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リアクション
★ ★ ★
「にしても、みんながみんなどこかに行って。おーい、スープ……。あいつもか……」
完全にてんでバラバラになって、源鉄心が頭をかかえました。
見ると、タイモ・クレイオが、どこから取り出したのか、ホールケーキをナイフで切り分けています……が、よく見たら、そのナイフはスープ・ストーンではないですか。いつの間にか、元のギフト状態に戻ってしまったようです。
「お前、何をしていたんだ……」
『いえ、動きたくないので、仕方ないからナイフの姿で皆様の役にたとうと……。拙者、切れたナイフでござるから……』
全身を生クリームだらけにして、スープ・ストーンが言いました。
「そうか。では役にたってもらおう」
そう言うと、源鉄心がスープ・ストーンを紐に結んでブラブラとぶら下げました。しばらくすると、スープ・ストーンが一方向に傾きます。ダウジングのようです。
「みんなー、迷子たちはあっちにいるみたいだ。多分……」
源鉄心は、そう一同に呼びかけました。
★ ★ ★
「ところで、セリス、マネキがいないよ……」
「えっ!?」
粘土板原本ルルイエ異本に言われて、セリス・ファーランドがあらためて周囲を見回しました。
マネキ・ングのことで疲れないようにと、なるべく意識しないようにしていたのが裏目に出てしまいました。気がついたときにはいなくなっていたのです。
「あの馬鹿、勝手にうろうろして。結局、見つけなきゃいけない者が増えただけじゃないか」
セリス・ファーランドが、頭をかかえます。
「んっ、いいこと考えました。みんなうろうろするからいけないんですよね。えいっ!」
何を考えたのか、突然粘土板原本ルルイエ異本が周囲にむかってミアズマを乱射しました。
「お、おい。何をする!」
あわてて、セリス・ファーランドがやめさせます。
「だって、動けなくなれば、こっちから見つけやすいじゃないですか」
ミアズマをまともに食らった者は、やる気をなくしてその場に座り込んでしまいます。
「だからって、他の人に当たったら迷惑だろうが。やるんなら、直接マネキ・ングにぶつけろ」
「はーい」
セリス・ファーランドに怒られて、粘土板原本ルルイエ異本はお行儀よく返事をしました。
★ ★ ★
「よーっく探すのよ。ここはパラミタですからね。大司書といえども、人型とは限らないんだから。ほら、明日香もそのへんのぺんぺん草にもちゃんと聞き込みをする!」
「そんな無茶なでござる」
リカイン・フェルマータに叱咤されて、またたび明日風が渋い顔をしました。
「だから、花妖精だからと言って、相手が何でもかんでも話してくれるとは限らないわけでござって……」
ぶつくさと、またたび明日風が文句を言いました。
「な、なんか来るー!」
光術で周囲を照らしていた禁書写本河馬吸虎が叫びました。そのまま、またリカイン・フェルマータのお尻にしがみつきます。
「いいかげんに……」
なんだか超感覚の尻尾が飛び出してきそうで、リカイン・フェルマータがもぞもぞとします。
そこへ、得体の知れない亡霊の群れのような物が飛んできました。
「何、これ……」
あわててリカイン・フェルマータが盾を構えますが、亡霊たちはそれをすり抜けて通りすぎていきました。
「何もしたくないでござる」
「なんにもしたくないでーす」
「もういいわ、なんでも……」
とたんにやる気をなくして、リカイン・フェルマータたちはその場にひっくり返りました。
「おーい、マネキー」
「出てきなさーい」
そこへ、マネキ・ングを探してセリス・ファーランドと粘土板原本ルルイエ異本がやってきました。
「あれは、遭難者……。いや、被害者か。あちゃー、助けるぞルイエ」
「えー」
めんどくさがる粘土板原本ルルイエ異本の頭を、セリス・ファーランドがポカリと叩きました。
★ ★ ★
「お腹減ったうさー」
ミニうさティーとミニいこにゃたちと一緒に歩いているうちにはぐれてしまったティー・ティーが、お腹のあたりを押さえてつぶやきました。その周りで、ミニミニ軍団もお腹減ったーと唱和します。
「見つけた……」
そこへ、ばったりとコウジン・メレが現れました。
一目で、ティー・ティーがメイちゃんたちと一緒にいた者だと気づいたようです。
「あなたも、迷子ですかうさ?」
「ええ」
ティー・ティーに訊ねられて、コウジン・メレが話を合わせました。
「どこかに食べる物があればいいのにですねーうさ。きっと大司書さんに会えれば、なんでも知っているから、食べ物がある場所も教えてもらえるうさ」
「なんでも知っているの?」
「もちろんうさ」
コウジン・メレの問いに、ティー・ティーが自信満々で答えました。
「ところで、さっきいた三人の女の子のことを教えてほしいのだけれど……」
「いいうさー。なんでも聞いてほしいうさー」
そう答えると、ティー・ティーは知っていることを自慢げにコウジン・メレに話し始めました。
「そう。巨大なイコンを封印していた変わった武器たちでしたか」
多分、見た目はそうでもかなり正確さには欠けるなとコウジン・メレは感じました。あの感じは光条兵器のようでもあり、ギフトのようでもあり、イレイザー・スポーンのようでもあり、間違いなくカン・ゼの技術が応用されています。それは、現在のコウジン・メレと、媒体が違うだけの存在に違いありません。だとすれば、正確な触媒とそのありかさえわかれば、融合・増殖・変質が可能のはずです。それどころか、異物の排除も可能かも知れません。それこそが、進化であり、純化であり、世界を我が物にできる唯一の方法であるはずです。
あの三人の少女はその方法を収める箱、カン・ゼはその錠前、そして、大司書とやらがその鍵です。
「あれ、なんだか美味しそうな匂いがするうさ……」
ふいに、ティー・ティーがクンクンと鼻を鳴らしました。
「こっちうさ、行こううさ!」
コウジン・メレの手を取ると、ティー・ティーは駆け出していきました。
★ ★ ★
「まあ、急がば回れと言うこともありますわね」
ブルーシートを広げた上に座ってお弁当をぱくつきながらエリシア・ボックが言いました。
「でも、いいのかなあ……」
ちょっとすまなそうにノーン・クリスタリアが言いました。はいと、最強の妹ドリンクをエリシア・ボックに差し出します。
「ありがとですわ、ノーン。いいんですわよ、ちゃんとバイトとして雇ったのですから」
エリシア・ボックは平然としています。
疲れたのでのんびりと休憩をしているエリシア・ボックたちに変わって、キーマ・プレシャスがせっせと周囲の調査をしているのでした。
「調査は順調のようですね。しっかりとデータは送られてきています。じきに戻ってきますから、ちゃんとねぎらってあげましょう」
キーマ・プレシャスから籠手型ハンドヘルドコンピュータに送られてくるデータを確認しながら、御神楽舞花が言いました。
「美味しい物ーうさー」
そこへ、ティー・ティーとミニミニ軍団が殺到してきました。
「な、なんなのです、あなたたちは!?」
いきなりミニミニ軍団にたかられて、エリシア・ボックが目を白黒させました。
「通りすがりの腹ぺこですうさー」
ティー・ティーが名乗りました。
「あなたもなの?」
「ええ、まあ」
ノーン・クリスタリアに問われて、そう答えるしかないコウジン・メレでした。
「食べ物はほとんどありませんが、飲み物でしたらありますよ」
御神楽舞花が、開拓者の水筒を差し出して言いました。恵みの雨で補充しているので、一応全員が困らないだけの水はあります。
「いただきますうさー」
そう言うと、ティー・ティーはありがたくお水をいただきました。
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