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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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イルミンスール大図書室、その深層は!?

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「はっーはははは。ついに見つけたぞ。我がライバルよ。だが、この場所の地図は、我が秘密結社オリュンポスが独占させてもらう」
「ほーっほほほほ。何をおっしゃいますか、この男は。秘密結社オリュンポス? 聞いたこともありませんわ」
 そのころ、ついに邂逅したドクター・ハデスとお嬢様が舌戦を繰り広げていました。
「ならば、その身に刻むがいい。ゆけ! 町内最強怪人デスストーカーよ!」
「了解DEATH!」
 もう、最強の範囲が地に落ちていますが、それにもめげず、満身創痍の怪人デスストーカーがお嬢様に襲いかかろうとします。
「わははははは……はは!?」
 笑いながら迫ってきた怪人デスストーカーが、ばったりと倒れました。いつの間に抜いたのか、メイドちゃんが仕込み箒の刀身をカチリと竹の鞘に収めます。
「ていっ!」
 執事君が怪人デスストーカーを蹴飛ばしてお星様にしました。
「さあ、後はあなただけですわ。覚悟しなさい」
 勝ち誇ったお嬢様が、ドクター・ハデスを指さして言います。
「そうですわ。いいことを思いつきました。あなたの組織、このわたくしがそっくりいただきましょう。さあ、早く預金通帳をお出しなさい」
「な、なんだとー。そ、それは、いろいろとスポンサーとか、むにゃむにゃのしがらみが……」
 じりじりとお嬢様たちににじり寄られて、ドクター・ハデスが後退します。秘密結社オリュンポス、存亡の危機です。いくら秘密結社オリュンポスの大幹部とはいえ、活動資金の出所とか、親戚関係とか、いろいろとしがらみがあります。ここで組織を乗っ取られでもしたら、ドクター・ハデスの身が危なくなります。
「さあさあさあ!」
「ううううう……」
 そのまま睨み合いが続くかと思われたのですが……。
「誰だい、こんな物飛ばしてきたのは!」
 怪人デスストーカーを掴んで引きずってきたキーマ・プレシャスが、お嬢様とドクター・ハデスたちに言いました。その後ろでは、エリシア・ボックとノーン・クリスタリアが頭を押さえて痛がっています。御神楽舞花はうまく避けたようですが、どうやらエリシア・ボックたちは落ちてきた怪人デスストーカーの下敷きになって大変な目に遭ったようです。その騒ぎのおかげか、いつの間にかティー・ティーとコウジン・メレの姿がいなくなっていました。
「げっ」
 キーマ・プレシャスの姿を見たお嬢様が、あわてて執事君の後ろに身を隠しました。ですが、執事君とメイドちゃんがキーマ・プレシャスにお辞儀をしたのでバレバレです。
「シルフィールじゃないか。なんでこんなところにいるんだい?」
 キーマ・プレシャスが、お嬢様にむかって訊ねました。
「お姉様には関係ないことですわ」
 ぷいと、お嬢様がそっぽをむきます。そう、お嬢様はプレシャス家の三姉妹の次女だったのです。
 プレシャス家は、ヴァイシャリーではそこそこの名家だったのですが、錦鯉の養殖というサイドビジネスに手を出したのが運の尽きでした。デクステラ・サリクスの最初の攻撃で壊された生け簀の持ち主がプレシャス家だったのです。おかげで、莫大な借金を負うことになってしまいました。そのころ、すでに自由人として勝手気まましていたキーマ・プレシャスでしたが、少しでも実家のためになればとバイトにいそしむようになります。すでに三女は勘当されていましたが、次女であったお嬢様は実家のことなど関係なく遊びほうけていたのです。
 その後、プレシャス家は再び生け簀を作って錦鯉バブルもう一度の夢を見ましたが、別の場所にあった最大の生け簀がゴチメイと海賊たちのバトルで完全に破壊されてしまい、そのまま錦鯉バブルははじけてしまったのでした。そのため、プレシャス家は破産。当主夫妻は夜逃げして行方不明。すでに自立していたキーマ・プレシャスは遺産放棄して難を逃れましたが、遊び人と化していたお嬢様は、そのまま放浪の身となったのでした。
 で、今ここです。
「なんだなんだ。騒がしいなあ……。げっ、だいねえ、ちいねえ!?」
 騒ぎを聞きつけてゴチメイたちがやってきたのですが、キーマ・プレシャスとお嬢様を見て、マサラ・アッサムがフリーズしました。何を隠そう、プレシャス家の三女です。百合園女学院で問題を起こして放校になってから、勘当されてアッサム姓を名乗っていたのです。
 何はともあれ、この空間に迷い込んだ者たちが、意図してか意図せずか、だんだんと集まってきました。これもまた、大司書が裏で糸を引いているのでしょうか。
 その後も、続々と捜索隊や調査隊の面々が集まってきます。
「やっぱりここよ。戦闘の跡を辿っていけば、ゴチメイに会えると思ってたわ」
 自慢げに、セレンフィリティ・シャーレットが言いました。戦闘の跡と言っても、実際にはゴチメイではなく、怪人デスストーカーの戦った跡ではありますが。
「いや、迷子を回収したのはわしらなのじゃがのう……」
 なんだか、セレンフィリティ・シャーレットたちがみんなを先導してきたように言われて、ルシェイメア・フローズンがボソリと言いました。迷子になっていたセレンフィリティ・シャーレットたちと葛城吹雪たちを回収したのは、一応、アキラ・セイルーンたちだったはずなのですが。そのまま、ゴチメイたちも捜すかと言うことになって、ここに辿り着いたわけです。
「あー、コンちゃん、ここにいたー」
「わーい、メイちゃん、お久しぶりー」
「わーい」
 やはり何か引き合うのか、いなくなったコンちゃんを探していた天城紗理華たち風紀委員の隊が、メイちゃんたちに導かれてやってきました。源鉄心たちや、ショワン・ポリュムニアたちも一緒です。途中、さ迷っていた日堂真宵たちや、非不未予異無亡病近遠たち、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』、合流できた川村詩亜と川村玲亜も一緒です。
「いたいた、やっと見つけたぞ」
 源鉄心が、キーマ・プレシャスに保護されていたイコナ・ユア・クックブックを見つけて、ほっと胸をなで下ろしました。
「し、心配なんて、いらぬお世話だったのですにゃ」
 イコナ・ユア・クックブックが、ちょっと虚勢を張ります。
「で、ティー・ティーはどこですのにゃ?」
「いや、まだ行方不明だ」
「ふっ、やっぱり、わたくしの方がダメ兎よりも優秀であることが、これで証明されましたにゃ」
 源鉄心の返事に、イコナ・ユア・クックブックが自慢げに胸を張りました。
「あれは、なんでしょうか?」
 アルディミアク・ミトゥナが、少し離れた場所に突然現れた屋敷を指して言いました。見れば、同じ格好をしたたくさんの少女たちが、あらゆる方向からそちらへとむかっています。少女たちのほとんどは、何冊もの本をかかえているようです。
 そんなアルディミアク・ミトゥナを見て、彼女の存在の方に、ショワン・ポリュムニアたちが、あらという顔をして微笑みました。
「行ってみよう!」
「そうですね。なんとなく、大司書さんに御招待されている……そんな気がしますから」
 躊躇なく言うココ・カンパーニュに、大神御嶽がうなずきました。
 この世界から出るには、それしかないと一同が移動を始めると、建物の中でリース・エンデルフィアたちやグラキエス・エンドロアたちと出会いました。それぞれ、別の場所から導かれたようです。
「みんな、あそこにむかっているうさー。行ってみよううさ……うさ? あれ、どこにいっちゃったうさ?」
 エリシア・ボックたちとはぐれてからあちこちを歩いていたティー・ティーが、コウジン・メレを探して周囲を見回しました。けれども、どこにもその姿が見あたりません。
「あっ、鉄心にイコにゃうさー!」
 源鉄心とイコナ・ユア・クックブックの姿を見つけると、ティー・ティーはコウジン・メレのことは忘れて、ミニミニ軍団と共に駆け出していきました。