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第四章 明るい未来・結婚と新たな家族

 どこかの火山。

「……ここにいるドラゴンを殺さずに諫めるんだっけ。しかし……」
 シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)は火山を見上げ、事の発端を振り返っていた。普通に金元 ななな(かねもと・ななな)との結婚の許しを得ようとなななの両親に会ったはずが、娘を持つ父親定番の台詞の後、七つの試練をこなさなければ許さないと言われた。
「ぜーさん、ふぁいとー!!! ななな、ここでゼーさんの無事を祈ってるから」
 シャウラの応援のために付いて来たなななが元気に応援していた。
「おう、任せておけ……って俺って単純だよな」
 シャウラはなななの応援で一気にやる気になり登山を始めた。

 どうにか山頂に到達した後。
 シャウラはドラゴンに会い、事情を話して諫めようとするも思いの他良い奴で
「ほう、結婚の許しを得るために我の所に。そうか、良ければ手伝ってやろう。そうだ、結婚祝いにお前さんにこれをやろう」
 シャウラの話に感銘を受け祝いにと何やら巨大な箱を持ち出して来た。
「……協力はありがたいけど、これはドレスだよな。というかなぜドレス?」
 戦闘せずに済んだ事は嬉しいが、目の前の箱には大量の人サイズのドレスの山。
「長くここにいると暇でな。親友の人間に教えて貰ったんだ。何着でも花嫁が気に入る物を持って行け」
 どう見ても細かな作業が出来そうにないドラゴンが気前よく言った。
「なななが気に入る物……おう、見せて貰うぜ」
 シャウラはなななへのお土産探しを開始した。
 すぐに決まると思いきや
「迷うな。なななはどれを着ても似合うし可愛いからなぁ」
 なななへの愛が強いシャウラは迷っていた。
「……よほど花嫁を好いておるのだな」
 迷うシャウラにドラゴンが優しく目を細めながら訊ねた。
「おう、なななは俺の大好きな宇宙天使だ」
 シャウラは胸を張って歯が浮くような事をさらりと言ってのけた。
 それから何とか何着かドレスを選び、下山を果たした。
 そして、
「ななな、お土産だ! メイド・イン・ドラゴンのドレスだぞ」
 シャウラは早速なななに大量のドレスを渡した。
「うわぁ、ゼーさん、凄い。サイズもピッタリだし、これで結婚式のお色直しのドレスは完璧だね! ありがとう!!」
 なななは大変喜んだ。
 この後すぐに第二の試練へ向かった。

 どこかの岩山。

「……誰も抜けない宇宙大帝剣を岩から抜けだよな。これをねぇ……」
 シャウラは剣が刺さっている岩をにらんだ後、何気なく人差し指で剣を軽くつついた。
 すると
「おわっ!?」
 剣が倒れて岩を斬り、何のドラマもなく見事に剣入手を成功。
「宇宙大帝剣を手に入れるなんてさすがなななのゼーさん!!」
 なななの熱い言葉により剣入手が偉業に変化する。
「当然だぜ。なななと結婚するためならどんな試練だって受けて立つ」
 シャウラは剣を拾い、戦う気満々。
「……確か試練はあと五つだよな?」
「うん。次は宇宙海賊の拠点の制圧だよ。そこにボスと四天王がいるってその五人で試練五個分だって。あと、決して七つ考えるのが面倒臭いわけではないって言ってたよ」
 残りの試練を確認するシャウラになななは伝言された事を伝えた。
「……それ嘘だろ。というか、さすがに無理くね? 今度こそ死ぬぞ」
 シャウラは思わずツッコミを入れた。
「ゼーさんなら絶対に出来るよ。ななな、そう信じてる」
 なななは瞳を潤ませ、まるで戦場に行く恋人を見送るかのよう。
「そうか。なななが信じてくれるなら心強いぜ」
 シャウラはなななの両手を握り、真っ直ぐ見つめる。
「ゼーさんが戻るまで何年でもななな待ってるよ。なななにはゼーさんしかいないんだもん」
「それは俺もだぜ。何度生まれ変わったとしても俺は必ずなななを見つける自信があるぞ。俺にとって本当に大切な人はなななだけだから」
 今生の別れと言わんばかりの言葉を交わすなななとシャウラ。割って入る隙のない謎な雰囲気を醸し出していた。
「……行くぞ、宇宙大帝剣ゴッドカリバー!」
 シャウラはドラゴンに飛び乗り、拠点制圧のため突撃を開始した。
「ゼーさぁぁぁぁん!!!」
 なななのシャウラを想う叫びだけがいつまでも響いていた。

■■■

 覚醒後。
「……あれが本当に俺の未来なのか、どう考えても有り得ねぇだろ。なななは可愛かったけど」
 シャウラはあまりにも突拍子の無い未来に眉をひそめた後、携帯電話の待ち受けにしているなななとのツーショット写真を見た。チャラくてプレイボーイだったのがすっかりななな一直線となっていた。