリアを入れて頭の上に乗せたジャイアント・ピヨが、ドスドスドスと走ってきました。全身に目玉が貼りついた、生体要塞ル・リエーに勝るとも劣らないキモい姿です。
 プチ。
 何かを踏んだようです。
 鬼龍貴仁が倒れています。
「あ、あんな所に、怪我人が。よおし、法外な治療代をふんだくるチャンスだわ」
 完全に輝新閻魔と化した新風燕馬が、鬼龍貴仁を勝手に助けようと近づいていきました。そのときです。
「うそピヨ〜♪」
「いやー。お椀風呂は嫌ー!」
 再びノーン・クリスタリアとジャイアント・ピヨが、ドスドスドスと走ってきました。
 プチ。
 また何かを踏んだようです。