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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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    ★    ★    ★

「見つかったー?」
 ノーン・クリスタリアが、戻ってきた軍用犬に訊ねましたが、まだゴチメイたちは見つからないようでした。
「もっと、捜索範囲広げないとダメなのかな?」
「あまり遠くに行ってはいけませんわよ。それこそ迷子になりますわ」
 とことこと勝手に先に進もうとするノーン・クリスタリアを、エリシア・ボックが止めました。
「あっ、あそこに、誰かいます。情報交換できるといいのですが」
 御神楽舞花が、人影を見つけて指さしました。むこうでも気づいたらしく、秋月葵がやってきます。
「あの、ゴチメイ見つかりましたか?」
 秋月葵と御神楽舞花が、声を揃えて聞きました。どうやら、答えを聞くまでもないようです。
「あのー、それと、うちの黒子ちゃん見かけなかった? 魔道書バンザーイって叫んだまま駆け出して行っちゃって、はぐれちゃったんだけど……」
「それは知りませんわ。探しているのはゴチメイですから」
 早くも二次遭難者かと、エリシア・ボックが溜め息をつきました。
「そうなんだ。もし見つけたら、教えてよね」
 互いに連絡を取り合うことを約束すると、秋月葵はゴチメイとフォン・ユンツト著『無銘祭祀書』を探しに去って行きました。

    ★    ★    ★

「大ババ様の援助は得られなかったか。仕方ないですね。言われたとおり、自分たちの力でなんとかするしかないでしょう」
 ユーリカ・アスゲージからエリザベート・ワルプルギスの言葉を聞いた非不未予異無亡病近遠が、言いました。
「地図の有用性はおいておいても、ここがどんな場所であるのかは解き明かさなければいけませんね。うまい具合に、遭難者の救助もできたらいいのですが」
 まあ、そちらは救助隊の仕事だと、非不未予異無亡病近遠は割り切りました。
「気をつけてください。何かやってきます」
 ふいに殺気を感じて、イグナ・スプリントが注意をうながしました。
「はははははは、我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクターハデス! お前たちも編集長から雇われて地図を作っている者たちか。ククク、貴様らを地上に戻らせるわけにはいかん! このまま、世界樹の深層でさ迷い続けるがいい! ゆけ、世界最強怪人デスストーカーよ!」
 突然現れたドクター・ハデスが、怪人デスストーカーに攻撃を命令しました。
「逃げるなら、今のうちDEATH」
 ズンズンと地面を踏みならして、怪人デスストーカーが非不未予異無亡病近遠たちに迫ります。
皆下がれ、ここは我が出よう
 やっと面白くなってきたと、イグナ・スプリントが前に出ました。
「食らえ、百獣拳!」
「うぼあー!」
「イグナさん、支援いたします!」
 初手を放ったイグナ・スプリントの後ろで、アルティア・シールアムが叫びましだ。
「いや、もう必要ないだろう」
 すでに怪人デスストーカーの姿の見えなくなっていることを、非不未予異無亡病近遠が告げました。いつの間にか、ドクター・ハデスもとんずらしています。
「あ、あっけない……」
 思いっきり不完全燃焼で、イグナ・スプリントが拳を握りしめました。

    ★    ★    ★

「わーん、助かったのじゃー」
 風紀委員による捜索隊は、無事にビュリ・ピュリティア(びゅり・ぴゅりてぃあ)を発見して保護しました。
「肝心のゴチメイは、未だ影も形も見えずですか」
 まだまだ先は長そうだと、大神御嶽が溜め息をつきました。
「この調子で、どんどん確保するわよ」
 一方の天城紗理華は、まだまだやる気満々です。
 ところが、そうそううまくはいきません。
「ティーはどこへ行った?」
 少し顔を引きつらせながら、源鉄心が周囲を見回しています。
「まったく、あのダメうさったら、団体行動を乱すなんて、最低ですにゃー」
 プンプンと怒ってはいても、心配になってイコナ・ユア・クックブックが周辺を探します。
「誰か来ましたにゃ?」
 近づいてくる一団に気づいて、イコナ・ユア・クックブックが言いました。
 けれども、やってきたのはティー・ティーでもゴチメイたちでもなく、ショワン・ポリュムニアたちでした。
「もう、いったい何人このエリアに入り込んでいるのよ。二次遭難とかしていないでしょうね。と言っても、今さら無駄よね……」
 ぞろぞろとやってきたショワン・ポリュムニアたちを見て、天城紗理華が言いました。どのみち、すでにティー・ティーが行方不明になっています。
「って、イコナはどこだ? あああ、イコナまで迷子かあ! 二重遭難は勘弁してくれ!」
 ティー・ティーどころか、いつの間にかイコナ・ユア・クックブックの姿まで見えなくなって、源鉄心が頭をかかえました。
「あれ? コンちゃんは、どこへ行ったんです?」
「知らなーい」
「あっち、駆けてったよ」
 コンちゃんの姿が見えないのに気づいた大神御嶽がランちゃんたちに訊ねましたが、どうやら、イコナ・ユア・クックブックと一緒にはぐれてしまったようです。
「全員その場を動かないで。これ以上手間をかけさせない。あなたたちもよ。全員点呼をとって、いったん現状を確認します。これは命令です!」
 業を煮やして、天城紗理華が叫びました。
「仕方ないですね。一休み、一休み」
 便乗して、テンコ・タレイアがぺたんと地面に座り込みました。
「おおお、みごとなたっゆんプルンプルン……。いえ、お姉様方、プリンはいかがでござるか?」
 テンコ・タレイアのみごとなたっゆんに見とれたスープ・ストーンが、持ってきていたおやつのプリンを差し出して言いました。ちょうど半ダースあるので、自分の分を入れてぴったりです。あっ、もちろん源鉄心たちの分は入っていません。
「わーい、ありがとうですぅ。美味しそうですぅ」
 タイモ・クレイオが、遠慮なくプリンをもらいました。
「プリン、美味しそうと。めもめも」
 ちゃんとメモしてから、リクゴウ・カリオペもプリンをもらいました。
「夏合宿以来ですね」
「あのときはどうも」
 源鉄心に声をかけられて、テンク・ウラニアが軽く会釈を返しました。
「こちらは、お仲間ですか?」
 源鉄心に訊ねられて、テンコ・タレイアがショワン・ポリュムニアたちを紹介しました。
「コウジン・メレ様の件ではお世話になったそうで。散楽の翁様に代わって、お礼を申し上げます」
「いえいえ、これは御丁寧に」
 ショワン・ポリュムニアに礼を述べられて、源鉄心が返しました。
「あの、その散楽の翁という人や、あなた方が探している人とは、いったいどんな方なのですか」
「散楽の翁様は、葦原島におられる高名な陰陽師ですわ。散楽の翁というのは世襲の名で、カン・ゼ様というのが本来のお名前です。そして、私たちは、それにお仕えする者で、十二天翔と呼ばれております」
「十二天将? そういえば、以前自分たちのことを星辰と呼んでいたような」
「それは言葉のあや。私たちは、翁様の周りを回る星のような物」
 源鉄心の疑問に、テンク・ウラニアが答えました。星辰とは、単純に星や星座のことです。おそらくは、散楽の翁に仕える十二人の剣の花嫁を星座になぞらえただけのことでしょう。
「十二天翔とは、ここにいるリクゴウ・カリオペ、タイモ・クレイオ、テンク・ウラニア、テンコ・タレイア、そして、私、ショワン・ポリュムニア……」
 ショワン・ポリュムニアに紹介されて、あらためて、タイモ・クレイオたちが次々に軽く会釈をしました。
「その他に、シンロン・エウテルペタンサ・メルポメネパイフ・エラトという者がおります。さらに、私たちを統べる三天として、アマオト・アオイ様、タイオン・ムネメ様、コウジン・メレ様がおられるのです。ですが、その昔、コウジン・メレ様は怪異に取り憑かれて行方不明となっておりました。そのため、私たちはずっとコウジン・メレ様を探しているのです」
 ショワン・ポリュムニアが説明をしている間、タイモ・クレイオとテンコ・タレイアが、ランちゃんとメイちゃんの頭をナデナデしていました。
「お姉さん、会ったことある?」
 少し小首をかしげながら、ランちゃんがテンコ・タレイアに訊ねました。
「さあ」
 テンコ・タレイアはタイモ・クレイオと顔を見合わせて微笑むだけです。
「うーん」
 ちょっと納得できなくて、ランちゃんとメイちゃんは腕組みして考え込んでしまいました。
「この子たちも、数奇な運命を辿ってきたんですよ。よかったら友達になってやってください。あっ、御挨拶だけは気をつけてくださいね」
 仲良くなったのかと、大神御嶽がテンコ・タレイアたちに言いました。
「そうでしょうね。あれ、そのペンダントは……」
 テンコ・タレイアが、ランちゃんたちが首から提げている魔法石に気づきました。
「そうかあ、ヴィマーナはもうなくなったんだよね。メモしておこう」
 何やら、リクゴウ・カリオペがメモに書き込みます。
「この中には、マスターが入っているんだよ。でも出られないの」
「そう。でも、散楽の翁様なら開放できるかもしれない……」
 メイちゃんの言葉を聞いたテンク・ウラニアが、ポソリと言いました。
「本当ですか!?」
 その言葉に食いついたのは大神御嶽です。
「かも知れないと言っただけ……」
「でも朗報です。その人は、陰陽師で、葦原島にいるのですね」
 自らも陰陽師である大神御嶽が目を輝かせました。自分は無理でしたが、より高位の陰陽師であれば、この魔法石の封印を解くことができるかも知れません。
「それは、一度、お会いしたいものですね」
「落ち着いたら、この子たちと一緒にどうぞ。散楽の翁様も、きっと興味を持つと思うよ」
 大神御嶽の言葉に、リクゴウ・カリオペがニッコリと微笑みました。