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悲劇がおそった町とテンプルナイツの願い

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悲劇がおそった町とテンプルナイツの願い

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第3章 人質になった町人たちを助けろ!
「あら、あなたがもしかしてマリアなのかしら」
「え」
 声を上げたマリアを魔女は見ると、にやっと気味の悪い笑みを浮かべた。
 魔女はワイバーンへと振り向くと、マリアを指さした。
「あの子をやってしまいなさい」
「マリア様!!」
 ワイバーンの口元に、炎が収束していく。
 炎は収束し終わり、マリアに向けられて放たれようとしたその時だった。
「やああああああああああああああっ!」
「グオオオオオオオオオオオッ」
 何者かがワイバーンに組み付いたと思えば、ワイバーンはそのまま地上へと真っ逆さまに墜落する。
 ワイバーンは地響きのような鳴き声と共に、地面へ叩きつけられる、
「間に合った!」
 墜落したワイバーンの真横で腰を手に当てて騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が息を切らせて立っていた。

「……やっぱりさっき、あっちで戦ったときの疲れが残ってたかしら」
「何を訳の分からないことを言ってるの! こんな事を起こした罪は重いんだから!」
 深く何か考え込む魔女に、詩穂は怒る。
 すると魔女は、鼻で笑い飛ばした。
「ふ、でも良いのかしら? あそこに居る人達がピンチよ?」
「まちなさい!!」
 魔女は突然振り返ると、ゴブリン達に囲まれている町の人々の方へと飛んで言ってしまった。
 マリア達はあわててそれを追いかける。


「ヌオオオオッニンゲンッ」
 次々と人々を囲むゴブリン達が吹き飛んでいく。
 大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)コーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)は休暇であったため丸腰だった。
 逃げようと考えた2人だったが、住民達が逃げ惑っているために戦うことに為たのだった。
 剛太郎は、【光条刀】で。コーディリアは剛太郎の後ろから【光条兵器】によりレーザーで援護射撃する。
「ニンゲントマレ!」
「んん――っ!!」
 ゴブリンが剛太郎の動きを止めようと声を上げる。
 そちらを2人が見ると、そこに女性が1人口を押さえられて頭には銃口を突きつけられていた。
「人質をさらに人質ですか」
「……さすがにあの距離では人質に当ててしまいます……」
 コーディリアは唸った。
 そんなときだった、人質をとっているゴブリンの背後から、炎が舞い上がった。
 織田 信長(おだ・のぶなが)の【ヘルファイア】によるものだった。
「ナッナンダ!?」
「さあ、なんだろうな?」
「ナッ――」
 人質を取っているゴブリンが振り向いた一瞬のうちに、背後を桜葉 忍(さくらば・しのぶ)がとり、ゴブリンの腹部へ【アイアンフィスト】を食らわせた。
 忍は、買い物に来ており、何も装備を持っていなかったため、素手でゴブリン達と相手をする。
「あらら、結構やるわね〜じゃあ……これはどうかしら!」
 空を飛んだ状態で魔女は、再び魔方陣を浮かび上がらせると、火の球を手にまとい地上へむけて放つ。

「ここは自分たちが何とかしますので、そちらの方々は人質を早く安全な所へ!!」
「わかった!」
 忍は剛太郎に人質を助けるように促され、素早く人質たちのもとへと駆けつける。
「魔女、こっちであります!」
「ふっ、良いわ。軽くあなた達と遊んであげる」
 魔女は剛太郎とコーディリアを見下ろしながら、その手にまとった火の玉を次々とまるでガトリングガンのように地上へと放つ。
「げ……どれだけ火を打てるんですか……」
 降り注ぐ火の玉を素早くローリングしながら、剛太郎は避けていく。
 コーディリアは剛太郎が火の玉を受けてくれるおかげで、レーザーで魔女を威嚇射撃する。

「ココハトオサナイゾ、ニンゲン」
「ふっ、この程度の魔物など蹴散らしてくれるわ!!」
 勇ましく、邪魔するゴブリン達へ信長は【魔闘撃】で殴り倒していく。
「たぁああっ!」
 その横では、忍が【自動車殴り】でゴブリンの腕をつかみ、背負い投げをしていた。
 2人はあっという間にゴブリン達を倒していき、町の人々が逃げられる道を確保していく。
「あ……」
「全員無事か!!」
 忍はようやく町の人々の居る場所までたどり着くと、全員が無事であることを確認する。
 信長はその間も、素早く逃げ道を確保できるようにゴブリン達をなぎ倒す。
「本当は一気に敵全員殲滅してやりたいところじゃが、まずはこやつらを助けることが先決」
 信長、忍を先頭に町の人々は安全な場所へ向かう。

「こざかしいわねえ……」
 そこへさらに追撃するように火の玉が何発も飛んでくる。剛太郎はそれもローリングすることで避けようとする……が
「あ……」
 レーザーを放とうとしていたコーディリアは避ける事に反応が遅れてしまう。
 だめだと思い、コーディリアが目をつむった瞬間だった。

 その火の玉は直撃すること泣く、どこかへ消え去ってしまった。
 コーディリアがゆっくりと目を開けるとそこには詩穂が【【常闇の帳】地球人用】を構えて立っていた。
「え、火の玉を吸い込んだ?」
 魔女はその不思議な力を目の当たりにし驚いていた。
「ちょっと、それは卑怯くさくない!?」
「卑怯も何も……って貴女、キャラがかわってない?」
 詩穂は常闇の帳を尚仕込みながら、魔女の変わり様を指摘する。
「うるさいわねえ。もともとこっちの方が素なの〜」
「……めんどくさい人」
 詩穂が呆れたようにジト目で魔女を見ていると、先ほどまでゴブリン達の方へむかっていた忍が戻ってくる。

「町人達はおおかた避難できたぜ」
「お疲れ様です。あとはあの魔女を何とかするだけですね」
 剛太郎は忍に礼を言うと、どこからか銃を取り出した。先ほどゴブリンが所持していたライフル銃だった。
 ライフル銃を素早く魔女に向かって構えると、遠慮無く発射する。
 弾は鋭い金属音を鳴らし、あたったかのように思えた、しかし。
「あら? 何か無視でも飛んできたのかしらぁ〜?」
「そんな……レーザーが発射できなく……」
「そんな――!」
 コーディリアまでレーザーが発射できなくなる。どうやら、魔女が魔法に対する妨害魔法かけているようだった。
 マリアも試しに拳銃を構えて、マガジンに残っている18発すべてを魔女に向けて放つも同じだった。
 まるで何か壁のような物にかき消されているように、マリアには見えた。

「ふふふ、もう終わりかしら?」
「……今まで本気をだしていなかったですか」
 まるで攻撃があたらない剛太郎達は絶望に浸される。
 しかし、魔女はいっこうに攻撃をしてこようとはしなかった。それどころか興味無くなったかのようにそっぽを向く。
「さて、あんた達の相手も飽きたことだし、私はもっと強い敵を探しにいくわ」
「なっ!? 何を勝手なことを!!」
 魔女はどうやら遊び感覚のように話すと、去ろうとする。
 司祭はそんな魔女に慌てて声を上げた。
「司祭?」
 マリアはそんな司祭に疑問を抱く。
 魔女は、司祭の制止なんて聞こえないとばかりにそのまま消えて言ってしまった。

「ふうっ……」
「我々だけで今の魔女は倒せたのでしょうか……」
 忍と剛太郎は深いため息をつきながら安堵する。
 しかし、剛太郎の言葉に頷く人は誰も居なかった。

「マリアさん」
「……はい?」
「これだけは覚えておいて、どんなに慈善活動する組織や役職でも悪い人はいるものよ。
これ、アイシャちゃ……様から本物の騎士であると認められた証」
 詩穂はブローチを手に持って、マリアに見せる。
 月の光に、そのブローチは小さく光輝いて見えた。
「詩穂自身もアイシャ様を信じてるから、平和を願い、自分の意思でみんなを守るの……」
「自分の意思で守る……」
「マリアさんも、自分の意思だけは忘れないで」
 そう言うと、詩穂は去っていた。
 自分の意思……。
 マリアはしばし、自分のやるべき事を考えたのだった。